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36.旅の道中1

アウロラの要請により、白竜のスコットを加えたバアル達のパーティーは遂にセプロン市から旅立った。その道中では様々な難事が…、まだ発生しません。

 バアル達はセプロン市の北門を出ると、カミラの先導により、そのまま道沿いに北上する事になった。


「まず一週間程かけて北上してタナリンの町に向かいます。そこから北西に更に二、三日かけてアイウーズ市に行きます。そこでエミリーの生活基盤を整える交渉を行いますので~」


 カミラは照りつける太陽から身を守るようにローブで体を厳重に隠しながら辟易した様子で今後の行動を説明をする。昼過ぎの太陽は、様々な方法で日光をカットしているカミラをしても体力を消耗させるほど強く照りつけていた。


「結構暑いな…。もうそろそろ夏か」


「そうですね、ここら辺は南の方ですし、暖かくなるのは早い方だと思いますね」


 カミラの背負っている荷物を受け取って抱えていたスコットはマグナダインの言葉に同意する。カミラは親切にも自分の荷物を持ってくれたスコットに擦り寄る。


「スコットさん、ありがとうございます~。お礼は脱ぎたての下着でいいですか~?」


「いえ、自分は女物は使いませんので要りません」


 からかうつもりで放った言葉に、生真面目な返事を返され、カミラは二の句が告げられなくなり、徐々にスコットから離れてエミリーの元へ向かう。


「エミリーちゃん、お姉さんああ言う馬鹿真面目な人って苦手~。どうすればいいと思う?」


「白竜さんのブレスで焼け焦げればいいと思うわよ。カミラってその内誰かの怒りを買って灰になってそうよね」


「怖いわ~~。エミリーちゃんの発想が怖いわ~~」


「大丈夫です、カミラ。吸血鬼は灰を棺桶に入れてお湯を注いで三分待てば復活するそうですよ」


「カルニウェアンちゃん、それカミラスープが出来上がるだけですよ~……」


「ジュルッ…」


「カルニウェアンちゃん、真顔で涎すするの止めて~、お姉さん違う意味でゾクゾクしてきちゃう~」


 きゃいきゃいと姦しく騒ぐ三人娘は楽しそうに揃って歩いていた。カミラもいつの間にか調子を戻して来たようだった。


 スコットはカミラの様子が復調したのを確認すると、ファフニールに視線を移す。ファフニールは相変わらず荷車を引いていた。スコットはファフニールに近づき、申し訳なさそうに話しかける。


「ええと、ファフニール殿。私が代わりに荷車を引きますよ」


「…? 別に代わらなくていい、もう慣れたし。そのカミラの荷物も荷台においていいぞ」


 ファフニールは荷車を引きながらひょいとスコットが持つカミラのリュックを取ると、荷台に載せる。スコットは困惑を隠せないまま言葉を紡ぐ。


「ありがとうございます。その、なんと言いますか、この世界のドラゴン達とはまた違った考え方をファフニール殿はされるようですな」


「どういう意味だ?」


「我々は大なり小なりプライドが高い者達ばかりです。荷車を引く役に甘んじる者はまずおりません。それが上位者の代わりと成る様な場面以外では」


「僕がいつ上位者になった?」


「それはもう、姫様をお助けになられた時からです。あの時から貴方は我々近衛隊にとって疎かに出来ない方になったのですから」


「嘘だな。それに関しての報酬はちゃんと貰った。それに、お前の眼には恐怖が見える」


 ファフニールの射抜くような視線を受けスコットは思わず目を逸らす。そして気まずそうに言葉を続ける。


「…ええ、確かにそうです。姫様救出の件とは別に、私は貴方に恐怖を抱いている。成竜三体を苦も無く排除した貴方を恐れています。…そう言う意味で貴方を上位者として認識していることも確かです」


「そうか。別に構わないがな。僕を恐れて近づかない者などいくらでも居た。…その意味では、あのエリナリーゼという地竜とアウロラは珍しいな。僕を恐れている気がまるで無い」


