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12:「時計が止まった瞬間」



 待ち合わせの時刻が近づいているのに、約束の相手が来ない。

 焦った私はスマートフォンの画面を見る。

 すると、時計は十一時五十九分で止まっていた。

 故障したのかと思い、レストランの壁時計を見上げると、なんとそれも十一時五十九分で止まっていた。

 ところが、食器が擦れる音と店内を歩き回るウェイトレスの足音だけが、静かな店内に規則正しく響いていた。

 誰とも目が合わない。

 ウェイトレスは注文を聞きに来ないし、客の誰も私に気付かないで自分たちの話に夢中になっている。

 そう、まるでいじめられていた中学時代のように時間が止まっている。

 私はただ、加害者に私をいじめた理由を聞きたいだけなのに。

 いざ会おうとすると、必ず時間が止まるのだ。

 約束の席は向かいだけ空いたままだ。

 これじゃ永遠にいじめた理由を聞けないし、謝ってもらうこともできない。

 私はスマートフォンから目を離し、何気なく窓の外を見た。

 お母さんが泣きそうな顔で、何か言っている。


「あいつに心を壊されたあなたの時間は、あの日でずっと止まったままなのよ」


 スマートフォンの画面には、十一時五十九分の数字が消えない。

 レストランの時計も同じ時刻を指したままだ。

 窓の外では、信号だけが何度も色を変えていた。




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