3.立ち位置
投稿遅くなりました。3話も楽しんでいただけたら幸いです。
僕は日の光で目が覚める。気づいたら、泣き疲れて地べたで眠ってしまったらしい。横を見ると、エルレとアルバも同様に眠っていた。
昨日は、僕にとっても色々ありすぎて、まだ整理ができてない。けど、アルバが前に進もうとしてるんだから僕も頑張らなきゃって思う。
トーマは体に強い倦怠感を感じていたが、無理矢理にでも体を起こし、彼らの体を揺らして起こす。
「アルバ、エルレ、もう太陽が昇ってきてるよ。早く行かないと、あの人たちに置いていかれちゃうよ。」
「・・・・・・ぅん、、、はっ!!!」
アルバは僕の呼びかけに、勢いよく飛び起き、周りを見て大きなため息をついた。そうする気持ちは痛いほどわかる。
「...エルレはっと・・・・・」
「・・・ん。おはよー」
挨拶をしたエルレを見ると、目に隈が出来ていた。いや、エルレだけではない。ここにいる3人共、いつもは寝れば疲れは取れるのだが、疲れが残っているように見える。
少ししてから、完全に起きたアルバが皆に話しかける。
「改めて、みんなが大変なのに、俺のわがままに付き合わせちゃって、ごめん!!!!」
そう言って彼は頭を下げたが、トーマとエルレはその事はもう気にしてなどいなかった。
「アルバ、昨日も言ったけど、アルバについていくって決めたのは僕たちだ。アルバが気にする事はない。」
「完全に同意〜。ていうか、早く行こー。」
「!! 2人ともありがとう!!!」
アルバが礼を言うと、立ち上がり先導するエルレについていった。僕もそこから遅れて2人についていく。
2人から少し遅れた彼は、後ろを振り返ると僅かな寂寥感を胸に抱いたが、先にいく2人に置いてかれないよう前を向いて進んだ。
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「シサムさん!!本当にこいつらなわけ?まだ子供じゃないですか!?それに、汚いし臭うし....」
「何も間違っとらん、リーンよ。身なりは汚れているが、近くに川もある。お前の能力で洗えばいいだろう。じゃが、スラムの子じゃろうが誰じゃろうかその"目"を向けるな」
トーマ達が、地図上で印のついたところに辿り着き、シサムと言われていた老人に声をかけると、リーンと言われたポニーテルの赤茶髪の若い女が、うごく害虫を観察するような蔑んだ瞳でトーマ達を見つめており、シサムに諌められていた。
「俺たちは別に何とも思ってないよ。慣れてるからね。」
アルバの言った事は事実であり、スラム外の者が彼らのことを見る時はリーンのような瞳で見てくる者が大半である。
むしろ、ヴィクトルやシサム、フラーテのように分け隔てない瞳で見てくる者の方が珍しい。
リーンは、シサムやアルバの言葉を聞いて何を思ったか、汚物を見るような目は変わらないが、そこに蔑みの色はもうない。
「...悪かったわね!ちょっと汚いのが気に入らなかっだけ。....右の方に川が見えるでしょ。そこに行きなさい。私が洗ってあげる。でも、私には近づかないでね!!!」
そう言われて、トーマはシサムの方を見ると、こくり、と頷いたため、アルバ達と一緒に軽い自己紹介をしながらリーンについていく。
川に到着し、リーンの指示で服を着たまま川に入る。すると、上空に突然泡が出現する。トーマ達が唖然としていると、その泡は自発的に動き、トーマ達を覆う。
「これが私の能力。『泡・泡・泡(SBA)』 自分の魂力に応じて泡を出したり操ったりできるの。しかも、汚れを落とすのに加えて美容効果までついてるの♡ 売られている石鹸より高品質よ。」
「能力・・・・?これは、、何?危険な感じはしない、、というより、むしろ気持ちがいい気がする、、」
トーマの困惑も無理はない。彼らは今までグレイによって煮沸されたお湯で体を洗い流すだけだった。綺麗な水を手に入れるのも一苦労であった彼らに石鹸を手に入れ、その泡を見る余裕などない。
ましてや、いきなり能力などと言われるのももってのほかである。
リーンは少し距離を置いたところにいる。彼女曰く、少し綺麗好きなのだという。
「このまま、洗われながら聞いて。私と後もう1人があなた達の指南役になったの。シサムさんからはどこまで魂力や能力について聞いてるの?」
「使うと疲れるけど、身体能力とか上がる特別な力ってとかまでは聞いた。能力はよく分かんない。」
「はぁー、そこまでしか聞いてないのね。いい? よく聞きなさい。あなた達がどこまで使えるか知らないけど、魂力ってのはね、扱えるようになるまで3年はかかると言われてるの。そして、魂力を扱える者が、強い感情を発露した時に能力に目覚めると言われているわ。つまり、一生能力を使えない魂力使いもいるってわけ。ま、例外もあるっちゃあるけど。あ、能力っているのは、私が今使ってる通常では考えられない力のことね。魂力自体は、見ることが出来ないけど、能力はこんな感じで目に見えるの事が多いの。」
