2 元宵節
あれから二週間経ったが、病気の母の様子をみるため故郷に帰った小幽子は後宮に戻ってこない。母親の病状がまだ悪く付き添っているのか。それとも、本当に小幽子は嘘をついて、後宮から逃げ出したかったのか。本当のことは分からない。
林杏には何度も、凜貴人さまはお人好しすぎると言われたが、小幽子が戻って来るか来ないかは、一心はどちらでもいいと思った。
病気の母親についてやるのは当然だ。もしくは、これまで宮中で虐げられ辛い思いをしてきたのだから、逃げ出したい気持ちもあったはず。それなのに、イヤイヤ働かせるのは気の毒だ。現代で考えるなら転職したと思えばいい。
一心はうんと伸びをして前庭にでる。
「ん?」
今日はいつもと様子が違うように見えた。
林杏が忙しなく動き回りながら侍女や太監たちに指示を出し、前庭の木に提灯をぶら下げ飾り付けをしていた。
「提灯の下で一杯飲むのも、風情があっていいな」
前庭に椅子を持ち込んで座ると、詩夏がお茶を差し出してきた。
「サンキュー。ところでなんで飾り付けしてんだ? 何かイベントでもあるのか? あー、祭りとか?」
「元宵節ですから」
「元宵節? そうか、今日は元宵節の日だったんだ」
湯飲みの蓋を取り、作法も関係なくぐびっと飲む。
詩夏のいれる茶は文句なしにうまい。熱すぎずぬるすぎず、丁度いい加減だ。
「うまい茶だな」
「ありがとうございます」
詩夏はにこりと微笑んだ。
このあどけない笑顔がまたかわいいのだ。
「陛下が贈ってくださった太平猴魁です。とってもよい茶葉なんですよ」
一心はそうじゃないと首を振る。
「茶葉の良し悪しなんか関係ない。詩夏が心を込めていれてくれたからうまいんだ」
詩夏はお盆を胸に抱え嬉しそうに笑う。
「褒めてくださって嬉しいです。私、これからも姉姉のためにおいしいお茶をおいれしますね!」
「頼んだ。てか、詩夏は本当に素直でかわいいな」
可愛いと言われて詩夏は頬を赤くする。
くっそ、めっちゃ可愛い! オレのかわりに可愛く着飾って、宮中を連れ回してみんなに見せびらかしたいくらいだ。




