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その旅の果てに 〜世界を巡る彩色録〜  作者: 浦島 晴次郎
序章 旅立ち

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6.異変

6話です。楽しんで読んで頂けたら幸いです。


 宿場町であるリサグ村に着くと、他の者が家畜の世話や宿泊の手続きをしている間にキンチの指導が始まる。


 リーンとキンチは当番制で指導係を請け負っており、今日の当番はキンチである。


 その休憩中に、アルバが今日の出来事を、トーマとエルレに話す。


 「〜ってことがあってさ!」


 「僕らとあまり変わらない年で、そんな事を、、すごいなぁ。」


 「しかもあの綺麗な子、確かリーンさんが、"ギフテッド"って言ってたよー。」


 「ん?何それ?」


 エルレがリーンとの会話を思い出すかのように少しだけ膨らませた頬に軽く人差し指を当てながら、答える。


 「えっと、生まれながらにして魂力を使える人達の事を言うらしいよー。極々稀に、そう言う人が生まれるんだって〜。身体のどこかに、普通の人には見られない異変を持って生まれてくるって、リーンさんは言ってたっけ。」

 

 「そーなんだ、、それがリーン..さんが言ってたもう1つの方法なのか・・・?」


 「多分そーなんじゃない〜」


 アルバは、その話を聞いて、キラリと名乗る少女の瞳を思い浮かべる。


 あの瞳もエルレの言う"ギフテッド"の異変なのかな?と考えたりしていると、まだ、今日のトーマ達の行動を聞いていない事を思い出す。


 「俺のところはこんな感じだ。トーマ達はどうだった?」


 ここ数日、アルバ達は各宿場町で、その日の出来事を互いに話すのが日課となりつつあった。


 「僕たちのほうは、野盗を警戒した後に、大丈夫そうだったから、死体の処理方法を教えてもらって、、後はいつも通りだったかな。」


 1つ付け加えるが、彼らは死体を見慣れている。その為、死体を見ても取り乱すことはない。

 見慣れている理由としては、彼らの故郷が起因してると考えられる。


 「あ!でもー、死体から変なもの拾ったよねー。なんか、、『小さな黒い箱?』みたいなもの。」


 「なにそれ?」


 「あたし達に聞かれても分かんないよー。気になるなら、ロニさんがそれを持ってるし、聞いてみたらー?。」


 「よし!お前ら、訓練再開するぞ!」


 会話の途中だったが、キンチの呼び声に返事をして、再び訓練が始まった。


 「リーンの奴からも聞いたと思うが、お前達はとにかく実践(けいけん)不足だ。アルバだけは少し出来るようだが、俺からすると他の2人とあまり変わらん。だから、今からお前達は俺と組み手をする。本気でかかってこい。」


 「「「はい!!!」」」



 ここでアルバ達のここ数日の行動について少し説明しよう。

 彼らはここ数日、移動→到着→訓練→食事と交流→就寝 といった感じに行動している。交流の際に、彼らは商隊メンバーと仲を深めたり、メンバーと他の旅人達の情報交換を聞いたりしている。

 

 それとは別に、常に荷車の見張りを交代制でしており、アルバ達も例外ではなく、見張りをしている。

 

 しかし、本日、その日課となりつつある行動に3つの異変が生じた。

 

 1つ目は、キラリと名乗る少女の見張りの問題である。敵対の意思はおそらく無いと判断された彼女だが、依然、目的及び能力が不明であり、危険人物であることに変わりはない。

 

 そのため、彼女の見張りを決める必要があるのだが、これは、リーンとエルレが名乗りをあげることですんなり解決した。


 2つ目は、川の氾濫である。次の目的地の途中にある川の上流が大雨により、増水してしまい、渡河出来なくなってしまったことだ。

 

 だがこれも、幸い、氾濫が起こったのは10日程前のことなので、2日程、この村に滞在すれば、渡れる様になるのだという。

 

 これを受け、フラーテの商隊は、時間、物資的にも余裕があり、問題なく滞在出来るため、2日間の滞在をする事にした。その間、交代制ではあるが、アルバは1日の休みをもらった。


 問題は3つ目にあった。それは、、、


 「シサム..さん、ここで何してるの?..です。」


 アルバとトーマが、食事後に珍しく村を散策していると、手持ち望遠鏡を目に当てているシサムに出会った。


 「くそ、、あの泡さえなければ、、、」


 アルバの声を意に返さないシサムの視線の先には、今までの宿場町にはなかった、山間部に位置するリサグ村の特産品である"温泉"に入れる施設があった。


 「シサムさん?聞こえてますか?」


 「聞こえとるわい!何用じゃ?見ての通りワシは今忙しい。」


 シサムは、返事はしたが、トーマ達の方を見向きもせず、体勢を変え続けている。


 「?? その先に何かあるのか?..です。」


 「アルバ、確かその先は、温泉?っていうのがあったはずだよ。今、エルレとかリーンさんとか女の人が使ってるんじゃなかったっけ?」


 「あー、確かにあったな!で、そんなとこ見てて何してるんだ?」


 「僕に聞かれても分かんないよ。」


 