リーンの説明は、意外にもトーマの頭の中にすっと入ってくる。
アルバの家に来てから、グレイに、よく分からない訓練をさせられていた事と、気づいたら扱えてた力について口外をするなと厳しく言われていたからだ。
他の2人も自分と同じなのだろうかとトーマが気になっていると、エルレが手を挙げる。
「質問が2つありまーす。」
「えっと、エルレちゃんだっけ?何かしら?」
綺麗になってきたからなのか、質問しているのがエルレだからなのか分からないが、リーンの態度が明らかに優しくなってきている。
「さっき言ってた例外って何ですかー?後、あたしたちがここに来た時〜、何で子供ってことに、驚いてたんですか〜?」
「それは、俺も気になってた。魂力ってのは子供に教えちゃいけないんだろ?それが何か関係してるのか?」
どうやら、僕がリーンの言っていることを理解している間に、2人は疑問点が出てたらしい。確かに気になる。
「そうね。2つ目の質問から答えるわ。アルバ君の言っている通り、年端もいかない子供に教えることは禁忌とされてるわ。なぜなら覚醒時は、魂力が制御できずに暴走するの。それを鎮めるために必要なのは、感情を安定させることと、安定させてる間に魂力の暴走に耐えられる身体。その両方を子供が持つ事はかなり難しい上に、子供は些細な事で覚醒する事が多いの。それで、これまで数多くの子供の死者を出してきた。だから、禁忌にされてるってわけ。」
「そーなんだ!じゃあ、例外ってのは?」
「それは、実物が出た時に教えるわ。それより、もう十分綺麗になったでしょ。川から上がりなさい。」
リーンの説明で気がとられていたが、気付くと身体が十分綺麗になっており、トーマは今まで、感じたことのない気持ちよさを感じていた。
川から出ると、川に入ったのに僅かにしか濡れていなかった。
「私の泡はね、少しだけなら水を吸い取るの。厳密にいうと吸い取ってはないんだけどね。あまり濡れてなくて、驚いたでしょう!」
「能力ってすげーな!そんなこともできるのか!!それに、めちゃ気持ちよかったぜ!」
アルバの純粋な褒めで、リーンは得意げになっているようだった。
「綺麗になったところ悪いけど、あなた達の実力を見せてもらうわ!」
「実力って何ですかー?」
「あら、そのままの意味よ。でも、ちょっと待ってね・・・。おい!!キンチ!!あんた、いつまでそこに隠れてんの!?」
リーンの怒号が川のそばで響いた。
その怒号の後、少ししてから、背が高く、坊主で少し強面な男が出てきた。
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私の名前はリーン。昨日、シサムさんから突然、新人の指南役に初めて任命されて、とても緊張していたけど、楽しみにしてたの。
それなのに今日、彼ら3人に会った時に、臭いと身なりがひどくて、思わず変な態度を取ってしまったことを申し訳なく思ってるわ。
それで挽回できるように、魂力の扱い方や戦闘技術をしっかり教えようと思って、もう1人の指南役のキンチに呼びかけたのに、あいつ、子供3人に対しても臆病風吹かしてるの。
これから実力を見ようって時にも、まだ隠れてるから、呼び出したってわけ!!
「お、俺の名前は、キンチって言うんだ。いいか、お師匠達について来るってことは、俺はお前らの先輩になるってことだ。そこんところ頭に入れといてくれ。よろしくな。」
「あんた、さっきまでビビってたくせに、よくそんな態度取れるわね。」
「ビビってなんかねーよ!!」
こいつは、臆病なくせして、相変わらず変なところ気にするのね。
このむかつく挨拶にも、真摯に対応してるこの子達の方が、よっぽど大人に見えるわ。
...おっと、お互い自己紹介が済んだようね。
「お互い自己紹介は済んだわね。今からあなたたちは、キンチと1対1で手合わせをしてもらうわ。もちろん、魂力を使ってね。安心して、手加減はするから。」
実力を見るには、これが1番手っ取り早いわ。
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俺はキンチって言う。リーンの奴には、臆病だとか、ビビリとか、穴の空いた靴下とか言われてるが、俺から言わせてもらうと、俺はただ慎重なだけだ。
お師匠もよく、物事を観察しろって言ってるから俺はそれを実行してるだけだ。
手合わせとリーンの奴が言ってたが、ここでしっかりと俺が先輩である事を分からせなくちゃいけねぇ。もちろん能力は使わない。そうでないとしっかりと分からせられねえからな。
って思ってたんだが、こいつら普通に強くねぇ?
