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搾取令嬢は二度と騙されない ~嘘を見抜く左目で、すべてを取り戻します~  作者: 第三ひよこ丸


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第042話 汚れし金貨の洗濯場に、わたくしが終焉の鉄槌を振り下ろしますわ

 学園から王宮、そして再び学園へ。夜道を狂ったように走る馬車の中で、私は一度も瞳を閉じなかった。

 膝の上で拳を握りしめれば、高い衣の布地が、まるで私の腹立ちを代わりに叫ぶかのように鋭く鳴る。悪い役人のオルロックから聞き出したバルテザール侯爵の悪事、そのすべてが私の頭の中で冷たい計算式へと変わり、逃げ場のない鉄の檻を作り上げていく。

 学園の大きな門をくぐれば、そこにはまだ、私が数時間前までいた嘘の平和が、色鮮やかな明かりの下で甘く息づいていた。その景色が、今はただ、薄汚れた嘘の皮に見えてならない。


 馬車を降り、会場の真ん中へと歩を進める。

 人混みをかき分けた先、偉い人たちが座る席の明るい光の下に、見慣れた、そして今は何よりも眩しく感じる顔を見つけた。


 「セレスティーナ! 戻ってこられたのですわね!」


 誰よりも早く私に気づき、弾けるような笑顔で駆け寄ってきたのは、エルメリンダだった。

 彼女は私の手を取り、その温かな体温を分けてくれるようにぶんぶんと振る。


 「急にいなくなってしまうから心配しましたわ! さあ、こちらへ。貴女のために、取っておきの特別なお菓子を用意してありますのよ!」


 彼女の飾らない笑顔は、夜の闇さえも追い払うほどに眩しい。その隣では、レナート殿下もまた、安心したような穏やかな眼差しで私を迎え入れていた。


 「セレスティーナ、戻ったか。急な用事と聞いたが、無事に済んだようで何よりだ。君がいないお祭りは、どこか落ち着かなくてね。さあ、座ってくれ。この祭りの一番の見所は、これからだ」


 殿下の声は、どこまでも優しく響く。

 けれど、そのすぐ側に、この国の若者が集まる大事な場所を汚れた金の洗濯場に選んだ男、バルテザール侯爵が、いかにも忠実な家来のような顔でふんぞり返っている。

 彼は、私が戻ったことに一瞬だけ嫌そうに眉を寄せたが、すぐに取り繕ったような、脂ぎった笑みを向けた。


 「ほう、アデレイド次席。王宮での居残り仕事は終わったかな? これほど美しい夜だ、あまり数字のことばかり考えていては、せっかくの美しさが台無しになりますぞ」


 侯爵は、手にした杯を私に向けて掲げる。

 その瞳の奥には、すべてを思い通りにしたという思い上がりと、私を帳簿の虫と馬鹿にする気持ちが渦巻いている。

 私の左目の視界に、彼の頭から溢れ出す、どぶ川のような【本音】が映し出された。


 【ふん、小娘が。オルロックの口さえ封じておけば、あの遠い土地の金の流れなど、貴様のような子供に追えるはずがない。今夜、このお祭りが終わる頃には、殿下を引きずり下ろすための裏金はすべて私の手元に揃う。この女もろとも、明日には道端に放り出してやるわ】


 その声を、腐った考えを、私は一滴も漏らさず左目で受け止めた。

 怒りはもはや、赤く燃える炎を通り越して、すべてを凍らせるほど冷たい氷へと変わっていた。

 私のために席を空けようとするエルメリンダの優しさと、何も知らずに隣で笑いかけてくれる殿下の信じる気持ち。それを裏で笑いながら踏みにじるこの男に、私は今、最もふさわしい()()()を届ける。


 

 私は、エルメリンダの手を優しく離した。

 そして、レナート殿下の前で静かにお辞儀をすると、席のテーブルの前に歩み寄る。

 楽しげな音楽を奏でていた者たちの音が、私の纏うただならぬ冷たさを感じ取ったかのように、一つ、また一つと止まっていく。

 

 「エルメリンダ、殿下。……私が戻りましたのは、お祭りを楽しむためではございません」


 私の声は、夜の静けさを切り裂く刃のように、会場の隅々まで響き渡った。

 人々が息を呑み、不自然な静まりかえりが波のように広がっていく。

 私は、胸元から一通の、白くて飾り気のない封筒を取り出した。

 それは、お祭りの明かりの下ではあまりに似合わない、死神の鎌よりも鋭い断罪の手紙であった。


 「バルテザール侯爵。貴方の人生という名の帳簿を、今この瞬間に閉じるために戻りましたわ」


 「……何だと? 何を縁起でもないことを言う。ここはお祭りの場だぞ。冗談が過ぎるのではないか。小娘の分際で、この私を脅そうというのか。自分の立場を考えよ」


 侯爵の頬が、僅かに引きつる。

 私は、彼の目の前のテーブル、彼が口にしようとしていた一番高い葡萄酒の杯のすぐ隣に、その封筒を叩きつけるように置いた。


 「冗談? いいえ、これは清算ですわ。地方開発局の長、オルロック。彼はすでに、王宮の地下で、自分の罪をすべて吐き出しました。貴方が、学園を動かす金や建物を建てるための予算をどのように盗み、このお祭りを隠れ蓑にして、どの口座へ汚れた金を通したのか……。銅貨一枚の違いもなく、私の算盤が答えを出しましたわ」


