23:「誰も振り返らない」
動画の素材が欲しくて、夜中に散歩したことを後悔した。
うしろから、ずっと誰かの足音がついてくる。
ペタペタ、ペタペタ。
息苦しくなり、背中に汗をかいた。ワンピースの生地が背中に張り付いて不快だ。
足早になる。
ペタペタ、ペタペタ。
うしろの足音も、同じように速くなった。
大通りに出れば人がいる。
そう思って角を曲がった。
コンビニの前に二人の若者がたむろしている。
これで大丈夫だと思った瞬間、うしろの足音が立ち止まった。
「あの?」
若者の一人が、私の背後を見ている。
「さっきから、あなた一人で何してるんですか?」
「え?」
二人の視線が私の足元へ落ちた。
「あとをつけられているんです」
「誰に?」
「姿は見えた?」
「振り返るなんて、無理ですよ」
若者たちはお互いをちらっと見る。
「またか」
「たぶん」
「警察はやめといた方がいいよ」
「だから、振り返ってこう言ってみて。その言葉は……」
助けてくれないのかと腹が立ったけど、自宅までついて来られても嫌なので、若者の言う通りにした。
街灯が少ない通りに出て、しばらく歩いてみる。
ペタ、ペタ、ペタと足音もついて来る。
突如振り返ると、私はこう言った。
「ペタペタさん、お先に行ってください」
その瞬間、足音が遠ざかっていった。
ペタペタ、ペタペタ。
私の背後から、私の前方へ。
ぬるい風が吹き抜けて、腕に鳥肌が立った。
でも、また歩いてみると、うしろから足音は聞こえてこない。
ふと、あのコンビニの前に行ってみる。
けれど、二人の若者はいなかった。
店員に聞いても、そんな二人は見ていないと言う。
ただ、レジ横の防犯カメラだけが、こちらを見ていた。




