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その旅の果てに 〜世界を巡る彩色録〜  作者: 浦島 晴次郎
1章 同泥の国編

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13/14

13.俺にとってはサプライズ

13話です。

楽しんで頂けたら幸いです。


 「え、、ルスラグって、、」


 トーマの驚いている顔を慣れた目つきで見ながら、上裸の男もといルテウスが答える。


 「ああ、そうだ。トーマと言ったか?お前の想像通り、俺の親はこの国の王で、俺はその一(・)人(・)息子だ。」

 

 口をパクパクと開けたまま何も言えなくなったトーマをよそに、アルバが聞きたかったことを聞く。


 「そ(・)ん(・)な(・)事(・)よ(・)り(・)、ルテウス?..さんは何をしようとしてたんだ?..です。」


 「アルバ!?そんな口の利き方をしちゃダメだよ!!」


 この回答は想像していなかったのだろう。トーマがアルバの口を必死に塞ぐ中、ルテウスは目を見開いてアルバを見つめ、笑った。


 「ハーハッハッ!そんな事か!チb、、いやアルバよ・・!確かにそんな事だな!ハッハッハッ!!」


 ルテウスが1人で勝手に満足して笑っていると、先程彼が見つめていた集団の先頭にいた顔の半分が削られている男が、そこに属する人に指示を出した後に、3人の方へと歩みを進めてきた。


 「全く・・・厄介事が片付いたと思ったら、また別の事象が発生するとは・・・・。で、この子達はあなたの仲間ですか?ルテウス君。」


 少しだけ掠れた声で、見た目からは想像がつかないほど丁寧な物腰でルテウスに話しかける。


 「ん?ああ、そうだ。それでこいつらをどうかするつもりか?トルキナのおっさん。」


 ルテウスの言葉を聞き、トルキナと呼ばれた男は、片側にしか無い目で、アルバ達を一瞥する


 「いや、君の仲間であるならば結構。それで、君に言っても詮無い事とは思いますが、この子達、そして君も、私たちの邪魔はしない様に注意をしてください。」


 「わーったよ。俺がこいつらに言っておく。それに、俺があんた達の邪魔をしたことはねえだろ?」


 トルキナは返答に少し間が空くも、静かに微笑む。


 「ええ、それもそうですね。」


 トルキナはそう言って後ろに振り向き、集団の中へと戻ろうとすると、何かを思い出したかのように、ルテウスに伝える。


 「ああ、それと、ルテウス君。こんな所に留まっていても大丈夫なのですか?クズが事件を起こしてから、幾分か時間が経っていますけど。」


 「時間・・・?..チッ・・・!爺が来る・・。おい!アルバ、トーマ!!俺に何か聞きたいことがあるんだよな?なら、もう一度俺に追いついたら、教えてやるよ!」


 トルキナの言葉を聞いて直ぐ、ルテウスは全速力でこの場からいなくなった。


 「トーマ、行くぞ!!」


 直ぐに、ルテウスの後を追いかけようとするアルバの服の裾をトーマが引っ張る。

 

 「ーーーッ!何だよトーマ!!」


 「後ろを見て」


 トーマの示した指の先では、何やら、トルキナが属していた集団と、鎧を身に纏い腰には銃剣を携えた集団が何かを言い争っていた。


 「何だあれ?」


 「分かんないけど、あれに目をつけられたら面倒臭そうだから、能力(スキル)は使わずに目立たず行こう。」

 

