「アグリの民」ギルドへの改名 << アクバル >>
ミナークはゲームを辞めたようだ。
あれから2日。
王立騎士団は、小都市アグリもギルド拠点へも、攻撃は仕掛けてはこなかった。
セルバートは、王国政権というギルド名を変更してくれと、私たちに言ってきた。
ミナークは返答をしなかったが、私はギルドチャットにこの要求を伝えた。
私はギルド名の変更は問題ないと書き込み、逆にギルドメンバーにどんな名前が良いか意見を求めた。
フーシエが、私たちの拠点である小都市アグリの名を取り、アグリの民というのはどうだろうと意見を書き込んだ。
1日意見を待った。
ふと見ると、ギルドのメンバーページには、ミナークの接続が3日ないことが表記されていた。
私はすぐさま、ミナークを弾劾して、リーダー職を引き継いだ。
私はギルドチャットに書き込んだ。
「私がギルドを引き継ぐ。ギルド名はアグリの民にする。異議のある人はいるか?」
数時間後、フーシエがギルドを退会した。
彼は村も捨てた。
彼の意見を採用してギルド名をアグリの民にしたが、彼はリーダーになりたかったのだと思った。
仕方ない。
大きな敗戦だった。
小さなつまずきでも、こういう時は何もかもが嫌になる。
誰だってそういう経験はある。
数時間後、ローバーがサブリーダーを引き受けたいと言ってくれた。
サルマンもライクも、他数名の人が、ギルドの役員を引き受けてくれると言ってくれた。
私は王国チャットに書き込んだ。
「ギルド名はアグリの民に変更した。私がリーダーを引き継ぐ。先の戦いでは降伏したが、小都市アグリの支配権は渡すつもりはない。認めてもらえないなら、戦うことになる」
私の書き込みは、タイミングが良かった。
丁度、王立騎士団がロマール城の再攻略を挑む直前だった。
セルバートが返信した。
「まもなく新しい王国が建国される。王立騎士団に降伏し、都市を預かるギルドを攻撃することはしない。安心して欲しい」
これを見て、ギルドチャットには安堵感が流れた。
私たちは元王国政権のメンバーとして、強い緊張感の中で遊んできた。
メンバーの質は高い。
小都市さえ維持していれば、また盛り返すチャンスはあるだろう。
私はギルド公告に再起を目指す意思を書き込んだ。
「村の育成もイベント参加も、政権維持のために遅れを取った部分がある。これからはゲームを楽しもう」
いいねがいくつも付き、私もようやくゲームの楽しさを感じた。
私はゲームを閉じ、帰宅する新築した自宅が見えてきたので、ほっとして家路を急いだ。
公務員になって10年。
私は一国一城の主になった。
妻と子供が待っている。
たまに、これは夢なんじゃないかと思うことがある。
私の家庭は貧しかった。
父親がいなくなり、母子家庭で育った。
大学は奨学生として入り、奨学金の返済は続いているが、双方の親からの支援もあり、家計はうまくやりくりして出来ている。
私は目をぎゅっとつぶり、もう一度開く。
夢じゃない。
私には幸せが待っている。
視線の外れに、枯れた花が少し見えた。
なぜ気づいたのかもわからなかったが、枯れた花があった。
私は帰宅の歩を早め、妻と子のことを思った。