 「...後ろでごちゃごちゃうっさいのう!お主らは!」


 シサムが、アルバ達の方を見ながら怒号を飛ばす。アルバとトーマは、これほど声を荒げるシサムを初めて見て驚いている。


 そこでシサムが何か思いついたようだ。


 「ふむ。気になっているなら、何をしてるか教えてやろう。ただし、今から言うワシの任務をこなしてからじゃ。」

 

 「えー、別に今教えてくれたっていいじゃん!..です。」


 「やらないと言うなら別に良い。ただ、ワシが何をしとるかは謎のままじゃがの。」


 「うーん。僕はそんなに気にならないから、別に、、」

 

 「トーマ、やろう!」


 断ろうとしたトーマに、アルバが割って入る。こうなったアルバは止まらない事をトーマは理解していたため、ため息を着きながら了承した。


 「ならば、お主らに任務を与えよう。それは、あの温泉施設の隙間や上を塞ぐリーンの泡を取り除き、中をワシに見せろ。指(・)の能力でも、魂力でもなんでも使って良いから取り除くんじゃ。お主らはバレても良いが、施設を傷つけたり、ワシの任務だとバラすことは禁じる。」

 

 「了解!..です。」

 「はぁ、分かりました。」


___________________________


 

 1匹の梟が空から、2人の少年の動向を見つめていた。


 「引き受けたはいいけど、アルバは何か考えでもあるの?」

 「ない!」

 「そう言うと思ったよ。」


 「トーマは何かあるの?」

 「アルバと一緒。僕もない。」


 彼らは温泉施設に向かいながら、任務についての会話を行なっているようだ。そして、段々と彼らの会話が白熱してくる。


 「だーかーらー、その案は無理だって!!」

 「なんだよ!!無理って!トーマ、そればっかじゃねえか!」


 「アルバが無茶な案ばっか出してるからだろ!!それにシサムさんが、施設は傷つけるなって言ったこと、もう忘れてるでしょ!!!」

 「わ、忘れてねーよ!!」


 「忘れてなかったら、お前の能力で『上から泡を施設ごと叩き潰す』なんて出てこないよ!!」

 

 「じゃあ、他にどうするんだよ!穴開けてもリーン..さんに気づかれたら、すぐ隙間を埋められて意味ないって言ったのはトーマだろ!!なら、上から一気に潰すしかないだろ!」

 

 「だーかーらー、それだと、、、あ!」

 「なんだよ!!」


 トーマは、アルバとの喧嘩中に何かを考えついたようだ。


 「そういえば、シサムさんがアルバの能力のことを指(・)の能力って言ってなかった?」


 「確かに言ってたような気がする。」


 さっきまで喧嘩していたのに、何事もなかったかのように会話し始める。子供とはよく分からないものだ。


 「アルバの能力って棒みたいなものを出すやつでしょ?あれ指だったの?」


 「え!あれ指だったのか!?じゃあ曲げれたりするのかな。....うわ、本当だ。指みたいに動かせる、、」


 アルバが能力で出した棒状のものは、己が指を操るように動いていた。


 能力は、人と同じように成長する。日々の鍛錬で筋肉をつけるような成長もあれば、コツを掴んだ瞬間に、突然高く飛べるようになる成長もあるし、例えば彼のように使い方を自覚することで、実質的な成長をするケースもある。


 まあ、棒が指のように使えるからって、強くなるかと言われたら微妙だけどな。


 「指みたいに扱えるならさ、リーンさんに気づかれずに泡を潰して隙間を開ける方法があるかもしれない。」


 「本当か!!」


 「うん。僕たちが、『リーンさんが泡を潰したことに気づくとしたら、どんな理由があるか』って、会話したの覚えてる?」


 「えっと、結構まばらにかつ大きく塞いでるから、潰したら、風が入ってくることや、そもそも穴が空いたら、パッと見で分かっちゃうとかだっけ?」


 会話を覗いていて、1つ分かったことがある。この少年達は、自分なりに様々なことを考えているようだ。ただの野生児ではない。素晴らしい事だ。


 「そう!で、施設のすこし曲がってる壁を見た時に、横穴が泡で埋められてたでしょ?そこを潰しつつ、アルバの能力の指を曲げながら隙間なく塞げば、バレずに行けそうじゃない?」


 トーマは、自分の人差し指を緩く曲げながら実演しつつ、身振り手振りで話していた。


 「でも、結局シサム..さんに中を見せる時、開けるから意味ないんじゃないか?」


 「それは、、アルバが中を見せる時に、僕が反対から自分の手で泡を沢山割ったり、大きな音を出して、注意を引くよ。どう?」


 「お!確かに今までで1番いけそう!流石だよ!トーマ!!」

 

