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学園戦隊ボウエイジャー  作者: 水嶋りこ


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第4話:放課後の特訓(後編)

翌日からも訓練の日々が続く。

 

「ヤムヤムって、月に一回くらいしか出ねーからな」

昴の言葉に、若葉が絶望的な表情を浮かべた。

「じゃあそれ以外、特訓ってこと…!?筋トレ部じゃないですか!」

 

「ヒーローがもしもに備えて体作るのは当たり前でしょ」

泉も涼しい顔で言う。


「防衛部って、モンスター出ない日は暇だと思ったのに…。モンスター出ても五人で倒すなら、一人くらい手を抜いても大丈夫だと思ったのに…!」

と若葉は不満たらたらだが、もちろん気にする先輩達ではない。


「今日も頑張ろうねっ!」

六花も元気いっぱいだ。



一年が筋トレと走り込みをしている間に、二年は実戦形式の訓練をしていた。


昴がボウエイランサーで繰り出す攻撃を、泉がボウエイシールドで防ぐ。

その奥で千代はボウエイスナイパーの射撃訓練を行っていた。


防衛部では全員共通のボウエイソードの他に、それぞれ個別の武器が支給される。

一年の個別武器は、活動の様子を見た上で適性にあったものを先輩たちが選ぶのだと聞かされた。


練習とはいえ、迫力のある立ち回り。

「先輩たち、かっこいいね!」

「すげー」

二人とも筋トレをしている手が止まり、つい見入ってしまう。


基礎トレーニングが終わる頃、昴が二人の元にやってきた。

「後半は六花は泉と実戦訓練だ。ソードの扱いに慣れろ」

「わぁっ!泉先輩、よろしくお願いしますっ!」


「若葉は、外周な」

さらりと告げられた一言に、若葉は思わず身を乗り出した。

「なんで俺ばっかり!!」

「お前は体力が無さすぎるからだ」

「無理ですー。俺は陸上部じゃないんで、そんなに走れませーん」

ふい、と顔を背けた。

その視界の端で、赤い閃光が弾ける。

恐る恐る確認すると、ボウエイスーツに身を包んだ昴が、ソードを握っていた。

 

(待って、なんで変身してるの?え、なんでソード??)

 

「グダグダ言ってねーで、さっさと行け。あぁ、あと変身しとけよ」

「なんで?」

「ボウエイスーツなら、サボったら容赦なくぶっ飛ばせるからに決まってんだろ」

さも当然のことを告げる口調だが、発言はとんでもない。

 

「仲間をなんだと思ってんですか!」

昴とはいえ、本気で斬り掛かる訳がない。

さすがに学校内でそんなことをしたら問題になるはず。


……そんな理性より、本能的な恐怖が勝った。

 

即座に変身して背を向けた若葉の後を、昴がスピードをあげて追いかけていく。


「あはは。楽しそうだね」

そんな二人を笑って見送ってから、泉は六花に向き直った。

「さて、こっちもはじめようか。まずはソードの構え方からやろう」

「はいっ!お願いしますっ!」

六花は笑顔のまま、ソードを構えた。



ふらふらになりながら校庭に戻ると、六花たちはまだ訓練中だった。


泉が見本を示し、六花は真剣に頷く。

ソードを振るうたびに修正が入るが、六花は諦めずに何度もトライしている。

 

しばらくすると、六花が嬉しそうに飛び跳ねた。褒められたんだろう。


まだ入ったばかりなのに、六花はどんどん先に行く。

この数日間で、若葉はまだ筋トレと走り込みしかしていない。

応用を教わる六花と違い、まだ訓練で武器を握ってすらいない。


「若葉くん、一緒に帰ろっ」

「あーごめん。部室に忘れ物したから、先に帰ってて」

なんとなく顔を合わせるのが気まずくて、断った。


練習で先を越された上に、一緒に帰るのまで逃げるとか。

 

(俺、情けねー……)



特に用事はないまま部室に向かう。

ドアを開けようとして、施錠されていることに気づいた。

 

部室に用があると言ったのは、断るためのただの口実だった。時間を潰して帰ろうと思っただけで、部室に用があったわけではない。


帰ろうとしたら、廊下の先から千代が走ってくるのが見えた。


「すみません。部室を施錠してしまったので、今開けますね」

「あ、いいです!特に用事なかったし!……あ」

部室前まで追いかけてきてくれたのに、この回答は間違えた。

部室に来たのはただの口実だと、千代にも分かったのだろう。

 