「隊長は姫様の前ではいかなる恐怖も感じないでしょうね。そういう方です。姫様は…、察して頂けますか?」


「若過ぎる雌は興味ないな。まだエリナリーゼの方がいい」


 スコットは天を仰ぎ自らの主君に同情する。そして自分なりに主君のアプローチを補佐して上げようと心に決めたのだった。



 そんな二人を横目で見つつ、バアル、アナトー、マグナダインは珍しい光景を目にして少々驚いていた。


「ファフニールは以外に饒舌だな」


「そうですわね。考えて見れば、同性の同族と一緒に長く過ごす事は初めてじゃありませんかしら?」


「そういやそうだな。ファフニールも友達が出来たみたいではしゃいでるのかもな」


「同族にしか分からない感情もあるだろうしな…。この世界に来た事はファフニールにとっては良い事だったかも知れん」


「俺達の世界ではドラゴン自体が稀な存在だったしな…」


「そう言えば疑問だったんですけど」


 ぬぅっとカミラがバアル達の背後に現れ、話に割り込む。バアル達は若干引きながらカミラに応える。


「な、何だカミラ」


「出来れば急に背後に立たないで下さいます? 失礼ですが不気味ですので」


「う~ふ~ふ~、どっきり大成功~。…じゃなくて、私が聞きたいのは、バアルさん達は強力な力をお持ちなのに、力任せにお金を奪ったり、情報を聞き出そうとしないんですね」


「あ、それはあたしも思った。元の世界に帰るんだったらこの世界で何しようと構わない、とか考えないの? 急いでるんでしょ?」


 カミラに着いて来たエミリーも同様の事を聞く。その後ろのカルニウェアンは黙っており、少し離れたスコットは聞き耳を立てている。

 バアルはしばし黙考した後、話し出す。


「まず最初は、この世界の情報が少なかったから、俺達を超える存在が多数居るかも知れないという想定でいた為大人しくしていた。だがそうでないと分かった頃には、この世界、いやこの国が俺の、俺達の理想とする国と似ていた、だから壊したく無いと思ったんだ。ついでに参考にさせて貰おうとも思ってな」


「理想の国ですかー。色々な種族が居る国ですか?」


「様々な種族が居て、尚且つ互いに協力し合える国だ。残念ながら、俺の治める国はそこまで到達していなかったからな」


「ふーん、あんまり政治家には向いていないんでしょうね。バアルって割と脳筋っぽいし」


「エミリー、事実は時に隠す物ですよ。特にバアルLOVEなダークエルフの近くでは」


 カルニウェアンがエミリーに近づき忠告する。エミリーはアナトーの憤怒の形相と、彼女の影から顔を出す魔獣達の威嚇に慌てて謝る。


「ごめん、悪かったわ。戦争してたらしいし、内政に励む暇も無かったんでしょう」


 バアルは苦笑しつつアナトーを宥める。まだ何か言いたそうだったが、アナトーはバアルに従い矛を収める。


「まあそうだな。俺がトップで国を運営しなければいけなかったのに、戦争に注力してたのがまずかった」


 バアルをフォローする様にカルニウェアンが解説を加える。


「一つの宗教による世界統一を目指す私達の敵は主に人間を中心とした勢力でした。彼らは自分達の宗教を信仰する者達には寛容でしたが、人種差別はよくありました。そんな迫害された者達を受け入れていたのが我が国です。我が国は宗教、人種による差別無く誰でも受け入れる国でした」


「ふむふむ。でもそうすると人種、宗教間の軋轢がひどくなるんじゃない?」


「ええ。それらの対策も色々行っていたのですが、戦時中ということもあり、後手後手の対処になりがちだったのは確かです。私達は敵方の最精鋭、通称『勇者』と呼ばれる者により異世界に放り出され、私の魔術によってこの世界になんとか不時着できたのです」


