↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤毛の錬金術師は研究以外に興味がない〜魔力ゼロで追放された元筆頭錬金術師、オワコン学科から始める100年越しの復讐と学園無双〜   作者: あかぱん
黒い滓の盃

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/52

プリズム

「セリアさぁぁぁんっ!!」


クロエの悲鳴が中庭に木霊する。

ファルクの左手の曲刀が、無防備なセリアの脇腹へ冷酷に突き刺さろうとした――その刹那。


――バチィィッ!!


セリアの杖の先端、魔導宝石から指向性の強烈な暴風が零距離で炸裂した。

刃を完全に防ぐことは叶わず、セリアの横腹が浅く切り裂かれて鮮血が散る。だが、その風圧によって切先の侵入深度をわずか数ミリで押し留め、ファルクの体勢を一瞬だけ浮かせた。


「……チッ、零距離の衝撃波か。だが浅いな」


ファルクが舌打ちし、即座に追撃の刃を振り抜こうとする。

セリアは脇腹の激痛に脂汗を流しながらも、歯を食いしばって叫んだ。


「今です、クロエさん! あたくしの合図を待たずに撃ちなさい! 広場全体を――最大の出力で濡らし尽くすのですわ!!」


「う、あぁぁぁっ……! 水よ、満ちて全てを覆いアクア・インペリウム・プレノ尽くせ――ッ!!」


石柱に叩きつけられて倒れていたクロエが、痛む体で杖を握り直し、残された魔力を惜しげもなく解き放った。

アシストリングが眩い蒼光を放ち、中庭の地面を濁流のような大量の水が覆い尽くしていく。


「無駄だと言ったはずだ。いくら地面を水浸しにしたところで、影の座標は消せはしない」


ファルクはセリアの杖を蹴り飛ばし、再び影の中へと沈み込もうとする。

だが、セリアの狙いは「水攻め」ではなかった。


「……ええ、ただの水ならね! ですが、エルカ様の講義を思い出しましたわ! ――気化熱と、光の乱反射!」


セリアは蹴り飛ばされた杖を拾うことなく、右手を天へと掲げた。


「風よ、細波を(ウェントゥス)巻き上げ()、千の霧滴へ(フラグメンタ)砕け()散れ(ネブラ)――ッ!!」


突風が地面の水たまりを一斉に巻き上げ、超微粒子の霧となって中庭全域を満たした。

紫黒の結界を通したわずかな外光が、数百万もの微細な水滴に反射し、空間全体を白く霞んだプリズムへと変貌させる。


「なっ……光が乱反射して……影の輪郭が……!?」


影の中に潜んでいたファルクの身体が、強制的に霧の中へ押し戻された。

影と実体の境界線が乱反射する光によって曖昧になり、影の中を自在に潜行する術式が完全に撹乱されたのだ。


「そこですわ、クロエさん! 二時の方角、足元の屈折が歪んでいる場所です!」


「は、はいっ……!!」


クロエが立ち上がり、アシストリングに全神経を集中させる。

エルカの教えた「水分子の回転」と「極限の収束」。

焦りも恐怖も捨て、ただ一つの標的へ向けてノズルを絞り込むように魔力を研ぎ澄ます。


「小娘どもが……舐めるなァッ!」


術式を乱されたファルクが、霧を切り裂いてクロエめがけて疾走する。

不可視の暗殺者ではなく、ただの「速い剣士」となった男の直線軌道。


「水よ、螺旋を成して芯までトルクエ・アクア・エト・ペネトラ貫け――ッ!!」


――ドゴォォォッ!!


空気を劈く超高圧の水流槍が、一直線に放たれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。