俺が王となった日 << ミナーク >>
人生の中では、意図せずに幸運が舞い込むことがある。
宝くじに当たる?
美男美女に誘われる?
超能力を得る?
どれも素敵ではあるけれども、俺の話は少し違う。
王になったのだ。
ゲームの中だけど、俺は王になっていた。
おめでとうございます。
あなたは、このロマール地方に最初に入植したプレイヤーです。
あなたは王になりますか?
俺がリトライで剣と魔法の王国戦争を始めて、最初に出てきたメッセージがこれだ。
俺は「はい」と答えて、ゲームを進めた。
それから一週間ほどで、王という、そのシステムを理解した。
俺はこの地方の王になっていた。
しかし、その力は弱かった。
政権を組んでからしばらくして、セルバートという男が、俺にギルドへの多大な寄付を求めてきた。
俺は確かにセルバートという男にギルドを作らせたが、メンバーが上限に達した後に、トルエンという外務大臣から、ギルドは王自らが保有すべきだと言われた。
確かにその通りだと思い、ギルドの譲渡を要求したが、断ってきて、さらに王国資金を使った寄付まで求めてきたので、俺は奴を政権から追放し、軍事大臣のローバーとアクバルに、セルバートの村を襲撃させた。
そして新たにギルドを作ったが、メンバーは政権メンバーを除くと、セルバートのギルドより見劣りした。
奴らとは何度か抗争があったが、攻め滅ぼすことが出来ず、時折反撃を受けたので、和平を結んだ。
俺は現実世界では、人材派遣会社の営業をしていた。
転職して間もない。
それなりに大きな会社で、小さい企業は相手にしない、上場企業か売上高100億円以上の企業グループしか取引しない企業だった。
採用は実はすんなり決まった。
この企業が人を急募していたからだろう。
時期も良かったのかも知れない。
新卒が入ってくる時期に、私も中途入社した。
幸運だったと思う。
その幸運が、たまたま広告をクリックして始めたゲームでも、俺を王にしてくれたのだ。
でも、現実世界の幸運を、自分の中で定着させることは大変だった。
俺は営業は苦手ではない。
ただ、まず通勤がきつかった。
片道2時間かかった。
しかも業務時間が長く、毎日14時間勤務だった。
睡眠時間は5時間あるかないかだ。
土日祝日は休みだが、職場の引っ越しなどに駆り出されることもあり、常に休めたわけでもなかった。
俺は勤務を始めてすぐに、これは継続が難しいと気付いた。
俺は外回りの営業に出るとすぐに、会社の人が来ない小さな公園に向かった。




