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その旅の果てに 〜世界を巡る彩色録〜  作者: 浦島 晴次郎
序章 旅立ち

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5/14

5.星空の少女

多分5話目です。前回が少し短かったので、少しだけ長く書きました。楽しんでいただけたら幸いです。


 商隊の一員となり、数日の時が過ぎた。


 アルバ達は、護衛見習いという立場となり、日々、様々なことを教えてもらっていた。


 フラーテの商隊は、少し離れた先頭に次への目的地の為の案内人と1人の護衛、前衛に1人の護衛、中央に2台の荷車、後方に1人の護衛が縦列で配置されていおり、アルバは中央の荷車の片方に乗っていた。


 「そういえば、フラーテ..さん。あんたたちは、商人なんだろ?..です。2つの荷車を見たが、目の前の"この大きな袋"以外何も載ってなかった..です。もう帰るのか?..です。」


 「いや、ルスラグっていう国の首都に行くよ。その国を最後に本拠地に戻る。」


 アルバは取り敢えず、年上の人には「さん」、言葉の最後に「です」を付けることを、キンチに言われたので、それを守りながら、同じ荷車に乗っているフラーテに気になった事を聞いた。


 「じゃあ、なんで荷物が、この袋しかないんだ?...です。」

 

 アルバの目の前の大きい布袋を指差しながら、フラーテに確認する。

 

 「フフッ。...すまない。君が面白くて、少し笑ってしまったよ。それで、商品はどこにあるか?だっけか。..その袋の中に全てあるよ。ああ、その袋には、決して手を突っ込まないでくれ。商品が傷ついたらたまったもんじゃないからね。」


 だが、目の前の布袋は大きいからといって沢山の商品が入る容量はない。それに、布袋が少ししか膨らんでいない為、そもそも商品自体があまり入っている様には見えない。


 教養がないアルバでも流石にそんなことは分かるため、バカにされているのでは無いかと勘繰る。


 「この袋に商売できるほどの荷物が入っている様には見えないよ..です。」


 「ああ。確かに見えないね。まあでも、これは法具だからね。この袋の見た目では考えられないほどの商品がこれには入る。入った商品は袋の口から見えないのに、何故か入れた本人が念じて手を突っ込むだけで、保存された商品が出てくるんだ。すごいだろ?」


 「...法具って、そんなことま・・・・」


 アルバが何か言いかけた時、御者がフラーテを呼んだ。何やら、前衛に居るリーンから話があるらしい。


 「ロニさん(先頭の護衛)が、この道を1人で歩いている女の子を5人の野盗が襲い、その野(・)盗(・)が(・)殺(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)ところを見つけました。」


 「そうか、、その女の子は気の毒だが、野盗は早めに処理しよう。....ん?野盗が殺されただって??」


 「はい。女の子が瞬殺したらしいです。指示をください。」


 フラーテは、通常では起き得ないことに頭が困惑したが、一瞬で整理し指示を出した。


 「...すぐに荷車を止めろ。リーンとキンチで野盗の残党を警戒しつつ、ここを守れ。ロニはまだその子を監視しているな?なら、僕が接触を図る。シサムさん、着いてきてください。」


 「承知しました。」


 「了解じゃ。...ふぁーあ。よっこらせ、と」


 フラーテの指示で、ある者は情報の伝達をし、ある者は、防御陣形の指揮を取るなど、各々のメンバーが自身の取るべき行動を瞬時にとる。


 「なぁ!..です。俺もフラーテ..さんに着いていっていいか?..です。」


 「そうか。君たちがいたか。....いいよ。着いてきて。ただし、僕が指示するまで、何もしないでくれ。他の2人には、荷車をリーン達と一緒に守ってもらう。」


 「!!ありがとう!..です。」


 かくして、フラーテ、シサム、アルバの3人は報告を受けた子の元へと向かった


______________________________________________


 俺は、ロニだ。今はツガーフ家の護衛の統括をしている。ツガーフ家は、この商隊の護衛以外にも複数の魂力使いの護衛を抱えており、俺と爺(シサムさん)以外の全員が、ツガーフ家独自の施設で育てられた。

