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29:「夜、洗濯物を取り込む」
残業を終えた夜、賃貸マンションに帰ると換気を兼ねてベランダに干していた洗濯物を取り込んでいく。
一枚ずつ畳んでいるうちに、見覚えのない服が混ざっていることに気づく。
フリルの付いたブラウスなんて、私の趣味じゃない。
しかも、その服にはまだ温かさが残っている。
もちろん私のものではない。
一人暮らしなのだから、家族の物という可能性もない。
私は知らない人の服を、ベランダから捨てた。
風に舞いながら落ちていくフリル付きブラウスは、なかなかの見ものだった。
部屋へ戻ろうとした瞬間、
「賢い、賢い」
と声がして振り返るが、誰もいない。
当然だ。八階のベランダに人がいるはずがない。
それに私の部屋の両隣は空室だ。
駄目だ。それ以上のことは考えるな。
私は部屋に戻ると窓の鍵を閉め、カーテンをひいた。
ふと思いついた。
さっきのことを怪談系YouTuberに送ったら、採用してもらえるかもしれない。
確か、あの人なら謝礼に五百円のギフトカードをくれると公言している。
私はパソコンを起動し、読みやすい文章を心掛けてさっきの体験談をまとめた。
文章を読み返していて、私は一カ所だけ首を傾げた。
フリルのブラウスを、誰かが私のベランダに干した。
私は、そんなことを書いた覚えがなかった。




