幕間其の4
バアル達がセプロン市を出る日から、リット村に着くまでの間の出来ごとです。
小話11 ストーカー IN セプロン市
「ふっふっふ、ここがマグナダイン殿が拠点にしている町か」
『魔人剣』はセプロン市の西門の前に居た。ばれないように追跡して来た為、既にマグナダイン達は市内に入っている。アインはマグナダインを追ってセプロン市に入ろうとした。
「あー、そこの君、入市税を払いなさい」
しかし門番に阻まれた。
「む? 入市税だと? この我は金など持っておらん」
「えーと、君どうやってここまで来たの?現物納付でもいいけど…、貴金属とか価値ありそうなものはあるかい?」
門の奥に居た買い取り商人らしき人間がチラチラアインを見始めた。そしてアインに近づくと、腰に差していた『魔人剣』を見始めた。
「その見事な剣だったら金貨で50枚位出してもいいぞ。その金で町に入って、別の武器を買ってもいいんじゃないか?」
「無理だ! これと離れることなどできん!」
物理的に不可能なことなので、即否定するアイン。商人は肩を竦めて引き下がる。
「そうかい。まあ金を貸して欲しいんだったら言いな。あんた強そうだし、冒険者ギルドとかで稼げばすぐ返してもらえそうだしな」
心の底では買い取りを諦めておらず、恩を売っておこうという魂胆が透けて見えた。
「いらん! イース王国の剣聖が借金などできるか!」
「じゃあどうやって入るんだい?」
門番の言葉に黙りこむアイン。アインは一度踵を返すと門から離れて行った。諦めたと考えた門番と商人はそれっきり興味を失くし、別の旅人の対応に移って行った。
(くっくっく、入市税など払わなくとも町に入る術はいくらでもある…!)
当のアインは心の中で悪い事を考えていた。
……
その夜、アインはこっそりセプロン市の防壁に近づいていた。防壁の上には見回りの兵士が巡回していたが、広い防壁の全てに隙間無く兵士を配置することは出来ず、かなりの空白が存在していた。アインはその空白区間の下にいた。
(何、我が半身さえ市の向こうに行ってしまえばいい、つまり…こうすればいいのだ!)
アインは大きく自身の半身の『魔人剣』を振り被ると、上空に向かって投擲する。
「よし! …おわああああ!?」
高度が五mを超えた段階でアイン自身も引っ張られて空を飛ぶ。想定してなかったのか思わず大きな声を出してしまった。
「こなくそ!? 『茨縛』!」
『魔人剣』から茨が迸り、防壁の頂きにある出っ張りに絡みつく。防壁の中ほどに『魔人剣』とアイン自身は張り着いた。
「ふー…、このまま少しずつ上って行こう。……ん?」
アインは防壁の上部がにわかに騒がしくなった事に気づき、念の為人間形態を解除し、剣に戻る。防壁の上部では先ほどのアインの叫び声を聞いた兵士が集まって来ていた。
「人の声らしき叫びが聞こえたんだが…、気のせいか?」
「おおい、新人に確かエルフが居ただろう。あいつ呼んで来い、夜目が利くらしいから」
「なんだ、この茨は? 切っておくか」
三人目の言葉にアインは剣の中で青い顔をするが、声を出す事も出来ずに思考を空転させる。そうこうしている内にゴリゴリ音が聞こえてきて、プチっと茨が切れる。
「? 今何か金属音がしなかったか?」
「…? 聞こえなかったぞ。とにかく周囲を探索しよう」
防壁の上では騒ぎが大きくなっていたが、防壁の下では、アインが一人静かに尾骶骨を押さえて悶絶していた。『魔人剣』の柄頭にはちょっとだけ傷が付いていた。
その次の日、行商人の荷物に『魔人剣』を潜り込ませて入市を果たしたアインだったが、既にマグナダイン達は旅だった後と知ったのはそれからしばらく後だった。
アインの潜入作戦は、今度は人探し作戦に変わったのだった。
小話12 メニ―の贈り物
バアル達がセプロン市を出た最初の野営時に、エミリーはメニ―から貰った紙袋を開けていないことに気付いた。そこで、女子用テントの中で寝る前に開けてみる事にしたのだった。魔法の光球の下でエミリーがごそごそと荷物を漁っていると、カルニウェアンとカミラが興味を持って近づいてきた。
「何してるんですか、エミリー?」
「あ、メニ―さんのプレゼント見るんですね~、お姉さんにも見せて~」
「も~、うっとおしいから肩に顎乗せないでよ、二人とも! 今出すから!」
エミリーはぶんぶんと体を揺らしてカルニウェアンとカミラを振りほどくと、紙袋を開けて、中身を取り出す。だが取りだした瞬間固まってしまった。
「……何これ……」
「ふおおおおおおおお!! セクシーな下着じゃないですかあああああ! ちょ、ちょっと早速着てみて下さい、エミリーちゃん!」
「おお…、これは中々大胆な…」
エミリーの手の中にはアラクネの糸によって編まれた純白の下着があった。非常に薄く、しかし丈夫に作られたそれは、体のラインをしっかり出しつつ、かなり透けて中身がほぼ丸見えになる仕様であり、レースの刺繍も相まって非常にエロティックだった。
中にはメニ―からの手紙も入っており、「これで意中の男性の心をゲットして下さい。伸縮性が高いからサイズ変わっても使えるよ☆」という内容が書かれていた。
「おのれ、メニ―さん! せめて一言言っておいてよ…。セクハラ吸血鬼に見つかったら、食いつくのは明らかでしょうに…」