「次元移動でも不時着って言うのかしら? 最精鋭と戦っていたってことは戦場で戦っていたのよね。味方は助けてくれなかったの?」


「他の味方はその時居ませんでした。何せ落城間際で軍体は民の避難にかかりっきりでしたので。私達は足止めの為に魔王城に残っていたんです」


「なんでそこまで攻め込まれてたの!? あんたらかなり強いんじゃないの!?」


「おう、『勇者』の一族を長年に渡って退ける位は強かったぞ」


 バアルは自慢するような、懐かしむ様な風情でそう言った。エミリーは尚も混乱していたが、カミラはバアル達が負けた理由を思いついた様だった。


「戦闘力では負けていなかったなら、それ以外の面で負けたって事でしょう。情報が漏れて奇襲を受けたか…、スパイが入り込んだか」


 カルニウェアンが少し感心したように頷く。


「カミラさん、正解です。我が国には十年前位からスパイが入り込んでいたのです」


「なんで分かんなかったのよ」


「一つは防諜の大切さを認識できたのがほんの数カ月前だった事、もう一つは、まあ我が国の体制的にどうしようも無かった事ですね」


「どういう事? ……まさか」


「ええ。我が国は敵方の宗教『完善なる神』を信仰する人達も漏れなく受け入れていましたので」


 呆れたとしか言いようが無い表情でエミリーとカミラは絶句する。しばし後、エミリーが恐る恐る話し出す。


「いや、それはスパイとか潜り放題でしょう。敵方の信者は入国拒否とか隔離とかしなさいよ」


「それをすると、反体制に近い勢力から警戒されて協力が得られなかったり、最悪独立勢力として敵対する可能性もあったのです。人材不足もありましたし…、正直ギリギリの国家運営だった事は認めますよ」


 カルニウェアンが渋い顔で拗ねる。エミリーはバツの悪そうな表情で謝る。


「ごめんね、カルニウェアン達も頑張ってたんだよね。横から色々言って悪かったわ」


「つまり、その敵方の信者にスパイが居て、しかも国家運営の要所に居たってことですよね~」


「でしょうね。正直戦況が芳しくなくなった数年前から情報はダダ漏れだったと思いますよ。私達がそれに気付いて対策を立てようとした時にはもう詰みに入っていたんでしょう」


 そこでエミリーは、はっと何かに気付いたように押し黙り、話すべきか迷うように視線を彷徨わせていたが、意を決して尋ねる。


「じゃあ…、バアルが帰る頃にはもうバアル達の国は、その、……無くなっているんじゃない? それでも帰るの?」


 エミリーの問いは、曰く言い難い沈黙を呼ぶ。晴天の下、風がその重い空気を吹き飛ばそうとするが、誰も何も答えない空間は容易には動かなかった。


 それを動かしたのは、バアルの力強い意思だった。


「それでも俺は帰る。帰って見届ける。俺達の国の結末を。終わっていなかったら又導くだけだ。終わっていて、俺達が必要とされなければ…、それはまたその時考えるさ」


 空に浮かぶ太陽の様に晴れ晴れとした表情のバアルに、アナトーは頭を垂れ、マグナダインは苦笑し、カルニウェアンは肩を竦め、ファフニールは黙って荷車を引く。そこにはバアルの言葉を全て受け止め、付いて行こうとする意思が宿っているようだった。


 エミリーは何とも言えない疎外感が胸に去来した。そんな彼女の体をカミラは優しく抱きしめ、耳元で囁く。


「付いて行ってもいいんじゃないかな~? お姉さんは応援するよ~」


「…!? うっさいエロ吸血鬼! 急に抱きつくな!」


 エミリーは乱暴にカミラを振りほどくとブンブン腕を振り回しながら、逃げ回るカミラを追いかける。


 …今はとにかく胸に残る寂しさを怒りで塗りつぶしたかった。



 ずっと黙っていたスコットは、ファフニールの事を諦めるよう、どうやってアウロラを説得したものか考えて胃痛を覚えていた。



 ……



 その後、二日間野営しながら特に問題も無く、…一部で騒ぎはあったが、バアル達は北上する事ができた。そしてセプロン市を発ってから三日目の昼、とある村にバアル達は立ち寄った。


「水の補給と、野菜とか鶏とか買おうぜ」


 という料理の材料を求めるマグナダインと、それを支持するカルニウェアンの強い要望により村に立ち寄る事になったのだった。


 村の名前はリットの村と言い、かつてリットと言う冒険者のリーダーとそのパーティーが、この地に暮らしていた魔獣を退治して土地を開いた事に因んでいるいるらしい。


「そのリットが村長の家のご先祖らしいぞい。まあ多分嘘じゃがな」


 笑いながらそう説明してくれたのは、キャベツや人参を売ってくれた農家のお爺さんだった。買い物に来ていたマグナダインとカルニウェアンは野菜を籠に入れながら、へーとかほーとか相槌を打つ。彼ら以外は、村人から許可を貰って村の井戸で水を補給していた。


