2.メッセージ
2話です。楽しんで頂けると幸いです。
「ネックレスを返して欲しければ、旅の一員に加えろだって?君、自分が何を言っているのか分かってるかい?第一、僕らが世界を回っている保証もないだろう。」
恰幅の良い男は、アルバの突然の言葉に少しだけだが動揺しているようだ。
「俺は、でかい乗り物に乗ったあんたが馬を操って、王都に入っていくのを見た。あんたらみたいなのを『商人』って言うんだろ?昔グレイが教えてくれたんだ」
「たとえその景色を見たって僕が商人とは限らないと思うけど・・・。それに、、」
恰幅の良い男が何か言いかけたところで、刀を携える老人が男を制す。
「やめい、坊。お主は昔から細かいことを気にしすぎじゃ。それにこやつが坊が探してた者かも知れぬ。」
「えぇ・・・。子供ですよ、シサムさん。なぜそう思ったのですか?」
「勘じゃ」
「勘・・ですか、、、まぁ、あなたが言うのであれば多分そうなんでしょうね。」
老人は、男と話していようが、突然近づいてきたアルバに対する警戒心は解かず、変わらず殺気を飛ばしているため、アルバにも緊張が走り続ける。
男と話し終えたのか老人がアルバの方を向き、髭を触りながら薄気味悪い笑みを浮かべる。
「ヒョッヒョッヒョッ。面白い小僧だ。ワシの殺気を感じておるのに、一歩も引かず取引をしようとしとる。自らの境遇を抜け出すのに立派なことじゃが、その品を守り切る力はあるかの?」
「!?」
老人は気づいたらアルバの横にいた。いや、違う。ただ、老人はアルバの前から颯爽と歩いてきたのだ。
一瞬の気の緩みだった。老人が、アルバに話しかけたときに殺気を解いたことで安堵した一瞬の緩み。
アルバは昔から自身の反射神経や身体能力には自信があった。だが、反応が出来なかった。否、反応する隙を老人が与えなかった。
老人が刀に手を置いた瞬間、頭の中に沸くのは、自身の首が飛ぶイメージ。
アルバは無意識に"魂力"を使い、自身が男と老人に近づいていった距離の3倍以上、後ろに飛び退く。
飛び退いた瞬間に溢れ出る大量の冷や汗と共にアルバの心臓の鼓動が速くなる。
その光景を見て、老人が笑顔になりながら、恰幅の良い男に話しかける。
「おお!こやつ、"魂力"を使いおったわい。見ろ、坊。ワシの言った通りじゃ!」
「・・・流石です。でも、子供が使えちゃあダメなんですけどね。」
「ワシもガキの頃から使えてたがのう。」
「あなたと一緒にされては、その子も困るでしょう。」
「え・・・・・・・・。」
その言葉を聞き、少ししょぼくれた老人を尻目に、恰幅の良い男がアルバに近づく。
「えーと、ネックレスを持った少年。僕の名前はフラーテ・ツガーフ。君の名前はなんと言うのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・」
アルバはフラーテと名乗った恰幅の良い男の声が届かないほど、得体の知れない老人に意識が向いていた。
だが、得体の知れないという事は、アルバにとってまだ知ることのない"未知"の領域であり、汗と共に沸いてくるこの高揚感もまたアルバが感じたことのない感情だった。
「??? おーーーーい!!!」
アルバの目の前でフラーテが不思議がりながら大声を出す。
「!!!!!! なんだよ!」
「あれ、聞こえてなかった?君の名前とできれば、後ろにいる2人も同じ力が使えるか教えて欲しいんだけど。」
今はあの老人よりも、自分のことに集中しなければとアルバは気を取り直す。
「...ああ。分かった。俺の名前はアルバ。後ろにいる2人は、トーマとエルレって言う。同じ力って言うのは、さっき俺が後ろに飛んだときのやつか?それなら、グr...親父が同じこと教えてたから使えると思う。なんだ?連れてく気になったのか?」
フラーテは問いの答えを聞き、鋭い目付きになる。こちらの見た目ではない何かを見ているような目だった。
「うん!そうだね!今の話を聞いて、君達を連れてくことに決めたよ。ついでにネックレスを返してもらう。ところで、後ろの2人には何か説明したのかな?ずっと呆然としてるけど。後、ネックレスを返して欲しい。」
アルバがその言葉を聞き、後ろを振り返ると、呆然としてる2人の姿が目に映る。
「うん、確かに2人に話さないと・・・ここで俺が見た全てを・・・・・・。ありがとう!おじさん。先に2人に話してくるよ!」
「あ、ああ。そうしなさい。それと、僕はまだおじさんじゃない。というか、ネックレス返してくれる?」
フラーテが話し終わる前に、アルバは2人の元へ向かったので、男の言葉はアルバには届いていなかった。
この光景を見ていた老人は指を差し笑っていた。
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「・・・・・・・・・という事があったんだ、、」
