山賊ギルド討伐戦 << フェアリー 美和 7 >>
この話は、時系列としては、王立騎士団のヨーネスが島ギルドを攻撃する前の話になります。
王立騎士団のミーティングで、セルバートからヨーネスに島ギルドを潰すように指示が出てから、現実時間で1ヶ月半の時間が流れた(ゲーム内時間で、約1年間)時の出来事です。
このゲームでは、城塞が作られるようになってからは、対人攻撃はそれほどはありませんが、ギルド間の戦争は度々あります。
ギルド拠点を攻略すると、そこに蓄えられた物資を略奪できるからです。
またギルド拠点は、そこに兵士を常駐することで、ギルド拠点の勢力範囲内にいる村への攻撃を防衛します。
ギルド拠点の範囲内にいる村を攻撃しようとすると、ギルド拠点に常駐している部隊が、自動で迎撃に行くのです。
そして野戦になるわけですが、そこで自動操縦がされる場合は、本陣がギルド拠点になり籠城戦略が取られます。
つまり、これを破壊しないと、その拠点の範囲内にいる村は攻撃できず、拠点・村・自宅と三段の籠城戦略になっています。
ただギルド拠点を破壊した時点で、ギルドの貯蓄は奪えるので、ギルド拠点への攻撃は頻繁にありました。
ギルド間の抗争が最も激しかった地域は、それは北西部でしょう。
村の配置は中央のロマール城を起点にして、北から始まり、東、南、西と移っていくので、北西部は、最も強い者と最も弱い者が接する場になるからです。
このロマール地方において、最も強い者の一つが、王国政権です。
今では、王都の魔物の増加から王都を捨てて、暫定政権と揶揄されていますが、その力は依然として強く、王国第七位に位置していました。
そしてこれに対抗したのが、最も弱い者の代表・山賊ギルドです。
山賊ギルドに参加する村々は、ロマール城の北西部にある農業都市グレイスの西南部に配置された村々で、この辺りにはエルス山脈という山脈が北西から南東に伸びて存在していました。
この山脈の北側は農業に適した雨量があるのに対し、南側には砂漠が広がっていました。
そしてこの山脈の中に村が初期配置されてしまった人たちが、山脈ギルドを組んだのでした。
彼らは山岳戦に特化したギルドスキルを上げることで、最後発の不利を補いました。
具体的には地形効果の丘陵(走行不可の山岳の横に配置される)と森林を強化し、罠(落石・遭難・橋の破壊)を強化しました。
そして彼らは、北の小都市アグリと、南のオアシス小都市フェノールを繋ぐ交易路の襲撃を生業としていました。
この交易路は、エルス山脈の細道を縦断するのが、最も近道だったからです。
この山賊行為は、王国西部にある村々を困らせました。
王国西部には魔法都市ライツと黄金都市ミダースという2つの大都市があるのですが、このどちらも都市の周りが環境が厳しく、魔法都市ライツの周りは防衛魔法が展開されていて、簡単には近づけないようになっていたり、黄金都市ミダースの周囲は侵入出来ない山岳地帯が多くあり、未だに都市へ到達する道が見つけられない状態でした。
そのような状態なので、王国西部は交易できる都市は限られていたのです。
その数少ない交易路の一つを、山賊ギルドは独占していたのです。
その山賊ギルドに最初に戦いを挑んだのが好戦ギルドでした。
カルザス、ヘリオスの両リーダーに率いられたこのギルドは、その名の通り、とても好戦的でした。
そして交易路を妨害する山賊ギルドに戦いを挑まないわけがなかったのです。
結果は山賊ギルドの圧勝でした。
好戦ギルドは大敗したことで、即座に関所のあるルートを交易路とすることに同意し、通行料を払って小都市アグリへの行路を確保したようです。
この大敗を見た、ロマール地方西部で最大のギルドである新世界ギルドも、山賊ギルドと共存する道を選びました。
しかし、暫定政権に取っては、これは受け入れられる選択ではありませんでした。
なぜ山賊風情に通行料を払わなければならないのかと、王立騎士団と和平した後に、共同でこの山賊ギルドの討伐を提案したのです。
王立騎士団からしても、西部地域に行く方法は、エリス山脈の縦断しかありませんでした。
南方の王都近辺は魔物が多く、交易路には不向きで、仮にそこを超えても、魔法都市ライツの防御魔法地帯の通過は、費用対効果が低かったのです。
ですので、暫定政権の提案に同意して連合軍を組み、山賊ギルド討伐戦が開始されたのです。
先だって錫鉱山を奪われた仕返しにもなりましたしね。
王立騎士団からは、セルバートの村の所属でヨーネスと私が一部隊に組まれ、軍事担当役員のクルーべと数名のギルドメンバーが出征しました。
暫定政権側からは、リーダーのミナークに加え、軍事担当役員のアクバルとローバーが参加しました。
兵力差は5倍に達していたと思います。
また、西方の新世界ギルドが山賊ギルドに協力しないように、外交調整も行った上での侵攻でした。
結果は、これも山賊ギルドの圧勝でした。
ゲームの地図上で、1マス進むたびに罠にかかり、兵士の1/5が消耗していくので、進軍は無理でした。
代わりに、関所を押さえようと方針転換しましたが、道が細いために大軍が展開できず、粘られて私たちの兵糧切れになりました。
私たちは、山道における罠の設置は、平野部における罠の効果とは雲泥の差があることを理解しました。
工兵隊を用意しないと、勝ち目はないとわかりましたが、そのためだけに工兵隊を強化するのは、無駄のように思えました。
兵糧攻めを仕掛けるにしても、山脈の反対側は、王国第二位の新世界ギルドの領域です。
戦争協力はしないという約束はもらえても、交易を停止させることは不可能と思われました。
暫定政権は、山賊ギルドに対してなおも敵対関係を保持しましたが、王立騎士団はこの敗戦後、即座に和平を結びました。
通行料を他のギルドより安くするという交渉が成立したからです。
今回、ヨーネスはファイアードラゴンを召喚しませんでした。
もし召喚して、周囲の森を燃やしたら、私たちも火に巻かれる危険があったからです。
その代わり、そういう選択肢もあって、今後の戦闘で対策を立てて行うことも出来ると伝えたところ、山賊ギルドのリーダーのヴァイスは思案する素振りを見せた後に、無理に争うこともあるまいと、取引を成立させました。
この戦いのあと、山賊ギルドは急激に強さを増して、王国のギルド勢力ランキングでトップテン入りを果たしました。
通行料が増大したことで、それに気づいたプレイヤーからの、メンバー加入が増えたからです。
今回の戦いは、王国初の連合軍によるギルド戦争だったと思います。
連合軍を撃退した山賊ギルドの戦いと、その後の外向的な立ち回りは見事だったと思います。
そしてこの後、王立騎士団は結成以来、最大の危機が訪れるのです。




