友との別れ << マイネ >>
「あれだ!」
ヨーネスが天井を指し示したので見てみると、全長5mにも及ぶ巨大蜘蛛が、フェアリーを糸で絡め取って、スルスルと引き上げていた。
「やばいよ。食われちゃう!」
僕はジャンプして、剣で糸を断ち切ろうとしたけど届かず、ヨーネスが鋼の強化魔法をフェアリーにかけて、3軍の弓隊にジャイアントスパイダー(ランクDorC)を射るように指示した。
矢やフェアリーに当たっても死なないように強化魔法をかけたわけだ。
ジャイアントスパイダーは、餌となるフェアリーに気を取られていて、弓矢の攻撃には無防備になっていたこともあり、矢が何本も直撃して、遂に落下した。
助けられたフェアリーは、「怖かったよーーー」と泣きだして、ヨーネスに抱きついたのをみて、僕は少し複雑な気持ちになった。
「どうするよ。この死骸」
ヨーネスはフェアリーを肩に乗せて、ジャイアントスパイダーを指した。
5mもの蜘蛛がひくひくしながら、王の間にどーんとあるのを見て、僕はまだ蜘蛛はまだ完全に死んでいないと、何かわからぬ憤りをぶつけるように剣で切り刻んだら、蜘蛛の死骸は魔法の粉に変化して消えた。
フェアリーが急いでその粉を掻き集め始めた時、ヨーネスが真面目な顔をして、僕とフェアリーに言った。
「あのさ、大事な話があるんだけど」
ヨーネスが言うので、僕とフェアリーは彼を見た。
城の内外で聞こえる戦いの声が、ふと何も聞こえなくなった。
「このアカウントを買いたいっていう人がいるんだ。結構良い金額で。売ろうと思ってる」
僕は彼が何を言おうとしているのか、おぼろげながらわかった。
これはお別れの話なんだ。
彼は課金者だ。
それも王国最強のプレイヤーだ。
無理しちゃったのかな。
それとも親のクレジットカードを使い込んじゃったとか?
「そういうこと?」と僕は聞いた。
「違う。そういうことじゃないんだ」ヨーネスは笑って、僕に言った。
「フェアリーも課金しているからわかると思うけど、俺らはプレイヤー将校だけ育てているから、見かけ上は強く見えるんだ。村の育成を一切やらないで、すべてのリソースを自分の成長に使えるからね。そして、僕らの使用する部隊は、セルバートが育成した村の部隊をタダで使えるんだから、強く見える。この強く見える状態で買い値を言ってくれている人がいるんだ。俺の課金総額よりずっと高額なんだ」ヨーネスはそう言って、話を続けた。
「なぁ。俺らさ、ゲーム内ではよく話すけれど、現実世界の話はほとんどしないよな。現実世界の話をするのが嫌だったら別にいいんだけど」
僕は正直、現実世界の自分のことはヨーネスに知られたくなかったけれども、「ヨーネスの話だったら、聞くよ」とは言った。
「友達だもん。聞くわよ」フェアリーが魔法の粉を詰めた袋をうんしょと背負って、ヨーネスの方を向いた。
「俺にとって、良いことなんだ。俺さ、サッカーやってるんだけど、1年前に大きな怪我をしちゃって、直すために運動を控えていたんだ。だからその代わりにかなりこのゲームに時間を割いて遊んできたんだけど、でも怪我はだいぶ良くなってきたんで、医者からまたサッカー再開していいって言われたんだ。これが俺」
ヨーネスは3人のグループチャットにウェブサイトのアドレスを転機した。
それを見ると、彼は18歳以下のモロッコ代表選手だった。
「えーーー。すごいじゃん。ヨーネス、プロになれるかもね」
フェアリーが言った通り、僕はびっくりしてヨーネスの顔を見た。
確かに、ゲームのプレイヤー将校のアバターと似てる。
「サッカーに戻ると、今までみたいにこのゲームにたくさんの時間を使えない。そして、自分が時間がなくて、みんなの期待に応えられないのは、俺は堪えられないんだ。サッカーに集中したいんだ。今すぐにという話ではないんだけど、そう遠くない時期に、このアカウントは売る予定。俺、自分のサッカー人生に責任を持たなきゃいけない時期にきてるんだ」
僕は何と言えば良いのかわからなかった。
ヨーネスは僕が今まで一番仲良くなった友達だった。
僕が言葉に詰まっていると、フェアリーが僕に言った。
「仲間だったら、拳をぶつけて送り出さなきゃね」
僕はそうだと思って、ヨーネスの出した拳に僕の拳をぶつけた。
僕はこれから仲間との別れを知るのだろう。
自分がいつまでも子どものままでいるとは思ってはいない。
少しずつ大人になっていくのだろう。
ヨーネスは僕より少し先を行く。