アルバは、トーマ達と別れてから起きた事、その全てを話した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ヒッグ・・・ウグ・・・ヒック・・・」
エルレは下を向き何も話さず、トーマは嗚咽しながら、涙を流していた。
「それで、2人はどうする?俺は出来るなら2人には着いてきて欲しい。」
「あたしはー、まだちょっと時間が欲しい・・・」
「グスッ・・・・・僕も・・・」
「分かった。」
アルバは2人に微笑みながらそう言った。
アルバはフラーテに『もう少しだけ時間が欲しい。』そう頼みにいくと、老人が手を後ろに組んで待っており、フラーテは少し離れて体育座りをしながら肩をすくめていた。
「どうじゃ、話は終わったか?」
「...うん。でも、少し時間が欲しい。」
「あい分かった。まぁ、すぐ決めれるもんでもないだろうしの。」
会話中にアルバが遠くで落ち込んでいる男に少し視線を向けると、老人がそれに気づく。
「お主が持っとるネックレスな、以前この国に商売しに訪れたとき、王妃に是が非でも欲しいと言われたものでな。それで、坊のやつ、これを手に入れるためにそれはもう大変な思いをしとっての。それで、今もお主が本当に返してくれるか気が気でないのじゃ。そこを少し煽ったらああなった。全く...いつもはしっかりしてる男なんじゃがの。」
その話を聞き、アルバは自身の行いに対して罪悪感が出るが、老人に対しても何か思うところがあった。
「それで、小僧よ。彼らが決断するまで、まだ時間が掛かろう。その間、せっかく仲間になるんじゃて、気になったことをなんでも訊くがよい。ま、ワシも遠慮なく訊かせてもらうがな。お互いに一問ずつじゃ。」
「うん。いいよ。じゃあまず俺からね。なんで、俺らを連れて行こうと思ったの?それと、ネックレスはもう返したほうがいいの?」
老人は、髭を触りながら少し前の邪悪な笑みとはちがう笑顔を浮かべた。
「ヒョッヒョッ。話が早い男は好きじゃぞ。それで、お主らを連れていく理由か。それは、お主ら3人が"魂力"を扱える事が分かったからのう。まあ、投資っちゅうやつじゃ。あそこで落ち込んでる奴に聞いても同じことを答えると思うぞ。それに、ネックレスはまだ大丈夫じゃ。」
「ねぇ、さっきも言ってたけど"魂力"って何?あと、投s・・・」
続け様に質問しようとするアルバを老人が遮る。
「まてまて、次はワシの番じゃ。せっかちな奴は嫌われるぞ・・。そうだのう、、なぜお主は魂力...使うと身体能力とか五感が向上する力を操れる?」
「...親父に教えて貰った。でも、親父はヴィクトルって奴に殺されたからもういない。」
老人の顔に変化はなかったが、今彼らがいる場所が戦闘跡地である事とアルバの話や雰囲気でここで何が起きたかを察した。
「それは、、不躾なことを聞いて申し訳ない。お詫びと言ってはなんだが、いくつか続けて訊いて良いぞ。」
「分かった。じゃあ、"魂力"って何?」
老人は少し間をおいて答える。
「...魂力っていうのはのう、生物が持つ心や感情の強さ....つまるところ精神のエネルギーを指す。何を想い、何を感じ、何がしたいか、その自らを突き動かす"源動力"こそが魂力となり、自身に力を与える。」
「そうなんだ!ありがとう!うーん。でもよく分かんないや。」
「使うと疲れるけど、自分を強くする力のことじゃな。ま、魂力については、後ほどお主達に詳しく教えるから(ワシじゃない奴が教えるけど)、後で聞けい。」
アルバは、頭に疑問符が若干浮かんでいるようだが、上手く自分を納得させたようだ。
「まだ聞いていいんだよね。なら、あんたの腰についてる剣みたいなものって何?そこから、普通の道具では見たことのない不気味なものを感じるんだけど。」
老人は腰に差している刀に触れながら答える。
「ヒョッヒョッヒョッ。そうか、これが分かるか。これはな"法具"と言って、魂力使いが長年、特別な想いで持ち続けたことによって宿った特別な力を持つ道具のことじゃな。お主がこの刀に感じたものはおそらく、この刀に宿った魂力じゃろうな。」
「なんで、持ち続けただけで、道具に力が宿るの?」
「さあな。その理屈なんぞ誰も分からん。じゃが、人の想いといふものは、時として、人智を超えた事を起こすと言う事じゃろう。」
そう言い終えると、老人はアルバの後方に視線を向ける。
「ほう。覚悟を決めたようじゃの。結構、結構。して、どうする?」
アルバがその言葉を聞き、後ろを向くとトーマとエルレが立っていた。
トーマの目には未だ涙が浮かんでいるが、決意を持った目をしている。
エルレはいつものように気怠そうな表情だったが、アルバには強がっているように見えた。
「僕は、トーマに着いて行くよ。ここにいると悲しいことばかり起きるし。」
「あたしも2人が行くから、着いてくよ〜。もう1人は嫌だしね」
彼らの二言目は、小声で聞こえなかったが、どうやら2人も一緒に来てくれることが分かり、アルバは嬉しかった。
