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31:「夕方帰宅すると、玄関に自分の靴がもう一足あった」



 定時で帰れた奇跡のような日。

 オートロックを解除して玄関で靴を脱ごうとしたその時だ。

 私の靴がもう一足ある。

 通勤用にちょっと背伸びして買った、ブランド物の歩きやすいパンプスだ。

 私は一人暮らしだから、疲れすぎて幻覚を見ているのかもしれない。

 もう一足のパンプスを観察する。

 でも、踵の擦り減り方や、小さな傷の場所まで同じだなんて、こんなことある? 

 不意に部屋から微かな物音が聞こえてきた。

 まさか、うちに泥棒が入ったのか。

 スマートフォンの画面を開き、いつでも緊急通報を押せるようにして、玄関に上がる。

 忍び足で廊下を歩き、部屋に入ると。

 ――私そっくりの女が立っていた。

 悲鳴をあげそうになった途端に、目の前が真っ暗になった。


「危なかった」


 彼女はリモコンを握っている。


「コピーロボットの私物を点検していたら鉢合わせとは、ついてない」


 彼女は自分そっくりの女を、コピーロボットと呼ぶ。


「ちょっと電脳をいじって記憶を消しておこう」


 彼女がコピーロボットにコードを接続すると、パソコンを操作した。

 画面に製造番号や記憶データらしきものが表示されている。


「明日にはまた会社に行くでしょ。いや、不労所得って最高」


 彼女は鼻歌を歌いながら作業している。

 電源が落ちているコピーロボットには、聞こえない。




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