 彼らは鎧を身に纏う者達を過去に故郷で何度か見たことがある。

 それは、故郷の貧民街の飢えた住人が起こした暴動が鎮圧された時や同じく住人が略奪者達から助けを求めたが見捨てられた時、そして、故郷に火をつけられた時に。


 故に彼らが、鎧を身に纏った者達に良いイメージを持っていないのは当然である。


 だが、能力(スキル)を使用せずに、既にいなくなったルテウスに追いつくのは彼等にとって至難の業であった。

 彼らは午前6:00〜午後6:00にかけて、12回鳴り響く時鐘が既に11回鳴り終えた後で再び出会った。


__________________________



 アルバ達は裏通りの狭い運河に架かる小さな石造りのアーチ橋の上から、その狭い運河を覗き込んでいた。


 「ま、まさか、動き回ったり、屋根の上とかにいるんじゃなくてこんな所に居るとは思わなかったね...アルバ。」


 「そうだな。」


 その橋のちょうど真下にある小さな木舟から筋肉質な上裸の男が声を上げる。


 「よく俺を見つけられたな!!ほれ、ここに乗りな!約束通り、答えられる事は答えてやる。」


 ルテウスが木舟をアルバ達が飛び乗りやすい位置へと少しばかり漕ぐと、アルバが木舟に飛び乗り、ワンテンポ遅れてトーマも飛び乗る。


 「で、何を知りたいんだ?」


 「ルテウス..さんは急いで何をしようとしてたんだ?..です。」


 アルバは国の王子を前にしてもいつものペースを崩さない。


 「あ?そんな事が知りたいのか?いいだろう。答えてやる!だが、その前に..アルバだっけか?その気持ち悪い話し方をやめろ。」


 「いいの!?」


 「ああ。口の利き方なんてどうだっていい。話しやすいように話せ。」


 「分かった!!」


 彼等の会話の最中、横でトーマはアルバの態度に杞憂していたが、ルテウスという人物はトーマが漠然と持つ王族像からは、逸脱しているように見えた。


 「それで、俺が何をしてたかだっけか?うーん。未来について考えていたな。」


 ルテウスはバチんと親指を立てて見せると、唇の端を吊り上げて「どうだ」と言わんばかりのキメ顔を作った。


 「・・・・・・」

 「え?未来?」


 「ハッハッ!!冗談だよ!王族ジョークってやつ。あれ、面白くなかったか!ハッハッハッ!!本当はな"反乱軍狩り"をしてたんだ。まあ、狩りと言えるものではないがな!」


 「狩りって罠とかで動物を仕留めるやつ?ていうか、"はんらんぐん"って何??」


 アルバの言葉にルテウスは一瞬驚いた表情を見せたが、それも束の間、すぐに腑に落ちた様子で吐息を僅かに漏らした。


 「なるほどな。そうか、お前らこの都市、、いやこの国の人間ではないのだな。」


 「そうだけど、それがどうかした?」


 「お前らの様な魂力を使うガキに会った事がなくてな。納得したよ。で、反乱軍についてか。ふむ確かに、この国の人間でないなら知らないのも無理はないな!」


 ルテウスは木舟を漕ぎ出し始めた。彼の身体能力のおかげか、たった一漕ぎで木舟はグンと進む。

 

 「反乱軍とはこの国に革命を起こそうと集まった中でも過激な連中の事さ。その規模は掴めてねえが、幾ら奴らを捕まえても、その勢いが衰えねえぐらいには大きいな。」


 「革命・・・・・!」


 「王国側の人だからルテウス様は反乱軍狩り?を行っていたのですか?」


 それまで2人のやり取りを黙って聞いていたトーマが、疑問を投げかける。


 「..トーマでいいんだよな?お前は横のチビよりは知識を持っていそうだが、言葉遣いはまだまだだな!ハッハッハッ!!そして、お前の質問に答えるのなら答えは『関係ない』だ。」


 「チビ・・・・・?」


 「『関係ない』とはどういう事ですか?」


 何かを訝しむアルバを気にも留めずに、トーマが続く。


 「言葉通りの意味だな。立場なぞ関係ない。ただの趣(・)味(・)だ!俺は戦いが好きなんだ。街中で暴動を起こす反乱軍は殴ってもこっちが悪くならないから、都合がいいってわけだな!ハッハッハッ!!!」

 

 「趣味、ですか、、」


 「でもよ、お前魂力が使えるんだろ?それで、何も使えない奴殴っても楽しいのか?戦いにならないだろ。」


 「アルバ!流石に『お前』呼びは・・・。」


 アルバの言葉遣いに対して危機感を覚えたのか、トーマが小声で耳打ちをする。 


 「何度も言わすな。言葉遣いは気にしてない。」


 トーマの声が聞こえて新しい。ルテウスは静かだが鋭い視線をトーマに向かって飛ばす。

  

 「も、申し訳ございません。」


 「そんなに改まらなくて良い。俺も少し怖がらせてしまったか。ハッハッハッ!!」


 木舟は、ルテウスが一漕ぎするたびに進み、勢いを失って止まる。進んでは止まる、この静かな繰り返しを続けていた。


 「おい!俺の質問に答えてくれ!どうなんだ?」


 「ふむ、そうだな。アルバよ。反乱軍との戦いは複数人を相手取るとはいえ、味気ないものが多いな。だが、稀に当たりがいる。」


 「なんだ?当たりって。銃を持ってるやつでもいるのか?」


 「確かに、稀に銃を持っている奴もいるな!だが、そうじゃない。暴動を起こす連中の中に魂力使いがいる事がある。いつも逃げられてしまうが、こいつとの戦闘は楽しいな!ハッハッ!!」


