表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/57

7 皇帝陛下崩御

 燕鶯が旅立ってから七日が過ぎた。

 林杏が言うには国境の町啓安に到着するのに、まだまだ日数はかかるという。

 前庭に立ち、一心は夜空を見上げた。

 晴れ渡った空に流れる天の川。瞬く星は近くて手を伸ばせば届きそうだ。


 あいつ、今頃どこにいるんだろう。どこかで野営をしているのだろうか。ちゃんとしたもの食ってるだろうか。腹壊してないか。


 一心ははっとなる。

 気づけば燕鶯のことばかり考えている自分がいる。

「姉姉、そろそろお部屋に戻りましょう。風が冷たくなってきました。お風邪を召します」

 近づいてきた詩夏が上着をかけてくれた。

 長い間外で立っていたせいで、体が冷え切っていたことにようやく気づく。

「姉姉、心配なさらずとも大丈夫ですよ。陛下は武芸にも秀でた方です。だから絶対に戻ってきます」


 詩夏はにこりと微笑んで、慰めの言葉をかけてくれた。

 よく見ると鼻の頭が赤い。詩夏もずっと側についていてくれたのだ。

 一心はかけてもらった上着を脱ぎ、詩夏の肩に羽織らせた。

「悪いな、寒空の下で立たせてしまって。私は大丈夫だ。鍛えているし。それよりも、詩夏が風邪をひいて倒れられたら困る」

 いいえ、と詩夏は首を振る。

 確かに、今ここでオレがあれこれ悩んでもどうしようもない。無事に帰ってくることを信じて待つしかない。


「なにか体が温まるものでも作ろう」

 厨房へ向かおうと歩き出したその時、林杏が血相を変えてこちらに駆け寄ってきた。

「凜嬪さま!」

「どうした? 林杏が慌てた顔で走るなんて珍しいじゃないか」

 林杏の目からぽろぽろと涙が落ちる。

「なに泣いてんだよ。何かあったのか?」

 燕鶯を見送るときに感じた胸騒ぎ、嫌な予感。

 まさか……まさかだよな。

「陛下が」

 一心はごくりと唾を飲み込んだ。堪えて林杏の言葉の続きを待つ。


「陛下が……崩御されました――」

 一瞬、林杏が何を言っているのか理解できなかった。頭の中が真っ白で、林杏の声が遠くに聞こえるようだ。

「う、嘘だろ。あいつが死ぬわけがない」

 一心は旗袍の裾を思いっきりたくしあげ、月明宮から出て行こうとする。

「凜嬪さまどこへ!」

「あいつの元に行く。確かめるんだ!」

「凜嬪さま、どうか落ち着いてください!」

 冷静を欠いた一心を、林杏が宥める。

「必ず帰ってくるって約束した。あいつが死ぬわけがない!」


 燕鶯! 戻ってくるって約束したじゃないか!


 燕鶯は啓安の町へ向かう途中の山で盗賊に襲われた。

 一心は否定するように首を振る。

 たかが盗賊に燕鶯がやられるわけがない。おそらく、何者かによって殺害された。燕鶯を玉座から引きずり下ろすために。だとしたら、燕鶯を襲ったのは皇后一派による者か。

 すべて、皇后と皇后を支持する一派によって物事が運んだのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