表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/31

21:「返せなかったもの」



 引っ越しのために部屋を片付けていると、机の奥から古いゲームソフトが出てきた。

 ケースを開く。

 ディスクの表面を指先でなぞると、十年前テレビから流れていた音楽まで蘇った。

 農民だった勇者が聖剣を抜き、魔王を倒す旅に出るゲームだった。

 ドラゴンに焼かれても、仲間を失っても、勇者は立ち上がった。

 俺も、何度ゲームオーバーになってもコントローラーを握り直した。

 学校で一番ヤバイと言われていたやつに絡まれた時も、そうだった。


「あんたは間違ってる」


 言った瞬間、教室が静かになった。

 翌日から、昼休みの席は一つ余った。

 体育のペア決めでは、最後まで俺が残った。

 それでも帰宅すると、俺はゲーム機の電源を入れた。

 勇者は何も言わず、剣を握っていた。

 だから俺も、もう一度立ち上がれた。

 あれから十年。

 俺はゲーム機の電源を入れた。

 画面は真っ暗だった。

 メーカーのサイトを調べると、倒産していた。

 工場も閉鎖。修理も受け付けていない。


「これ、借りパクじゃん!」


 思わず笑った。

 俺は勇者から『勇気』を借りた。

 なのに、まだ返していない。

 ネットオークションを開く。

 ゲーム機の相場を見て、貯金残高を確認する。

 少し迷ってから、購入ボタンを押した。

 待ってろよ、勇者。

 今度はちゃんと返すから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