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1:「扉を開けた瞬間」


〇:「古い鍵」


 亡き父から譲られた鍵を手に乗せて、私は考える。

 あれを開けるか、否か。

 父は母にさえ鍵を預けなかった。

 最初は冷たかった鍵が温かくなっている。

 いつの間にか握り締めていたのだ。

 金属の匂いは記憶を呼び覚まそうとするが、私は思い出したくない。

 引き出しを静かに閉める。

 鍵の音が小さく鳴り、私はその音ごと記憶に蓋をした。



(文字数が足りない短編を前書きに置きました。読んでくれた方々、ありがとうございます)






 廃校の塀を乗り越えるだけでも汗をかき、息を切らした。

 嫌でも年齢の限界を感じるが、私は必死で足を動かして、かつて通っていた教室の前に立つ。

 開かずの間という怪談を吹聴したのは、自称霊能者の迷惑系YouTuberだった。

 埃っぽい空気の中に煙草の匂いが混ざっている。

 私は十年前前、ほのかに思いを寄せていた少年へ語りかける。


「タケシくん、私だよ」


 すると、カチッと鍵が開いた音が聞こえた。

 ゆっくりと扉の隙間を開ける。

 冷えた空気が頬を撫でた。

 私はタケシくんきまた会えるという期待で胸を膨らませ、扉を開いた。

 次の瞬間、銀色の光が一直線に私へ走った。

 左胸を衝撃が貫いた。

 ナイフだった。

 息が詰まり、膝から崩れ落ちる。

 温かな血がワンピースを濡らしていく。

 ぼやける視界の向こうで、誰かが笑った気がした。










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