 「嘘を言うな! オルロックが何を言おうと、証拠などあるはずがない。遠い土地の材料運びには手間がかかるものだ。その余った金を拾い集めて私に罪を着せようなど、笑わせるわ! この私が、そんなけちな真似をすると思うか!」


 バルテザール侯爵は、椅子から勢いよく立ち上がり、私を見下ろそうと声を荒らげた。

 だが、私は眉一つ動かさない。むしろ、その醜い焦りをさらに煽るように、一歩、彼との距離を詰めた。


 「証拠とおっしゃいましたわね? では伺いますわ。貴方の裏の帳簿を管理している、あの『名前だけのお店』の主、貴方の隠し子の名で登録された名前については、どのようにお答えになりますの? その隠した口座から、先月だけで金貨三千枚が動いておりますわね。送り先は、殿下を嫌う者たちに武器を売る商人……。これでも、知らないと言い張るのかしら?」


 「なっ……な、なぜそれを……!?」


 「さらに言えば、侯爵様。貴方が今夜、殿下の隣でさも美味しそうに飲まれているそのお酒の代金……そこへ流れた金もまた、学園の新しい校舎の壁に使われるはずだった石の代金ですわ。貴方は今、この国の若者の未来を、その汚れた喉越しと一緒に飲み干しているのです。その味は、さぞかし苦いことでしょう?」


 「貴様……! 黙れ、黙れ! たかが財務局の端っこの小娘が、名門の我が家に泥を塗るなど、許されることではないぞ! その失礼な口、今すぐ引き裂いてやる!」


 侯爵の顔は、怒りと恐ろしさで黒っぽく変わり、その顔つきはもはや人のものではなかった。

 彼は隣に座るレナート殿下に、必死の顔で縋り付くように叫んだ。


 「殿下! お聞きください、この女はおかしくなっております! 私を悪く言うことは、王家を悪く言うことと同じですぞ! 今すぐ捕まえさせ、その口を閉じさせるべきだ! このような失礼を許しては、王家の名前に傷がつきます!」


 しかし、レナート殿下は、彼が触れた袖を汚い泥でも見るかのように厳しく払い除け、静かに立ち上がった。その瞳には、かつて見たこともないほど厳しく、鋭い光が宿っている。


 「バルテザール。私はセレスティーナに、すべての帳簿を任せている。彼女が『間違いだ』と言った時、この国でそれに文句を言える者は、父上以外にはいない。……ましてや、彼女の算盤は、貴様の浅い考えなど簡単に踏み潰すほどに鋭い。貴様の言葉より、彼女が出した数字の方が、遥かに信じるに値するのだ」


 「な、殿下……そんな……!?」


 「セレスティーナ、続けよ。私は、君が出した数字を、王家の名前において全面的に認める。この場にいる者すべてに、本当のことを話すがいい」


 殿下の力強い言葉は、侯爵にとって最後にとどめを刺す宣告と同じだった。

 私は冷たい笑みを浮かべ、腰を抜かしかけた侯爵の耳元で、終わりの言葉を囁く。


 「バルテザール侯爵。貴方のすべての持ち物、隠した口座、そして町にあるすべての屋敷。それらはすべて、数刻前に私の部下たちが、王様の命令によって差し押さえを終わらせました。貴方が明日、目を覚ました時に残っているのは、貴方が民から奪った罪の重さと同じだけの、冷たい鉄格子の重みだけですわ。……フフッ、貴方が威張っていた名誉も、今やゴミ以下の価値しかありませんわね」


 「う、うあぁぁ……! 私の……私の積み上げたものが……すべて消えるというのか……!」


 「銅貨一枚の狂いも、ほんの少しの情けもございません。貴方の人生、これでおしまいですわ。汚れた金で買った夢の代償、その身をもって、一生かけて払いなさいな」


 お祭りの火花が夜空に大きく弾け、会場を真っ白に照らした。

 だが、その輝きは、崩れ落ちる侯爵の絶望の悲鳴と一緒に、真っ黒な地獄の闇へと塗り潰されていった。

 私の足元に広がる影は、悪い者を取り込み、お祭りの場所を再び清らかにするために、深く、どこまでも深く広がっていくのだった。

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