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2:開かない扉が、今日は少しだけ開いていた



 昨日まではいつもと変わらない一日だったのに、開かずの間の扉が、今日は少しだけ開いていた。

 暗闇の奥が「入っておいで」と囁いているようだった。

 でも、部屋の中には誰もいないのに、誰がどうやって開けたのか? 

 いや、そう考えることは検証してみように繋がるから駄目だ。

 私は開かずの間をなるべく見ないようにして、出勤の準備を整える。

 鏡だけを見続ける。

 開かずの間を視界から追い出すために、一時間も化粧に没頭した。

 家を出ようとすると、どうしても開かずの間が視界に入ってくる。

 この扉を開けたらどうなるのか?

 好奇心は猫を殺すと言われている。

 いや、それより、私はかつて母が引きこもっていた部屋なんかに入りたくない。

 私は母とは違う、と自分に言い聞かせる。

 私は玄関で靴を履く。

 しかし、母はあの部屋で何を思っていたのだろうと考えてしまう。 

 私の言葉はなぜ届かなかったのか――いけない、いけない!

 玄関に立っていたはずなのに、いつの間にか開かずの間まで三歩のところに立っていた。

 ただ、私は母と同じ過ちを繰り返す気はない。

 だから、何事もなかったように振る舞って家の外に出た。

 仕事に打ち込めば、開かずの間のことは忘れられると信じている。




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