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レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


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第5章 『大蛇』ヤマタ(5)

5

 二人がその通路をかけてゆくと、数十メルほど先に明かりが見える。

 通路の地面は岩地であったが、かなり整備されているのか、それほどの凹凸はない。

 難なく通路を抜けるとそこは先ほどと同じような広さの空洞になっていた。


 ただ、大きく違う点が一つある。

 目の前に一面の流れ落ちる()()()があるのだ。


「滝――?」

チュリがその手前で足を止める。


 そしてその水の膜の向こうは隠れていて何も見えない。

 壁になっているのか、もしくは空洞があるのか、全く分からないのだ。



ヴォォォオオオオオオオオオオオ――ン!


 不意に大きな咆哮ほうこうが洞窟内に響く。


「が!? み、耳が――」

「な、なにこの声――!」

二人はその大音量に思わず耳をふさいでたじろいだ。


「あ! チュリねぇ! 見てください! 何かの影が!」

ユフィがその水の膜に移る影に気が付いて声を上げる。

「な!? なんだぁ!? あれは――!?」

チュリもその影に気付いて声を上げる。



ヴオォォォォオオオォォォオオオ――ン!!


 またしても先程の咆哮が響いた。


「この滝の向こうから声がします!」

「やっぱり、何かいるんだ!」


 注意深く二人が影を見ると、影は何本にも分かれ、うねうねとうねっているようにも見える。


「へ、蛇!?」

チュリが叫ぶ。

「な、なんかたくさんいませんか! いち、にい、さん……なな、はち、きゅう……。9匹です! 9匹の大蛇です!」


「く、くそっ、で、でかすぎる!」

「どう、しましょう!?」


 チュリはおもわずその影の大きさに驚いて声を上げるが、ユフィが構わず指示を仰いだ。


 影はこの洞窟の前に立ちふさがる「滝」いっぱいに広がってうねっている。もしそのままの大きさだとしたら、かなりの大きさだ。


「おいおいおい、大鬼や、オウガの比じゃないぞ!? こんなの見たことない!」

「と、とにかく、戦闘準備を!」


 チュリとユフィは弾かれるように腰のクナイを抜き放ち、態勢を低くして身構えた。


 そのまま、態勢を低くして、相手の様子をうかがう。影は相変わらずうねっているが、少しこちらに近づいたのか、さらに大きくなっているようにも見える。


「み、見てください! 大きくなりましたよ! こちらに接近している?」

ユフィが叫ぶと、チュリもあることに気付いた。

「か、影の根本、くっついてないか!? へび、というより、()が9本ある!?」


 なるほどよく見ると、うねっている根本は一つにまとまっている。

 胴体がそれだとすれば、そこから先、首が9本ある怪物ということになる。



ヴオオオオオオォォォォォ――ン!!


「がぁ! ま、またその声か――! う、うるさい!」

「チュリ姐! どうします? 一旦いったん退きますか!?」


 チュリは必死に考えた。

 こんな時、()()()ならどうするだろう?


 ケイティなら、レイノルドなら、ルシアスのおっちゃんなら、アリアーデのおねえちゃんだったら、そして、アルなら――。


――このままただ逃げるわけにはいかない!


 影が見えているということは()()がいるということに違いはない。

 しかし、その何かが、()()()()()

 「滝」の向こうに隠れていて全く何も見えないままなのだ。

 このまま退いてもさっきの地底湖の空間に他に道はなかった。


 つまり、戻ったとしてもそこから先には進めないのだ。


――ん? どういうことだ?


 チュリはこの時あることに気が付いた。


――戻っても出口はない。先に進むにはこの道しかなかったんだ。じゃあ、アイツはどこへ行ったんだ?


「ユフィ! アイツはどこに行ったんだろう!? どこかほかに道があるか探して!」

「え? あ、さっきの味噌餅みそもちのオジサンですね! そう言えば、どこに行っちゃったんだろう?」


 二人は注意深くあたりを見回してみるが、それらしき道はどこにも見当たらない。

 光は滝の奥からしているようで、それに照らされた影は相変わらずうねっている。


「チュリ姐! どこにも、道なんかないですよぉ!」

「ウチも見つけられない! ってことは――」


「え、え~~~!? この滝のむこう? ですか?」

「もうそれしかない!」


ヴオオオオオォォォォォオオオ――ン!


 たび、咆哮が洞窟内に響き渡る。


「ユフィ! 行くよ!」

「や、やっぱり、そうなんですよねぇ」


「道はおそらく滝の向こうにしかない! それに、アイツの姿を確かめないわけにもいかない!」

「あ、そう言えば不思議なんですけど、魔素の反応がたいして大きくないんですよ。あれだけの大きさの魔物なら、魔素もそれなりの量、感じるはずなんですけど――」


 二人は顔を見合わせて、うなずきあった。


「「やああああああ!」」

と、二人同時に大声を上げて気合をつけながら、目の前の滝へと飛び込んでゆく。


 滝はやはり大した量ではなく、薄い膜のように流れ落ちているだけだった。

 大した衝撃もなく、滝を突き抜けた二人は、その先に明るい出口が開けていることを確認した。


 滝の裏はさらに先に通路が続いていて、その先から明るい光が差し込んでいる。そして、その影も――。


 そこには何もいなかった――。


 ただ、通路が先に続いているだけで、その先に、小さな影が揺らめいている。


「え? あれ? 魔物は?」

「いない?」

「でも、あの影――」

「もしかして――」

と、ユフィが今くぐった滝の方を振り返ると、そこにはさっきの八又の大蛇が移っている。それに、二つの大きな人影――。


「チュリ姐……、うしろ――」

「ん? な!? いつの間に向こうに!? それに二体の人型――」


 チュリは振り返った滝にさっきの怪物の影と同時に二つの人影を確認して困惑した。



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