 

 なのに、爺(シサムさん)ではなく、爺(シサムさん)より、年齢が若く外様の俺が統括をしている。


 そのせいで、ツガーフ家の旦那方の無茶な要求と下の連中の信頼を勝ち取るために機嫌を取りつつ、仕事の方へと彼らの意識を向けさせる事の板挟みにあっている。

 ここに来て、磨かれた能力は『頭の下げ方』と『胃痛に対する知識』だ。

 

 ま、金払いが良いから続けてるんだけどな。



 そんで今日、胃が痛くなる景色を見た。

 

 この数日の間で会話したアルバ達と、さほど年齢が変わらなさそうな少女が5人の野盗を瞬殺した。絶対に魂力使いだ。


 笑えるか?笑えないね。

 

 そもそも、魂力使い自体珍しいもんで、ツガーフ家に来た時は、それが結構いて、こいつらは国との戦争でも企ててるんかって思っちまった。

 

 そんな珍しいもん(しかも子供(ガキ))が、ここ数日で4人も出会うなんて経験は今後しないと言い切れる。

 

 で、今はその少女の監視を俺の能力でしている。あの年で魂力を使えるってことは"ギフテッド"の可能性もある。あぁ、嫌だねぇ。

 ていうか、何で統括の俺が、こんな事しなくちゃいけねえのかな。はぁ。

 


 ここでロニの能力について、少し解説しよう。

 能力名は『相棒(フクちゃん)』と言い、魂力で視界が共有可能かつ実体のある梟《フクロウ》を生み出し、それを自動操縦(オートモード)と手動操作(マニュアルモード)で分けて、操る能力だ!

 ちなみに、フクロウは魂力で生み出しただけであって、生命ではないぞ!

 


 ロニがそんな事を考えていると2頭のラパの足音が聞こえる。

 

 「あ、フラーテさん。この先を真っ直ぐ進めばいますよ。丈の短いワンピースを着ている、淡い桃色髪の少女です。」


 「相変わらず便利な能力だね。そのまま案内をして欲しい。苦労をかけた分、後で何か労うよ。」


 「ありがとうございます!!こっちです!」


 ロニは、心内で『フラーテさんはやっぱり違うぜ』とガッツポーズをした。


 そうして、彼らは件の少女へと会いにいった。


___________________________



 俺がその女の子と出会って感じた事は、なんというか、うーん、『綺麗なガラクタ』だ。なんでそう思ったかは分からないけど。


 

 俺は、フラーテ..さんに着いていって、野盗を殺したっていう女の子と対面した。フラーテ..さんが声を掛ける前に違和感を感じたのか、その女の子が振り返る。


 彼女を見た時、俺は目を奪われた。


 故郷で暖かい時によく見る、あの花の様な淡いピンクの髪。

 両腰には、こんな形(凵)の柄がついた短剣が2本。

 人形の様な整った顔立ちで、背は俺より少し高い。

 

 だが、俺が目を奪われたのはそこじゃない。


 彼女の瞳だ。彼女の瞳の中には、夜に見る星空が在った。これは例えとかじゃない。本当に在った。


 吸い込まれそうになる。あの瞳をずっと見ていたい。

 そんな呆けた考えをしている俺を、彼女から来る強烈な血(・)の(・)匂(・)い(・)が現実に引き戻す。


 「あの、、何ですか?」


 振り返った少女が先に、俺たちに質問をする。彼女の態度に敵意は感じない。


 「いや〜、僕達は君に感謝をしたくて、ね。あの野盗、君がやったんだろう?つい先ほど僕の商隊の斥候がそれを見ててね。あのままだと、僕達が野盗に襲われてしまうところだったよ。それで、君にお礼をしにきたってわけなんだ。」


 フラーテ..さんの言っている事が、本当なのか、嘘なのか、俺には分からなかったが、フラーテ..さんの目つきは見た事がある。俺が彼にお願いをした時に、俺たちに向けていた目つきと全く同じものだ。