「もう入れ食いですよ~。こんなおいしい餌なら日光の下でも食べに行きますね。というわけで早速着て下さい。お姉さんが下着姿で出来るセクシーポーズ教えてあげますから」
「いらんわ!」
べし! とカミラの頭をはたくと、エミリーは急いで下着を紙袋に直す。それをカルニウェアンが止めた。
「まあ待って下さい、エミリー。折角プレゼントされて一度も着無いのも失礼でしょう。カミラさんは押さえておきますから、一度着てみては?」
そう言われると、エミリーはメニ―の笑顔が頭の中に思い出されて、申し訳ない気持ちになる。エミリーはカミラをちらりと見ると一つ呪文を唱えた。
「『誘眠』」
「くか~…」
不意打ちで魔術を受けたカミラは敢え無く眠りに落ちる。それを確認したエミリーは渋々と言った調子で服を脱ぎ始めた。
「一回だけだからね…」
……
「エミリー、ローブ脱いで下さいよ。下着見えないじゃないですか」
「見せないようにしてんのよ! 着心地だけ確かめてるんだから」
「ちぇー。で、どうですか着心地は?」
「さすがメニ―ね。体にフィットしている割に全然動きづらくない。こりゃアンディさんを超えるのもすぐでしょうね」
ローブの下で色々な動きをしてみるエミリーは感心したように評価する。カルニウェアンはその感想を聞いて興味を持ったのか、エミリーに手を差し出す。
「エミリー、私も着てみたいのでちょっと貸して下さい」
「え…、サイズ…、合わなく無い?」
主にカルニウェアンの胸を見ながら、嫌そうにエミリーは言う。
「伸縮性のある素材だそうですから大丈夫でしょう? そんなに変わりませんし」
「う、うっさい! 控えめで悪かったわね!」
「そこまで言ってないんですが」
自爆したエミリーは、それを誤魔化すように乱暴に下着を脱ぐとカルニウェアンに放り投げる。そして元々着ていた下着を身につけ、ローブを着直す。カルニウェアンはローブの下でごそごそと着替えていたが、着替えるとローブの前を開いてエミリーに自らの下着姿を見せる。
「確かに着やすいですね、これ。どうですか?」
「………ウン、ソウダネ」
エミリーは酷く物悲しげに棒読みで答えるだけだった。
「…ごめんなさい、そこまでショック受けるとは思いませんでした…」
「ショックとか受けて無いし…」
カルニウェアンは元の服に着替えると下着をエミリーに返そうとする。その時ちょうどアナトーがテントに入ってきた。
「失礼しますわね…、あら、それは下着? 可愛いデザインですわね、誰のですの?」
カルニウェアンはアナトーに下着の由来を説明した。するとアナトーはかなり興味を示して近寄る。
「まあまあ、メニ―さんの作品なんですか。いいですわね~、こんな高級な下着とかはまだ揃えられませんんし…」
「着てみたらどうですか? 折角ですし」
「ちょっと! カルニウェアン、何言ってるの!?」
「ダメ…、ですの?」
ちょっと残念そうなアナトーの顔を見て、エミリーも強くは出れなくなり、不承不承了解する。
アナトーは喜んで服を脱ぎ、下着を身に付けて行く。アナトーが一枚服を脱ぐ度にエミリーの顔が悲相に染まって行く。アナトーが下着を纏っても、伸縮性の高い素材で出来ているメニ―特製の下着は破けたりもせず、しっかりとアナトーの体を包んでいた。
スタイルの良いアナトーの褐色の体を純白の下着が覆っている様は綺麗なコントラストに彩られた一枚絵の様な美しさだった。
エミリーはじっとアナトーの姿を見つめ、次にカルニウェアンの胸を見て、最後に自分の体に視線を落とす。エミリーが丘ならばカルニウェアンは小山、アナトーは山脈、と言った風情だった。
エミリーの心中も知らずにアナトーははしゃいでいた。
「まあ、最初はサイズが心配でしたけど、本当に高い伸縮性がありますのね! こんなに体にフィットする下着は初めてですわ」
サイズ、の部分でエミリーはがっくりと肩を落とす。これ以上はダメージが大きすぎるかと考えたカルニウェアンはエミリーの背を撫でながらアナトーに着替える様促す。
「満足しましたか、アナトー? そろそろ着替えたらどうです?」
「もうですか? …エミリー、もし宜しければ今度この下着貸してくださいません?」
「貸す、貸すから着替えて…」
息も絶え絶えにエミリーは承諾する。アナトーはその返事に喜んで着替え…、脱いだ下着を見てピタリと動きを止める。その様子に、エミリー達は不思議そうに首を傾げる。
「…どしたの?」
「えっと、その…」
アナトーは言葉を濁したままそっと下着をエミリーに返す。エミリーは下着を受け取ると何気なく広げてみた。
そして気付いてしまった。メニ―特製の高伸縮素材でも、アナトーの胸のサイズを受けきるのは役者が不足していたことに。有り体に言ってしまえば、ブラの部分が伸びてサイズが大きくなってしまっていた。
それを把握したカルニウェアンは、固まるエミリーの肩を優しく叩いて、慰める。
「きっと、エミリーがそれ位まで育つだろうって言う神様の啓示ですよ」
「余計な慰めはいらん!!!」
エミリーは涙を堪えつつ自分の寝具に潜り込んでしまった。
次の日の夜、女性達の下着ショーを見逃したカミラは、皆が寝静まった夜、こっそりエミリーに下着を着せようとしてテントから叩きだされたりしたが、それは別のお話である。
また数日間投稿できないでしょうが、気長にお待ち下さい。