 2人の少年は、やる事を決めたようだ。なら、俺もそろそろ、彼らの覗きをやめて動くとするか。


 梟を自動操縦(オートモード)に切り替えて、命令を出してっと。


 そして、少しの背伸びをして、とある人物に近づく。


 「シサムさん。そこから退いてもらえません?」


 俺はエロ爺(シサムさん)に声をかけると、エロ爺(シサムさん)は微動だにせず、真っ直ぐ温泉施設の方を向いている。


 「シサム?誰じゃそれ?ワシはここで、この村を眺めるのが趣味のただの老人じゃよ。」


 声も変え、とぼけているエロ爺(シサムさん)を、ぶん殴りたくなった俺は、手が出そうになるのを抑えながら話す。


 「宿場町に着いたら、いつも俺の梟を飛ばして、パトロールさせてんの知ってるでしょ?統括として、僅かでも、身内から問題となりそうな事を起こすわけにはいかんのです。」


 「はぁ。お主も男なら、分かってくれると思ったんじゃが、、それに、彼奴(きゃつ)らを見逃してたしのう。」


 エロ爺(シサムさん)はそう言って、アルバ達の方へと手持ち望遠鏡を向ける。


 「あいつらを見張ってたのは、あなたのせいで村の人に迷惑をかけないか見てただけです。そして、俺は統括という立場ですので、、すんません。それに、俺はガキには興味ないです。」


 「ワシもないわい!見ようとしとるのは、他のナイスバディな女子(おなご)達じゃ!」


 あんたからしたら、全員ガキだと思うが、、まぁ、そんなことはどうでもいい。

 それより、このエロ爺(シサムさん)には、早く退いてもらおう。


 「シサムさん、もし今、それを止めないなら、、」


 「なんじゃ?殴ってでも止めるか?」


 「今日から本拠地に帰るまでの間、ずっと交代なしで寝ずに見張り役をしてもらいます。」


 「な、なんと酷いことを!お主にそんな権利は、、、あるわ」

 

 エロ爺(シサムさん)は、肩を落として宿に戻っていった。 

 

 さて、俺の方は片付いたが、アルバとトーマ(あいつら)はどうなったことやら、、

 

__________________________



 シサムの任務の翌日に休みをもらったアルバは、朝早く村を探索していた。

 

 結局、アルバ達はリーンに気づかれた。その後の顛末は、アルバの腫れた顔から想像してほしい。


 頬がヒリヒリとする中、静かな村を探索していると、おそらく村の狩人が、見慣れない鉄の筒がくっついた木の杖を肩に担いで、山へ入っていくのが見えた。

 

 「(なんだあれ……?)」


 ただの棒じゃない。油と、焦げたような奇妙な匂いがする。

 好奇心がくすぐられたアルバは、狩人の背中を追って森に入った。

 

 アルバは、落ち葉を踏む音も、衣擦れの音も、呼吸さえも森のざわめきに溶かし込む。


 これは、大掃討(アルバ達の故郷での、ゴミに火をつけ、ゴミを一掃する行為の事)の時に、死に物狂いで身につけた技術である。


 狩人は、後ろに子供が張り付いていることなど微塵も気づいていない。


 森の奥深くで、狩人がふと足を止め、その奇妙な杖を構えた。

 視線の先に茂みの奥から姿を現したのは、普通の獣ではなかった。全身に赤黒い斑点が浮かび、熊よりも巨大な獣だ。


 狩人は震える手で、杖の引き金に指をかける。

 カチッ、という小さな金属音。

 次の瞬間、ドォン!という音と共に、杖の先端から白煙と火花が弾けた。


 「(!!!!!)」


 見えない礫(つぶて)が巨大な獣の肩をえぐり、血しぶきが舞う。


 だが、威力が足りなかった。


 激痛に狂乱した獣が、咆哮と共に狩人へ襲いかかる。

 

 「くそっ!」


 あの道具は、次の攻撃をするまでに何かを詰め直さなきゃいけないらしい。間に合わない。


 狩人が顔を歪め、死を覚悟して、目を閉じる瞬間。

 

 「危ない!!」


 アルバは木の枝から跳躍し、獣の死角へ潜り込む。そのまま、能力と共に思いっきり殴る。


 先の礫とはまた別の、大きな衝撃音が聞こえる。


 獣は気絶することはなかったが、よろける。

 そして、フラフラとした足取りで、森の奥へ引き返していった。

 

 「(本気で殴ったんだけどな。)」

  

 静寂が戻った森の中。訳が分からない顔をしている狩人をよそに、アルバは地面に転がった鉄の杖を拾い上げた。


 まだ先端から少しだけ煙が出ている。火と鉄の混ざった、焦げ臭い匂い。


 「すげー! なにこれ、さっきドカンって鳴って肉が弾けたよね!?これは法具!?」


 「子、子供が、、なんでこんな所に・・・魔獣を追っ払ったのか、、」


 「ねえ、これ俺にも見せてよ! 使い方教えてよ!」


 ギリギリで命拾いをした狩人の蒼白な顔を全く意に介さず、アルバは初めて見る物に、無邪気で満面の笑みを向けていた。


6話どうだったでしょうか?面白いと思っていただけたなら、次も見に来てくれると嬉しいです。

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