 「うーんと、その3人のお連れさんがいるなら、あの程度なんてすぐに処理できると思うけど★ 本当のこと言ってます?」


 「はははっ、これは手厳しいな。彼らの実力を見抜いてしまうとは。本当のことを話すと、君のことを警戒しててね。大人を5人殺したんだから、当たり前だろ? でも、感謝しているのは本当さ。だって僕達が、相手する手間が省けたんだから。」


 「へぇー、そうなんだ☆」


 目の前の彼女は、終始笑顔で会話をしているが、あの星空の瞳は、にこりともしていない。それが少し不気味だった。


 それにしても、フラーテ..さん、わざわざ『警戒している』なんて、相手に伝える必要があったのだろうか。


 「それで、警戒している私に何の用です?」


 「それは、、君に聞きたい事があってね。まず、君の名前と、どうしてこんな危ない道に1人で歩いているか教えてもらってもいいかな?」


 「それを言ったら、この問答は終わりになります?私、結構急いでるんです☆」


 「ふーん、急いでるんだ。なら、僕たちがその目的地の途中まで、送(・)っ(・)て(・)い(・)っ(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)よ。話は、僕たちの荷車の中で詳しく聞くとしよう。」


 その言葉を聞いた目の前の彼女の表情に変化はないが、澱みなく行われていた会話にほんの少し間があく。


 「えー、いいんですか?やったー!!嬉しい☆ じゃあ少しの間乗せてもらいますね!」


 「なら、僕たちの荷車まで戻ろう。安心してくれ、ラパならすぐ着くと思うよ。」


 そうして、思っていたよりあっけなく、俺たちは荷車まで戻ることとなった。


 俺は戻る途中、会話の終わりにシサム..さんが、ぼそっと「脅迫じゃな。」と言っていた事について考えていた。


 あー、そうか。彼女は初めから、『3人のお連れさんなら、あの程度すぐに処理できると思うけど』と言って、俺たちの実力を(完全にではないと思うが)見抜いていた。

 

 つまり、俺たち3人が一斉に彼女に襲い掛かると、どうなるか理解していた。初めから、あの場において暴力で負けている彼女に、選択肢などなかったのだ。

 

 だから、フラーテ..さんは、その事が分かった瞬間、わざわざ警戒していることを伝えて、彼女に圧力をかけたのかな。多分。


 これ以外にも色々と考えてそうだけど、あの少しの会話で、謎の少女を自分のテリトリーに引き込んだのか、、すげーー!!


 俺は頭の中が自分なりに整理された事で、気持ちよく荷車へと戻った。

__________________________


 「はーい!私の名前は、キラリって言います☆ ここを1人で歩いてたのは仕事に行くためです★」

 

 荷車に戻り、野盗の死体の処理をした後で、再出発した荷車の中で、自らをキラリと名乗る少女は、フラーテからの質問に答えていた。


 「ちなみに、仕事と言うのは、どこで何をするつもりなのかな?」


 「ルスラグっていう、そんな大きくない国のラガールってとこに行きます☆ 内容は、、信用に関わるので言えないです!商人の方なら分かってくれますよね?」


 「うん。信用の大切さは身に染みているからね。聞いても意味はないかな?ていうか、ラガールなら、僕たちも補給地点として寄るから好都合だね!あと、、僕ら商人であることを言ったっけ?」


 「えぇ!ラガールに寄るんですね!私って、ほんと幸運☆ 商人の事なら、この荷車の家紋を見れば、少し知識のある人なら誰だってツガーフ家であることは分かりますよ!!」


 ツガーフ家には、その存在を象徴するために、真紅の盾に、銀山の頂に立つ、黄金の双角を持つ黒き牡羊の家紋がある。

 