「そうですか」

だが千代はそれ以上は聞かなかった。


「あの、千代先輩」

「はい」

「……なんで俺を防衛部に誘ったんですか?ヤムヤムとの戦いも訓練も、全然ダメなのに」


防衛部に入部したと言ったら、周りの目が変わった。

『お前、すげーじゃん!』

と数えきれないほど声をかけられた。

 

『防衛部ってそんなにすごいの?』

六花とペアだから。そんな軽い気持ちで入部した若葉は、周りの反応に驚いた。

 

『いや、すごいでしょ。防衛部っていえば叡徳高校の顔じゃん』

『メディアも出てるし、就職や進学でも有利って聞くし』

『OBも一流企業ばっかで現役と関わり深いんでしょ?いーなぁ』


活動初日に気が重かった理由は、昴の悪名だけじゃない。


自分はそんなヒーローなんて、向いてないと思ったから。


「私にも分かりません。優秀な立候補者は他にもいたのに、昴がどうしてもあなたがいいと譲らなかったんです」

「昴先輩が?……え、なんで?」

思い当たる節はない。


六花が指名されるのは分かる。

ヤムヤムとの戦いでも絶対に諦めない。基礎トレーニングも前向きでやる気に溢れていて、実戦訓練も先に進んでいる。


「昴は、あなたに期待してるようです」

「だから、俺のどこに期待する要素があるんですか!?」

「それは昴に聞いてください」

千代にも理由は分からない。


新入部員の選出は、代々二年の仕事だ。

当時の部長と副部長は、選出方法も人選もすべてを昴達に一任した。

決定するまでの間、一切の口出しをしなかった。


若葉を推薦したのは昴だ。


当然、理由を聞いたが、

『なんでだろうな……見てて、ヒーローだと思った』

昴自身もうまく説明できない様子だった。


能力が高い人も、やる気がある人も他にたくさんいる。

それでも若葉とボウエイジャーをやりたい、と。


数日間若葉を見てみたが、千代はまだヒーローだと思えない。

 

だが、ひとつだけ確信しているのは、昴はいい加減な気持ちで選ぶ人ではないということ。


そして、若葉と六花に決まって当時の部長に報告した時。

『この子たちを選んだのは意外だけど、いい人選だね。二人ともヒーローの素質は十分ある』

あの人はそう言っていた。


彼の観察眼は、昴や泉の遥か上をいく。

昴とあの人がそこまで言うのなら、若葉に何かあるのだろう。


その言葉の意味が分かる日が、来るだろうか。


「ヒーローの素質〜??なんだろ……あ、もしかして、成長枠みたいな意味……?」

「さぁ。楽しみにしていますよ」


頭を抱える若葉を見て、千代はそっと笑った。



「若葉くん、大丈夫かな…」

部室に戻った若葉を待つかどうか六花が迷っている。

 

「千代ちゃんが行ってるから、心配いらないよ」

「ほっとけ。大丈夫だろ」

 

「……そうですね。若葉くん、すごいしなんでもできるし、あたしが心配することなんてないですよね!」

よしっといつもの笑顔に戻る。


「若葉ってすごくて、なんでもできるんだ?」

泉が意外そうに言う。

泉もまた、若葉を防衛部に入れた理由が分かっていない。


「そうなんです!あたし、養成所で全然授業についていけなかったんです。授業だけで覚えられないし、実技も本当にギリギリの落ちこぼれで……」

六花が肩をすくめる。


「若葉くんにいつも教えてもらってました。授業の復習や実技の自主練にも付き合ってくれたんです。自分の勉強だってあるのに」


そしてまっすぐに昴と泉を見上げる。


「若葉くんがいなかったら、あたし防衛免許取れなかったと思います!」


「お互い様じゃねぇの?」

「え?」


昴は訓練を思い返す。

 

若葉の性格上、六花がいなかったら途中で投げ出している可能性が高い。

続けたとしても試験前に詰め込んで、試験が終わればきれいさっぱり忘れていただろう。

 

だが、デビュー戦で見た若葉は、基礎の知識や技術がちゃんと身についていた。

付け焼き刃ではなく、六花の練習に付き合っていたからだろう。


「六花から見て、若葉はヒーローに見えるんだ?」

泉が尋ねると、六花は迷わず頷く。

 

「ヒーローですよっ!もちろん先輩たちも!あたしも、早く誰かを助けられるようなヒーローになりたいなぁ」

 

その目はキラキラと輝いていた。


 

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