トーマとエルレっていう奴らはもう5年は魂力についての修行をしてるって感じがする。まだまだ戦闘技術は稚拙だが、こいつらまだ11歳とか何だろ?世界って広いな。
で、次はアルバって奴の番だ。俺はこいつが気に入らない。なぜなら、お師匠に対する口の利き方がなってなかったからだ。
目上の人には敬意を持った接し方をしないと組織ってのは回らねえ。
だが、何を教えるにしても、まずは俺の方がしっかりと"上"だってことを分からせなくちゃいけない。
「おい!!アルバ!俺は何もしない。まずは一発打たせてやる。全力で来い!」
「うん!!!分かった!!全力ってことは能力を使ってもいいって事だよね!」
ん?こいつ今なんて言った?能力使えるの??
瞬間、アルバの後方に直径1mほどの大きな棒のようなものが出た。と同時に、アルバに威圧感を感じる。
お互いの魂力量に一定以上の差があると、量が少ない側が威圧感を感じることがある。俺も、過去に感じたことは少なからずある。だが、相手は子供だ
魂力は努力。能力は才能に依る所が大きい。努力と才能の割合で言うと、魂力が7:3、能力は2:8って所だ。
そんでもって、俺が威圧感を感じるなんて、最低でも10年は修行してないといけないと思うんだが(勿論、才能はあるのだろう)・・・。11歳?????
え?俺、これ受けるの??まじ???
...うわっ、突っ込んできた、、やばいやばいやばいやば、、、
俺は腹からきた衝撃で、後方に吹っ飛んだ。
「アルバ、、お前、は、、合格、、だっ、、」
その後、どんな事が起きたかは、気絶してたから知らない。
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キンチさんっていう人はとても強かった。戦うのは初めてだったけど、僕の行動が全て読まれてるみたいにでも足も出なかった。多分、エルレも同じような感じだったと思う。
でも、アルバはキンチさんを吹き飛ばしてた。僕が同じように1発打たせて貰ったとしても、今の僕にあんな事できる気がしない。やっぱり、アルバはすごいな。
「ん?合格ってどういう事だ?」
「あいつバカなのよ。気にしないで。ていうか、あんた能力使えたのね。」
「いや、俺もよく分かってないんだ。今までこんなの出せた事なかったし。でもなんか、身体が理解してたっつーか、どうすれば"これ"を操れるかが自然と頭に入ってきた。」
「それが能力というものよ。突然覚醒しても、身体の1部みたいに、どう操ればいいか分かる。理由は分からないけど。」
へぇー。能力ってそういうものなのか。僕も使えるようになりたい。でも、強い感情のはつろ?が必要なんだっけ。僕も昨日(何なら今も)、すごく悲しかったけど、それじゃダメなんだろうか。
ていうか、キンチさん動かないけど大丈夫なのかな?
「あの人伸びてるけどー、大丈夫なんですかー?」
「さあ?柔な鍛え方をしてないし、大丈夫なんじゃない? ま、一応あいつ連れて、荷車のところに戻ろっか。」
そうして、リーンさんはキンチさんを片手で持ち上げると、荷車?の方へ戻って行ったので、僕たちもついて行った。
トーマは、同じ環境で生まれ育ったアルバが能力を用いたのを見て、自分も何者かになれるかも知れないという明日への期待と希望を胸に抱いて歩を進める。
それは昨日まで、スラムで生まれ育ち"今日"を生きる為に必死だったトーマが初めて自らの未来を描いた瞬間だった。
3話どうだったでしょうか?ご感想のほどよろしくお願いします。面白いと思っていただけたなら、是非とも知り合いの方に共有して欲しいです。
トーマは7年、エルレは4年の間、グレイの元で暮らしていたのに、キンチからの評価が同程度な事を不思議に思った方がいるかも知れません。
私から言える事は、才能とは残酷だと言う事です。