 そのため、ツガーフ家の商人達は、商談の際に自身のどこかに、その家紋(誇り)をつけ商談を行う。


 話は少し外れるが、フラーテも、商談に際には、異次元の袋から胸に家紋(誇り)を刺繍された上着を取り出し商談を行う。


 「そうなんだ。で、本題なんだけど、キラリちゃんは何で魂力を使えるのかな?教えてくれる人がいたのかな?」


 「魂力って野盗を殺した力のことですか?それなら、生まれた時から使えました★ 昔から、使えてたので、教えて貰ったことはないです☆ 」


 フラーテはこの幾許かの問答で、キラリに対する警戒心をさらに強めつつ、感服していた。


 なぜなら、静かに刀に手を置いているシサムが彼女の真横にいながらも、本心を話しているように、平然と迷いなく、かつ元気よく流暢に答えていたからだ。


 その胆力と話術は、アルバ達とさほど年齢が変わらない子供が持てるものではない。

 

 「へえ、生まれつきって事は"ギフテッド"なんだ。だから1人で仕事してるんだ。まだずいぶん若いと思うけどすごいねぇ。それで、君の能力と、仕事の内容についても教えて欲しい。」


 「えー!?信用が大切って分かってくれてたから、仕事の内容については、聞かないでくれると思ってたのに☆。」


 フラーテは、キラリの感情の籠ってない駄々に冷たく返す。


 「それは君の問題だろう?僕達には関係ない。それで答えは?」


 「えっと、、両方言えません☆」


 「へぇ。それはどうなってもかい?」


 フラーテの言葉の直後、真横でシサムが刀を握り、殺意をキラリへと向ける。それは、戦闘経験がなく、また、圧力をかけた側であるフラーテが冷や汗をかくほどのものだった。


 場に緊張感が漂い、荷車のカラカラという移動音が妙に響く。


 「それでも言えません。」


 キラリは変わらず凛とした態度を取り、声に微塵も怯えや焦りはない。


 フラーテはため息をつく。


 「はぁー。分かった。君からそれを聞き出すのは厳しそうだ・・・。ここを血で汚したくないしね、、、ああ。今、1つ疑問に思ったんだけど、何がそこまで君を駆り立てるのかな?」


 「強くなりたいからです★」


 「続けて聞くけど、何で?」


 このフラーテからの問いに、初(・)め(・)て(・)キラリの言葉が詰まる。真横では、殺意は収めたが、変わらず刀に手をかけ、静かに座るシサムがいる。


 十数秒の沈黙の後に、キラリが満面の笑みになる。

 

 その顔は、とても綺麗で、透き通っていて、そして、、瞳の奥には一切の温度がなかった。


 「殺したい人がいるの★」


 これまでの彼女の発言の真意は定かではないが、この予想外の返答だけは、この場にいる者達に『真実を話している』と思わせるだけの"何か"があった。


 そして、荷車内に静寂が訪れる。数秒後、その静寂をずっと静かにしていたアルバが破る。


 「ちょっと考えてみたけど、すげー大変な目標だな!ま、死なない程度に頑張れよ!気持ちも少しだけなら分かるしな。」

 

 アルバの発言で、キラリが目を見開く。どうやら、彼女もまたアルバの発言が予想外だったらしい。


 「否定したり、嗜めたりしないんだね☆ ...応援してくれるのは嬉しいけど、"死なない程度"って言うのはどうして?」


 「死なれたら、俺が悲しいからだ!!もう知り合っちまったからな!!」


 「まだ、出会って間もないのに??ふふっ。」


 ふとキラリが漏らした笑みは、今までの彼女では考えられない、年相応の可愛らしさがあった。


 彼らの会話を静かに聞いていたシサムは、わずかに微笑み、心内で呟く。


 「(絵空事ではなく、人殺しを夢に掲げ邁進する子供と、人を喪う痛みを知りながらも、その背中を押す子供か、、、純粋故に、あるいは、欠落故にか。ヒョッヒョッヒョッ、愉快、愉快。)」


 再出発した時とは、別の緊張感が漂っていた荷車に、御者が告げる。


 「皆さん。もうすぐ、今日の補給地点であるリサグ村に着きますよ。」


5話どうだったでしょうか?面白いと思っていただけたら幸いです。面白いと思っていただけたなら、今後とも見に来てくださると嬉しいです。

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