第6章 冒険者ギルド『木の短剣(WSS)』(3)
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聖歴166年9月中旬――。
シルヴェリア王国ヴィント公爵領ソードウェーブに、冒険者ギルド総本部が設立された。
これ以降冒険者ギルドは『木の短剣』という名称を掲げて、世界各地に支部を持つ国際組織となった。
総本部はソードウェーブ(シルヴェリア王国)――ギルドマスター・アルバート・テルドールが本部長を兼任する。
支部は各国にそれぞれ一つずつ、ベイリール支部(ベイリス王国)、グアンタ支部(カルティア帝国)、ヤマト支部(ダイワコク政権領)、レトリアーノ支部(レトアリア王国)、アレシアン支部(アーレシア共和国)の5つだ。
各支部には支部長と副支部長を置き、事務長を一人補佐に付けることになるだろう。
いくつかの支部にはすでに支部長と副支部長が任命され、その任に当たっているが、今なお、まだアルのパーティが兼任している場所もある。その人事を早急に行わねばならない。
「ベイリールの《《あの二人》》を、ソードウェーブに移すってのはどうだ?」
とレイノルドが切り出した。
「うん、僕もそのつもりだったよ。それに、事務長もそのまま、マルタさんにお願いしようと思う」
とアルが応じた。
あの二人とは、冒険者第一号のゲール・クロフォードと、第二号のヒューゴ・ベルルの二人のことだ。現在もすでにベイリール支部の支部長と副支部長を任せてある。
この二人とマルタ・フリアンの3人はいわば冒険者ギルドの創設メンバーともいえる古株だ。
ソードウェーブの『木の短剣』本部長と副部長、そして本部事務長としては3人をおいて他にはいない。
アルが本部長をやれば、という考えもなくはなかったが、アルたちのパーティはギルド運営よりもほかにやらねばならないことが数多くある。一つ所に落ち着いて業務を行うことは現状ではかなり厳しい。
「と、なると、問題はベイリール支部の三役だが――」
とレイノルドが唸る。
「それについてはカルティアのグアンタから異動させようと思っているんだけど、どうかな?」
とアルが一応伺いを立てる。
「グアンタ――ってことは、あの3人か?」
「ああ、スティーブンのパーティの3人だ。スティーブンを支部長に、ロブとベスを副支部長に据えようと思う」
スティーブン・ハワード、エリザベス・ターナー、ロバート・ウィスコンス。
かつて妖精族世界との間に次元回廊を繋ぐため、ミンチャの南の気休めの森に帯同させた3人組だ。
その後彼ら3人には、グアンタの冒険者ギルド支部のまとめ役を任せてあった。
もう一方のグアンタの有力冒険者パーティであるキリィことキリシュテラ・ブルーナのパーティと協力して、グアンタの新人冒険者たちをよくまとめ指導してくれていることをアルは知っている。
「と、なると、グアンタはキリィのパーティに任せるのが筋ということになるか――」
と、レイノルドが言う。
「そうだね。キリィには少し長い間、いろいろと我慢をさせているからね。そろそろそれに見合った《《報酬》》を上げないとだね」
と、アルが頷く。
「ふ、ギルド支部長が《《報酬》》になるとは思えんが、まあ、おまえがちゃんと見ているということを表すにはちょうどいいだろうな」
と、レイノルドも賛同した。
ダイワコクの方はもう決まっている。
ジン・タニガワ、メグミ・タチカワ、ミク・イシハラの3人だ。彼らにはすでに支部長、副支部長として任に当たってもらっている。しばらくはこのままでいいだろう。
ただ、レトリアリアのレトリアーノ支部の三役に候補がいない。ダイワコクとレトリアリアの関係は古くからつながりが濃い。おそらく近々、3人にはレトリアリーノ支部へ異動してもらうことになるだろう。
あとは事務長についてだが、ここはそれほど心配していない。事務長というのはある程度経理もしくは事務仕事に明るい人がいい。そしてその役目は、各支部の監査の意味合いも持っている。
ベイリールにはオルトマン商会があり、グアンタにはルスト商会がある。そして、ダイワコクにはダイワコク諜報部がある。各機関にはすでに書簡を送って出向の打診を行っておいた。おそらく近いうちに返答があるだろう。
あとはアーレシアだが――。
「アーレシアはしばらくは僕が管理することにしようと思っている。とはいっても、ほとんど留守にするだろうから、そこはあの人に伺いを立てるしかない――」
現段階で、ほかに支部長を任せられる人材は今のところ見当たらない。各支部にてそろそろ頭角を現すものが出始めると思うのだが、未だに「銀級」冒険者の数はまだ少ないのだ。
今回の人事において、各支部長・副支部長たちには「金級」冒険者へと昇格を考えている。つまりは、「銀級」においてそれなりの功績を上げていなくてはならないということだ。
残念だが、現状それに見合うパーティや冒険者は見当たらない。
「あの人って、まさか、あの人か?」
レイノルドの言葉は言葉の意味をなしていないようにも聞こえるが、アルの意図は伝わっているようだ。
「ああ、チュリの兄さん、アーレシアの次期代表、ウォーラス・アレシアン卿だよ」
と、アルは言った。