「他にも面白い逸話がこの村の近くにあるんじゃぞ。聞きたいかい?」


 物凄く言いたそうに目を爛爛と輝かせて、お爺さんはマグナダイン達を見つめる。野菜を分けて貰った恩もあるし、一応話を聞くかと二人は目配せを交わす。


「へえ、どんな逸話があるんだい?」


「ふっふっふ、聞きたいか。…実はな、この村の近くの泉に、その昔聖剣が刺さっていたと言われる岩があるんじゃ」


 剣という単語にマグナダインがピクリと反応する。先日変な剣に出会った事が今更ながら思い出された。


「刺さっていた、ってことは今は無いのかい?」


「うむ、今は剣が刺さっていた痕跡、細長い穴しか無い。なんでも強力な封印がされていたらしく、一度剣を刺すと、選ばれし者にしか抜けなくなるそうじゃ」


「へえ、どんな人が選ばれるんですか?」


「それはじゃな……」


 ごくりと唾を飲み込むお爺さん。釣られてマグナダインとカルニウェアンも前のめりになる。



「分からん」



「さいですか」


 興味を無くした二人は籠を抱え直すと歩き出そうとする。それをお爺さんは止める。


「まあそう急ぐでない。見たいなら儂が案内してやってもよいぞ? あ、そうじゃ、儂の飼っている鶏をついでに売ってやろうか?」


 またも、見せたい、と言うオーラを醸し出すお爺さんの視線を背に感じ、若干辟易しつつも二人は振り返る。


「あー、じゃあ折角なんで見せて頂けるかい?」


「そう来なくてはな! お前さん達の仲間も連れて来るといい。ええ場所じゃぞ」


 お爺さんは意気揚々とマグナダイン達を先導して村の井戸まで歩きだす。後ろの二人は気づかれないように溜息を吐いた。



 ……



 バアル達と合流したマグナダイン達は、お爺さんの先導の元、村の近くの泉まで来た。泉は森の中に有り、木漏れ日が幻想的な雰囲気を漂わせている。泉は澄んだ湧水が湛えられており、水底は綺麗な砂利が敷き詰められていた。その中央には直径1m弱の岩が鎮座しており、その中央には確かに剣の刀身が入りそうな細長い穴が開いていた。


「どうじゃ! 中々見事じゃろう?」


「ああ、これで剣が刺さっていたら、確かに曰く付きの剣と見られる様な感じはあるな」


 バアルは全員を代表して答えた。他の皆も異論は無いようだった。


「そうじゃな。実際に剣が刺さっていたらそれこそ見事なんじゃろうけど…。お前さん、刺してみんか?」


 お爺さんはマグナダインを見ながら言う。途端に『いくさ丸ブリジット』から殺気が膨れ上がった気がした。


「イヤー、止めとくヨー。抜けなくなったら困るカラネー」


 棒読み気味のマグナダインが遠慮する。お爺さんは少し残念そうにそうか、と呟く。そのまま何事も無ければそこでお開きになるはずだったのだが……。




「はーはっはっは! 遂に追いついたぞ! マグナダイン殿!」




 ちょうどいいカモ(アイン)が藪を掻きわけて現れてしまった。アインは木の枝や葉っぱを体中に纏わり付かせ、汚れ、憔悴しながらも眼を輝かせてマグナダイン達に相対した。


「ぬお!? この前よりメンバーが多い!? しかしここで引き下がっては今度こそ会えなくなってしまうかも知れん! マグナダイン殿、せめて一度我の使い勝手を見て下さい!」


 これまでの間に何かあったのか、今回は引き下がらないとばかりに土下座をしつつ、自分の半身を差し出すアイン。エミリーはアインを指差し、マグナダインに問う。


「誰、こいつ?」


「あー、昇格試験の遺跡探索中に見つけた『魔人剣』? とか何とか…。イース王国の出らしいけど」


「イース王国? …どっかで聞いた気はするけどあんまり覚えて無いわね」


 エミリーは腕を組みつつ頭を捻る。カミラとスコットはアインの様子を窺うように黙って立っている。


 マグナダインはしばらく黙っていたが、その耳に『いくさ丸ブリジット』からの囁き声が届く。マグナダイン以外の誰にも聞こえない囁きに耳を傾けていたマグナダインは、最初気の毒そうな顔をしていたが、遂には納得したのか、引きつった笑顔で、アインに語りかける。