「ごめんね。2人ともこんな急に決めてもらちゃって。」
「アルバの暴走は今に始まったことじゃないしね。」
「もう慣れちゃったよねー」
3人の会話を聞いた老人が、印がついた簡易地図を取り出して渡してきた。
「これからワシらもやる事があるでの。先に戻る。明日の陽がてっぺんに登る前にこの印がついてる場所に来い。この地図は読めるかのう?」
「あたし読めるよ〜」
アルバは、連れて行くならこのまま一緒に行けば良いのに、と疑問に思い、老人に聞こうとすると老人は察したのか先んじて話す。
「お主達は、まだここに留まる理由があると思ったんじゃ。多分じゃが、そこの土の下を掘れば何かあるぞい」
そう言って老人が指を差したのは、今は荒れ果てているが、今朝までアルバ達の家があった一部分であった。
「何かって何?ていうか、なんで俺たちの家の場所知ってるの?」
「何があるかもそこがお主達の家であったことも知らん。ただの勘じゃしな。」
アルバ達が困惑したような表情を浮かべる。
「勘って、、、、」
老人は、困惑するアルバ達を見て少し考え込む。
「ふむ。そうじゃな。この戦闘跡地において、そこの一部分だけ異様に綺麗なままだ。それにお主達は、思考・会話中に時折り、その場所を見つめておった。思い入れがある場所なのだろうな。後は、、小僧との会話でここで戦った者とお主達の関係も推察できる。この勘に理由をつけるとしたら、こんなもんでいいかの?」
確かにアルバ達の家の跡地を見ると、周りに燃え滓や建物の残骸、戦っていたであろう土の跡が残っているのに一部分だけ異常なほど何もなく、綺麗なままだった。
「ま、そこを掘って何もなかったら、そのままワシの後を追ってくるが良い。では、またな。」
そう言い残して老人は、気を取られてるアルバからネックレスをひったくり、うずくまってる男の気を取り直して来た道を帰って行った。
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アルバ達は老人が指を差した場所を3人で少しの間掘っていると、そこから汚い木の箱が出てきた。
アルバがその箱を手に取り開けてみると紙が出てきた。
「これは、、?」
「これは手紙っていうやつじゃないかな?」
「でも、紙もボロボロだし文字も滲んでて、読めないよー」
エルレの言う通り、手紙というには粗末な物だった。『この滲んだ文字を解読するのか...?』など、彼らが様々な思惑を巡らせていたら、何を思ったか、アルバが魂力を使い、紙に触れる。
すると紙から音がした。
「あー、あー、これ出来てるのか?...まぁいいか。」
それはとても聞き馴染みがあるが、もう聞くことのできない声...グレイの声だった。
「な、、んで?」
・・・あの時、グレイは死んだはずだ。この目で見た。それとも全部嘘で、グレイは死んでいなかったのか?....そうだ、きっとそうに違いない。すべて悪い夢だったんだ。
「おっと、驚いたか?これはな"法具"と言う物の一種で、この手紙は音を記録するんだ。すごいだろ?アルバの誕生日の贈り物を探してたら、本当にたまたま手に入ってな。今こうして、記録してるって訳だ。」
アルバの目に一瞬灯った光が消えた。全ては夢ではく、現実として起こった事なのだ。なのに、有る訳ない希望に縋ってしまった。
アルバの思いなぞつゆ知らず、声は続いていく。
「これをお前達に見せて、何か有るってわけではない。ただ、こんな物もあると世界の広さを知って貰いたかった。おっと、こんなことを話してたら、アルバが使う分の余白がなくなりそうだ。他にも色々言いたかった事はあるが、まぁいい。誕生日の時に話すとしよう。」
グレイの声を聞き、アルバの感覚が現実へと追いついてゆく。
今朝まで確かにいた愛する者が、突然消えた。
そして、その事とその後に知る数多の情報によって、彼はグレイが死んだという事実は頭で理解していても、実感がなかったのだ。
だから、先ほどのような立ち回りができたとも言える。
「・・っと。そうだ。最後にこれだけ言わせてくれ。たまにはこんな形でもいいだろう。...アルバ、11歳の誕生日おめでとう」
心の何処かでは、グレイはまだ死んでおらず、またあの声で、至らない自分を怒ってくれるのだと、そう思っていた。
だが、そんな事はもう起きない。
起きるはずがないのだと心が理解してしまった。
自然とアルバの目から留めていたものが流れ落ちる。
「...そうか、、グレイはもう、、いねーのか・・・・」
アルバの目から流れる涙は止まる事はなく、むしろその勢いを増していった。
横を見ると、トーマとエルレも同じようになっている。
しばらくして、泣き疲れたのか、彼らはその場で泥のように眠る。
もうすでに陽は落ちていた。
2話どうだったでしょうか?面白いと思って頂けたなら嬉しいです。面白いと思っていただけたなら、是非とも、次も見に来て欲しいです。




