表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/67

第5章 『大蛇』ヤマタ(6)

6

「いえ、待ってください! あれって、私たちの影じゃ――」

「ん? あ、ああ! 本当だ! ってことは――」


 二人は今一度正面を向く。

 そこには確かに何かがゆらゆらしている影がある。


「あれが、ヤマタ?? ってこと、ですよね――」

「う、うん。行ってみよう!」


 二人は揃って前へ駆け出した。滝をくぐってからさらに十数メルほど進んだところに、一つの鉢が置いてある。鉢には何やら植物が植えてあり、それがゆらゆらと揺らめいていた。


 ヴォォォオオオオオオオオオオオ――ン!


 という咆哮がまた響いたが、これもどうやら「声」ではなく、風が吹き抜ける音だということに気付く。


「なんだ、これ? これが、ヤマタの正体?」

と、言いながらチュリがその鉢植えを指す。

「なんでしょうか? この洞窟はどうやらここまでのようです」

と、ユフィがその先を見て言った。


 確かに洞窟はそこで終わっており、その先には完全な空が広がっている。

 どうやら山の中腹に出たらしく、出口から先右方向に、山肌を伝うように細い山道が続いている。その先はどうやらヒイの街に続いているようだ。


 そしてその道の中ほどに、さっきの「味噌餅のおやじ」が立っていた。そばにはもう一人、さっきの盗人もいる。


「あ、あいつら! あんなとこに!」

「でも、なんか変ですよ? 逃げるそぶりは見せませんし――」


「逃げないなら、帰って好都合だ! とっちめてやる!」

「あ、チュリ姐――」


 勢いよく駆けだすチュリをあわててユフィも追う。

 やがてチュリとユフィは、その二人の目の前まで到達した。二人の男は全く動じず、ただチュリとユフィが到着するのを待っていた。


「あ、ウチらの荷物――。返してもらうよ!」

チュリが男たちの足元に置いてある荷物に気付いて、怒声を浴びせる。


「どうやら、試験には合格のようだな――。ほれ、荷物は返すぞ」

そう言うと、味噌餅おやじが足元の荷物を二つ、チュリとユフィに向かって放り投げた。


「お!?」

「きゃ!?」


 二人は突然投げ渡された荷物を慌てて受け取る。ここは山肌に沿った細い道だ、足を踏み外したら崖下に真っ逆さまだ。

 

「あ、あぶないだろ!? 落ちたらどうするんだよ!」

チュリが荷物を受けながら言い返す。


「ははは、間違っても落ちるようなことはないだろう? お前たちは、訓練場の卒業生なのだから――」

と、味噌餅おやじが言い放つ。


「――! どうしてそれを!? あ、いや、お前たち――」

チュリが何ごとかを言おうとした時だった。盗人のほうが声を上げた。


「チュリ、ユーフェリア、ひさしぶりだなぁ。二人ともよく訓練されている。見違えたぜ?」

 

「――? ん? この声――、ゲンシン!? ゲンシンなの!?」

チュリがその声に気付いて声を上げる。


 盗人は頭に巻いていた黒い頬被りをするすると解きほどくと、顔を上げた。


「よお。お前ら二人とも結構足が速いんで、久しぶりに全速で走ったぜ――。元気そうで何よりだ」


 それはまさしく、ゲンシンだった。

  

「さあて、最終問題だ。この状況、どういう事か説明してみろ?」

 ゲンシンが二人に対してそう問いかけた。


「この状況? つまり、ヤマタが何もので、どうしてゲンシンがここにいるかってこと、だよね……」

チュリはゲンシンの質問の意図を今一度精査した。

「何がどうなっているのか――、ってことですよね?」

と、ユフィも同じく考え込む。


「ヤマタは作り物だった――。ゲンシンがここにいる――。味噌餅のおやじと盗人はグルで、ウチらのことを知っている――」

チュリがぶつぶつと言いながら思案する。


「噂を聞いたのは訓練生たちから――。街の人たちに聞いても誰もヤマタのことは知らなかった――。あれ? だれも知らないって、そんなことあるのかな? 間違っていたとしても、なにか適当な情報ぐらい出てきてもおかしくはない――、だって、《《ヤマタ》》ってよく考えたら、この地方の人の名前にもあるぐらいの言葉ですよ?」

と、ユフィがきっかけをつかむ。


「――つまり、知らないんじゃなくて、知らないと《《言っていた》》――ってこと?」

チュリがユフィに問い返す。

「そうだとしたら、すべて辻褄つじつまがあっちゃいます――」

と、ユフィが答える。


「ん? んん? いや、待てよ。そうなると、これって、もしかして――」

「ええ、間違いないと思います。ヒイの街に来てから今日まで2日ほど何も進展がなかったのは、ゲンシンさんが到着するまでの時間稼ぎだったとしたら――」


「あ! ああ~~~! マジかよ、そんなことって――」

「でも、そう考えれば今までのことすべてに説明がついちゃいますよ――」


 二人は恐る恐る、味噌餅おやじとゲンシンの方を振り返った。


「どうやら、答えは出たようだな――。さあ、答えてみろ」


「「全部、()()()()、仕掛けられていた――ってこと、だよね(ですね)?」」


 ゲンシンと味噌餅おやじは顔を見合わせると、しばらく肩を震わせていたが、ついにはこらえられなくなって、大爆笑した――。



 タネを明かせばなんてことはない。

 すべて「作り話」だったのだ。


 「ヤマタ」の噂をそれとなく流し、修練場を卒業したら、それに立ち向かうように二人の気持ちを仕向け、卒業する少し前にゲンシンに連絡を入れておき、二人がヒイに到着した後は足止めをするために街中全員で「知らない」と口裏を合わせた。

 そうして、ゲンシンが到着したタイミングで「山田味噌餅」を出現させ、二人がそこに着くように誘導し――。


 あとは、話しの通りというわけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