「分かった、ちょっと感触を確かめさせて貰おうか」


「おおおおお!? 本当か、マグナダイン殿! 是非我の感触を味わって下さい!」


「その言い方止めろ。横の脳内ピンク吸血鬼が鼻血吹いてるから」


 美青年のアインが男臭いマグナダインに、自分の感触云々の台詞を言った途端、カミラは鼻血を流して恍惚とした表情で地に倒れ伏した。…誰も介抱しようとしなかった。


 マグナダインは尻尾を振らんばかりに興奮しているアインから、若干嫌そうに半身たる片手半剣を受け取る。そして片手、両手で縦横に振り回し、斬撃、突き、と剣を存分に振るう。


「アハアアアアアアア! 素晴らしい感触だ。力強いグリップ感といい、扱いの難しい片手半剣をこうも自在に扱うとは! ああ…、何だか頭がどこかに逝ってしまいそうだ…」


 アインの嬌声の様な声が響き、ブピッと音を立ててカミラの鼻からまた血が噴き出した。それが掛からないように皆は体を引く。お爺さんはその様子をオロオロしながら見ているだけだった。


 マグナダインは当初歪めていた表情を興味深げな顔に変えて、『魔人剣』を見ている。


「へえ、片手と両手で持った時に重量感や重心が変わっている気がするな。これはアインが補助しているのか?」


「あ、ああ。多少ではあるが我の魔力を使って扱いを用意にしている。だがそこまで自在には扱えんはずだが…。あ、そうだ! 我の能力はそれだけでは無いぞ!」


「ん、何かあるのか?」


「あるとも! 『茨盾ソーン・シールド』!」


 アインが呪文を唱えると、『魔人剣』鍔元から茨が幾条も現れる。そこにアインが小石を投げると、茨が小石を迎撃した。


「我が半身は茨を出現させて、主の身を守り、時に攻撃もする。『茨棘ソーン・スパイク』!」


 今度は茨に生えていた棘が十数本射出される。射出された棘は瞬間的に長い針の様に変化し、近くの木の幹に突き刺さる。


「このように遠くの敵も攻撃することが出来る! 更に我自身も戦闘力を持っているので、背後の敵を心配する必要も無い! マグナダイン殿の背中は我が守る!」


「マグナダインの『後ろ』を守る美青年……。う~ふ~ふ~…」


 不気味に笑いだしたカミラにお爺さんは心底怯え出す。見かねたスコットはカミラを引きずって荷物の場所に向かって去って行った。 


「後、茨からは薔薇の花をいくらでも咲かせる事が出来るぞ。それで付いた別名が『薔薇の魔剣』だ」


「なるほど、なるほど、よく分かった」


 マグナダインはアインの解説を聞きつつ、聖剣が封じられていたと言われる岩に近づく。




「でもやっぱりいらねぇや」




 そして、『魔人剣アイン』を岩に突き刺した。そして歩き出すマグナダインを慌ててアインは止めようと、自分の本体を抜こうとする。


「な!? これだけ使える剣なのに、まだいらないと仰るか!? 待って下さい、まだ見せて無い機能も有るんです……、フン! フン! フン! ダメだ、何故抜けん!?」


「あ、あの~、それはその昔聖剣が刺さっていたと言われる岩で、剣を一度刺すと選ばれし者以外抜けないと言う逸話があるんじゃ…」


 お爺さんが親切にも教えようと近づくと、アインはお爺さんに猛烈な勢いで近寄り、肩を揺らす。


「え、選ばれし者とはどんな者だ!?」


「わ、儂にもよく分からん! 剣が持ち主を選ぶとかそんな感じじゃないか!?」


 そこでアインはぴたりと体の動きを止め、去りゆくマグナダイン達の後ろ姿を見る。


「ま、マグナダイン殿! 貴方が選ばれし者に相違ありません! 我を抜いて行ってみませんかー!!」


「わりぃ、剣なら間に合ってるんだわ」


 後ろを振り返りもせずにマグナダインは歩き去って行った。バアルは気の毒そうな顔をしていたが、結局一緒に行ってしまった。




 後には乙女座りで手を伸ばすアインと、茫然としたお爺さんが残された。


「マグナダイン殿、カムバーーーーーック!!」





 後ろの森から響く悲痛な声を聞きながら、エミリーは感心とも呆れとも取れる感想を述べた。


「古代の魔法のアイテムでも変わった物があるのね」





遅くなって申し訳ありませんでした。こんな感じで更新が不定期になると思いますので、どうか気長にお待ち下さい。

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