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第1章:田中理沙から、高田良作への手紙

 「 拝啓(はいけい)


 高田良作様


 秋も深まり、ようやく冬の足音が近づいています。


 私の地元、ここ北海道の上士幌町(かみしほろちょう)でも、あと少しもすれば、粉雪(こなゆき)が舞う季節になります。


 ・・・良ちゃん、お元気ですか?


 その後、お変わりはないですか・・・?


 あなたと別れてから・・・

 

 もう33年になるんですね。


 私は、あれから父の家業を継ぎ、農家の跡取(あとと)り娘として、毎日、仕事に精を出しています。


 でも、ジャガイモやテンサイの栽培はやめて、いまは、酪農(らくのう)をやっているの。


 乳牛の飼育よ。


 その子たちに食べさせる、牧草も、自前(じまえ)で作っているわ。


 ・・・父の健一が亡くなってから、もう10年。


 母と私と、新しく雇った従業員で、切り盛りしているのよ。


 ・・・ねぇ、良ちゃん。


 あれから、美絵子ちゃんとはどうなったの・・・?


 もう、結婚して、お子さんは大きいの?


 実はね、良ちゃん。


 私・・・


 あれからずっと、独身なんだ。


 誰とも交際も結婚もしなかった・・・いえ、できなかったの。


 良ちゃんのことが、どうしても忘れられなくて・・・。


 良ちゃんの声・・・いますぐ聞きたい。


 良ちゃんにまた会いたい。


 美絵子ちゃんには、申し訳ないと思うんだけれども・・・。


 下に、いまの私の実家の連絡先と電話番号書いておいたから、良ちゃん・・・私に、手紙でも電話でもいいから、連絡してほしいの。


 お願い、良ちゃん・・・。


 北海道上士幌町XXX △△△ ○○○ー▲▲▲


 田中理沙


 敬具 」

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