死亡フラグ << マイネ >>
コボルド河の戦いのあと、王立騎士団は島ギルドと第一ギルドの戦いに少し関与したけれど、その主力メンバーは王都攻略に向けて準備していた。
島ギルドとの戦いで、軍事担当官のクルーべが戦死し、ザラ率いる王立騎士団軍が潰走したのは想定外だったみたいだけど、セルバートは着々と王都攻略に向けた準備を進めていた。
長らく敵対していた暫定政権が王都攻略の再号令をかけたこともあり、王立騎士団はこれに乗じて王都を奪うことを計画した。
ただこの時は、暫定政権側が王国第二位の勢力ギルドに急成長していた新世界ギルドにも呼びかけていたこともあり、僕たちにも競い合って勝てるのか、どういう展開になるのかが見えないところがあった。
ただこのときは王都の結界が破れず、参加ギルドは解散になった。
でも王立騎士団が撤収の荷造りをしているときに、暫定政権から元外務外務大臣のトルエンというプレイヤーが離反してきて、王都の結界は時期が来るか、魔法の粉を使用しなければ解くことが出来ないことを教授した。
そしてそれはミナーク元王が保有していて、それをトルエンは特殊スキルで盗んできたみたいなのだ。
暫定政権が魔法の粉で王都の結界を解くことが出来るのにも関わらず、いたずらに他の参加ギルドの兵力を消耗させる悪質な行為を行ったことから、この討伐を決意して、農業都市グレイスにも向けて出征した。
また同時に、商人ギルドと懲罰ギルドへ、王都再侵攻のための招集指示を出した。
新世界ギルドが農業都市グレイスを出立していて、これから行う戦争に加担する危険がないことを確認した上での出征だった。
王立騎士団と暫定政権の力の差は、かなり広がっていた。
暫定政権は山賊ギルドに交易を妨害されていたことで、ギルドとしての成長が止まっていた。
一方、王立騎士団の方は、コボルド側の戦いで勝利してからはメンバーが更に増え、暫定政権との勢力差は4倍以上に開いていた。
農業都市グレイスでの戦いは、呆気ないものだった。
ヨーネスの巨大なラッパ魔法による門破壊と、ザラとシャルルの空軍にかかったら、いかなる城壁も無力だと思うしかなかった。
僕はこの時はシャルルと一緒に攻撃参加をしたけど、彼はグリフォンを使いこなし、王立騎士団の筆頭軍事担当官の強さを存分に示した。
農業都市グレイス攻略の後は、暫定政権には、ギルド名の変更を強要した。
ミナーク元王は戦死し、他のメンバーは降伏していたので、こちらの要望をのむならば和平すると伝え、彼らはギルド名をアグリの民と改名した。
その名称は、小都市アグリを必ず死守する意思が感じられ、王立騎士団側も無理に破滅させる措置は取らなかった。
王都攻略が最優先課題だとセルバートは言って、王都へ向かい、到着してからは、西の強国ギルドが参陣するというので、その到着を待った。
「なぁ、マイネ、フェアリー。僕らが本格的に一緒に戦争参加するのは初めてじゃないか?コボルド河の戦いでは上流域と下流域で別チームだったし、錫鉱山の戦いでは一緒だったけど、あれは仲間内の諍いだったんで戦いとは言えなかったし」
ヨーネスは今日に限っては大魔道士のローブではなく、鋼の装備で身を固めていた。
僕はそれを「死亡フラグだよ」と教えてあげたら、「何だと。万が一に備えて準備したのに。龍王の鎧があるからって、お前気を抜きすぎだぞ」とヘッドロックしてきた。
フェアリーは戦いを煽るように、ファイト!のスタンプを送ってきたので、僕は「お顔が無防備よ」と一旦腰をかがめてジャンプし、ヨーネスの顎にヒットした。
僕は鉄兜を被っていたので、ヨーネス「てめっ!」といって、腕をぶるんぶるん回したところで、「いい準備運動になったか?」とセルバートが話しかけてきた。
「今回は、ヨーネスとフェアリーとマイネで先陣を切れ。ロマール城の王の間が集合場所だ。私はそこで王になる。そのための協力をしてくれ」と言った。
「そのためにこれまで戦ってきた。任せてよ」と僕が真っ先に言うと、ヨーネスが遅れをとったと気づいたのか、「セルバートを王にすることが俺の使命だ」と被せてきた。
フェアリーは「セルバートがこの王国の王に相応しいわ。応援する」と珍しく肯定した。
いつもなら、フェアリーならこういう時は何か引っかかるようなことを言うんだけどな。
調子が狂っちゃうなと思ったときに、肌にひんやりとした一抹の風が触れた。
西の強国ギルドが到着したようだと連絡があり、僕たちは将校が集まるキャンプに向かった。
僕とヨーネスとフェアリーは、セルバートの町の一部隊ずつ預かり、王都に突入した。
ザラが気を利かせてくれて、セルバートが王都の結界を解く間、周辺の都市に出ていた魔物の討伐依頼をまとめた書類をギルドリーダーに配った。
