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27:「忘れ物」
朝、家を出ようとした俺は、何かを忘れていることに気づく。
鞄の中を確認する。
財布、スマートフォン、鍵、名刺ケース、ノートパソコン――どれも持っている。
部屋を見回しても、忘れ物がなんなのか、わからない。
洗面所の前を通りかかると鏡に映らなかったので、慌てて映るよう魔力を調整する。
鏡には映った。
それなのに何かが足りない気がしてならない。
喉の奥がひどく渇いた。
胃も空っぽだ。
それに、指先が妙に冷たい。
まさかこんなところにと思いながら、バスルームの扉を開ける。
そこには、壁にもたれかかっている女がいた。
白い首筋には、赤い跡が二つ並んでいる。
やっとわかった。
俺は彼女の首筋に牙を立てて、その血を吸った。
喉が潤い、腹が満たされ、身体が温かくなる。
それで俺は自分が人間社会に馴染みすぎていることに気が付いた。
まさか、自分が吸血鬼であることを忘れるなんて、笑い話にもならない。
そういえば今何時だ?
時計を見る。
始業時間まで、あと十五分しかない。
大慌てで口元をティッシュで拭き、俺は家を飛び出した。