 「そっか...ありがとう!」


 静かな裏路地に筋肉質な男の笑い声が流れる中、男の目の前にいる小さな黒髪の少年にとある疑問が浮かぶ。

 それは、茶髪の癖っ毛を揺らした少年が、喉まで出かかりながらも結局呑み込んだ問いだった。


 「確か、、"革命"ってのは仕組みを変える事なんだろ?で、"反乱軍"の奴らはこの国を革命しようとして集まってるんだろ?何でだ?」


 「アルバ、それは、、」


 トーマは恐る恐るルテウスの表情を伺う。しかし、トーマの考えとは裏腹に、ルテウスは拍子抜けするほど淡々とした様子で、取り留めもなく答える。


 「理由は色々とあるが、端的に言えば奴らがこの国の未来、ひいてはこの国の政治に対する不満が限界へと近づいているからだろうな。」


 「へーそうなんだ!うん?てことは、、グレ..親父が教えてくれたんだけど、俺がいた国だと、王が政治ってのをしてたって言ってて、この国もそうだとしたらさ、原因はルテウスの親父にあるって事?」


 木舟が推進力を失くし、水上でピタッと止まる。ルテウスは漕ぎだそうとはせず、顔からは微笑みすら消え失せる。


 「(え、、アルバ何言っちゃってんの??リーンさんに問題起こすなって言われたよね!?忘れちゃったの?このチビ!!チビ!チビ!チビ!チビ!)」


 トーマの顔から血の気が引いていく。木舟の上では、ルテウスより早く動く事はできず、ゲシュタルト崩壊しそうなほど心の中で怒号を撒き散らす。


 ルテウスは深く息を吐き、再び木舟を一漕ぎする。

 

 「ま、根本を言っちまえばそうだろうな。それに、親父の次はうつけ者と言われてる俺だ。不安が募るのも仕方ねえだろうな。だが、俺には過(・)ぎ(・)た(・)事(・)だ。」


 そう語るルテウスの表情からある種の諦念めいたものをアルバは感じた。


 「にしてもよ、アルバ!お前イカれてるな!俺にそんな事言ってくる奴はいなかったぞ!!ハッハッハッ!!!」


 「そうか?」


 「そうだとも!ハッハッハッ!!」


 「(これは許されてるの?それとも許されてない?どっち?どうしよう、笑いながら思い切り殴ってきたら。)」


 すると、ルテウスは腰回りにジャラジャラとつけている小物の1つである小さな袋から懐中時計を取り出し、針を見つめる。


 「そういえば、お前らこんなとこで話しているが、まだガキだろ。時間は大丈夫なのか?」

 

 ルテウスの言葉を聞き、アルバはリーンとの約束である『12回目の時鐘が鳴る前に帰宅する』事を思い返し慌てた。


 「うわやべえ!トーマ、時間分かるか?そう言えば俺たち12回目の鐘が鳴る前に帰らなきゃ!」


 「え?う、うん。確かにもう帰らないとね、、そうだ!うん!帰る時間だもう!!」


 アルバはトーマの表情から早くこの場所から立ち去りたいという強い思いを読み取ったが、その理由の見当はつかなかった。


 「?まいっか。つーかここどこだ?」


 「確かに、、ここどこだろう・・・?」


 アルバ達は、初めての場所で時間をかけ、彼方此方へと走り回った後に、ルテウスを見つけたため、自分らの居場所が分からなくなっていた。


 「なら、お前たちが泊まっている宿を言え。ここの都市の地理なら大体頭に入っている。」


 ほぼ毎日王宮を抜け出し、遊びと戦いに明け暮れているルテウスは、彼らの帰る場所くらい、見当はついていた。

 それに、目の前の少年たちが見に纏う服地は上質である。となれば、向かう場所は自ずと絞られてくる。


 「えっと、確かあれ?トーマ、何家だっけ?」


 「ツガーフ家だよ!!ツガーフ家の館に僕たちは帰るんだろ?」


 「お前らツガーフ家の者か!ハッハッ!ならば、この方角をまっすぐに進め!そしたら望みの場所が出てくるだろう!」


 気づくと、木舟は苔のむした石階段が隣接する場所へと止まっていた。


 「ありがとう!ルテウス!じゃーなー!」


 「感謝致します。ルテウス様。」


 「ハッハッハッ!俺も感謝しよう!退屈な時を楽しむ事ができたからな!!」


 ルテウスの言葉を聞き、手を振り、去ろうとするアルバの頭を掴み、トーマが共にお辞儀をさせると、少年達はさらに人気のない場所まで消えていった。


 「さ、俺はどこへ行こうか。」


 瞬間、ルテウスは少年たちの消えた方角から威圧感を感じる。

 

 「!?」


 驚きつつ振り返ると、少年達が手の様なものに乗り、人目がつかないほど高く上がっていく姿が見えた。


 「それは、、今日1のサプライズだな、、」

 

13話どうだったでしょうか?面白いと思っていただけると幸いです。面白いと思っていただけたなら、是非とも次も見に来て欲しいです。

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