僕たちは真っ先に王都に侵入した。
僕は麒麟に乗って、フェアリーも飛空することが出来たけれども、単独行動ではないので、部隊の進行に合わせて上空を旋回しながら突き進んだ。
上空にも魔物はいて、ガーゴイル(ランクD)や三足鳥(ランクE)は、僕やフェアリーでも倒せたけど、コカトリス(ランクC)との遭遇には警戒した。
その視線を受けると石化してしまうと言われているからだ。
上空で麒麟がその視線を見たら墜落してしまうし、僕やフェアリーが見ても、落下して粉々になってしまう。
そしてコカトリスの討伐依頼も出ているので、遭遇する危険もあった。
でも僕ら3人は、ザラからお守りに鏡のネックレスもらっていたので、勇気を持って突き進んだ。
実際のところは、石化防止効果があるのかどうかはわからないが、視線を合わせなければ問題ないのだから、遭遇しても必ずしも石化するわけではないし、突き進むことに躊躇はなかった。
地上を進む僕らの部隊は、ファイヤードラゴンを召喚したヨーネスの部隊の後ろを進軍した。
僕とフェアリーは王都への最短経路を確認しながら、ヨーネスに伝えた。
途中、ラタトスク(ランクD)というリスの魔物の仕掛けた罠に、戦闘を走るヨーネスの部隊が足止めされたことが一度あったけど、他には特に、僕らの進軍は大きな障害に遭うことなく、ロマール城に到着した。
ここで立ち止まったのは、ロマール城にも結界が張られていたからで、セルバートの到着を僕らは待った。
王都の魔物はかなりいるようで、上空から見渡すと、その発生源も何となく複数あるように思われた。
魔物の数が異様に多い場所が、いくつか散見されるからだ。
ただ、僕らは今は王の前への到達を最優先にすべきだ。
王立騎士団の部隊は、いくつかのチームに分かれて、王都の重要施設の占領に動いているチームもあった。
王都魔術院、武器庫、兵舎、穀物庫等の、軍事施設や関連施設の占拠も最優先に行うことになっていた。
ただ進軍する中で、魔物の発生源の制圧も必要なのではないと、フェアリーはセルバートの部隊と合流したとき伝えた。
セルバートはその意見を受け入れ、重要施設の占領を成したあとには、魔物の発生源の発見と制圧を指示した。
でも、それは言わなくても、王立騎士団のメンバーは自主的にやっているようだった。
というのも、ロマール城へ侵入するよりも、魔物退治の方が遥かに大きな収入になったからだ。
残念ながら、略奪も発生していた。
王都自体がもう住民の殆ど住まない魔物の巣窟にはなっていたために、虐殺や強姦や人さらいはなかったと思うが、各戸の家荒らしや貨幣鋳造所への不法な侵入はあとを絶たなかった。
貨幣鋳造所に関しては、セルバートから重要施設の一つとして役員管理に切り替えられた。
西の強国ギルドのリーダーのロドリゲスが、その報告を聞いて「王立騎士団も大したことないな」と呟いたのを、僕らは聞いて少し恥ずかしくなった。
ロマール城内の進軍は、流石に騎馬や麒麟に乗って行うのは憚られた。
セルバートも騎馬でも侵入は禁じたので、僕らは一斉に駆け出した。
そうなると、大人の足にはどうしても叶わない。
特に重装備の者ほど、足は遅い。
僕らは2番手での侵入となった。
フェアリーは空を飛べたけれど、敵の襲撃を受ける危険もあるので、僕らと行動を共にした。
一番手には、シャルルやトールアーサーの部隊が切り込んだ。
特にシャルルはグリフォンに騎乗しているので、重装備ではなく、質の良い皮装備のため、その侵入は早かった。
僕らは厩舎や鍛冶場を抜けたあたりで、フェアリーが中庭はショートカットになるかもというので、僕らは通路ではなく中庭を進んだ。
モンスターはグーロ(ランクE)という猫の頭を持つ大型犬の数匹の群れに遭遇したけど、ヨーネスの部隊が素早く射抜いたので侵攻を妨げるものにはならなかった。
ヨーネスはさすがに火事を恐れて、城内でファイヤードラゴンを召喚することはなかった。
でも彼は、「魔法が使えないわけではない」と言った。
別に僕はヨーネスと魔法比べをするわけではないので聞き流して、「先に行こう」と進軍を続けた。
シャルルやトールアーサーの部隊は、行く手をヘルハウンド(ランクD)の群れに遮られて、商人ギルドと共に共同して戦っているようだった。
僕らは大広間を抜けて、王の間へ一番乗りで侵入した。
そこは薄汚れて、獣の臭いの満ちた空間だったけれど、どこか荘厳で、ロマール地方の首都であったことを感じさせる場所だった。
床面には古代の戦いの模様を示す絵柄の入った、大きな絨毯が敷かれていた。
その先には玉座があった。
僕たちはそろそろと玉座に向けて、歩いていった。
その時、きゃっという声がして、フェアリーが消えた。




