↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園戦隊ボウエイジャー  作者: 水嶋りこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/31

第3話:放課後の特訓(前編)

デビュー戦の翌日。

放課後のグラウンドに、防衛部の五人の姿があった。

今日はモンスターが出現していない。


つまり、特訓日だ。


「戦闘と言えばまずは体力。体力と言えば走り込みだ。じゃ、行ってこい」

「……え、走り込み?聞いてないんですけど……」

若葉はげんなりした声を出す。


若葉はスポーツは好きだが、部活には入っていない。トレーニング全般が大嫌いだからだ。

遊びでやるのは楽しいけれど、そのための練習が耐えられない。

体育の授業ではいつもバレないように手を抜く。


ゆるく楽しく適当に。

それが若葉のモットーだ。


「何だ、その顔」

「いや、走り込みとかちょっと……俺、体力ないし……」

「何言ってんだ。体力ないから、つけるんだろ?」


すでにやる気をなくしている若葉の横で、六花が元気いっぱいに手を挙げた。


「はーい!部長!何周走ればいいんですか?」

「よし六花、やる気満々だな。とりあえず10周」

「やったー!」

「やったー!?」

若葉の悲鳴がグラウンドに響く。


結局、若葉は7周でバテて地面に倒れ込み、六花は10周を走り切ってまだ笑っていた。


「ねぇ若葉くん。走ってるとさ、風が気持ちよくて楽しくならない?」

「ならないよ……っ!?」

若葉は地面に突っ伏したまま呻く。


「次、六花は腕立てと腹筋100回な」

休憩してしばらくすると、容赦のない指示が飛んだ。

「はーいっ!」

 

「若葉はさっさと起きろ。メニュー倍にしてやろうか?」

「休憩、5分じゃ回復しないですって……」


「スタミナねーな。この後の筋トレとシャトルランどうすんだよ」

呆れたような昴の声に、

「は?無理無理無理!死んじゃうって!」

若葉が思わず跳ね起きた。


「その元気があるならやれるな。あんまりグダグダ言ってると1時間毎に手に重りを巻いてくぞ」

笑ってはいるが、脅し文句がいちいち冗談に聞こえない。


「俺は褒められて伸びるタイプなんですー。ムチじゃなくてアメください」

「分かった。最初にマックスの重りをつけて、クリアする毎に減らしていけばいいか?」

「それはアメって言わないから!!」


昴の場合、本気でやりかねない。

身の危険を感じた若葉は、本当に昴がアクションを起こす前にその場を離れることにした。


不本意ながらグラウンド残り3周をゆっくり走るのが、一番休める気がする。


「きっつー……」

走り切って、六花を見る。

「きつすぎて笑えるー!腕プルプルしすぎっ!」

と楽しそうに腕立てをやっていた。

なんで腕立てを楽しそうにできるのか、まったく分からない。


そのまま昴に視線を向ければ、泉と何か話しているところだった。

よし。こちらに来る前に、さっさと適当に終わらせてしまおう。


若葉は急いで腕立てに取り掛かった。


「……26、27、28、39、40……」


昴が近づいてくる。


「今、何回まで行った?」

「42ですよっ!」

「実際には32回です。28から39まで飛びましたから」

背後から千代の声がした。


「え、千代先輩!?いつからそこに……」

後ろにいたことに、気づかなかった。

「最初からいましたよ」

表情を変えずに、淡々と千代が答える。


「千代に監視を任せて正解だったな。ちなみに、真面目にやった回数は?」

「7回ですね。あなたの視線がこちらに向いた時と、六花さんが手を振った時です」

「8回目からやり直せ」


思わず若葉が凍りついた。


「え、嘘だろ……」

「千代。次サボったら、カウントはゼロからな」

「分かりました」

「横暴だ!!」

喚く若葉を無視して、昴は戻っていく。


「ひどいっ!千代先輩も部長の味方なんですか!?」

「どちらの味方でもありません。今回は、昴が正しいです。手を抜いても効果は得られませんから」


「……くっ…」

監視されている以上やるしかない。

ふてくされた態度を隠そうともせず、若葉が8回目から仕切り直す。


「もう無理!手がしびれたんで、治るまで休憩していいですよね!?」

ありとあらゆる理由をつけて、千代に訴えかけるが

「若葉さん、あなた……言い訳の引き出しだけは多いですね」

冷ややかな回答しか返ってこなかった。


退部したい。

腕立ての間中、頭に思い浮かぶのはそれだけだ。


でも退部したら20万の取り立てが待っている。

「もーやだ……」

泣き言を言いつつ100回を終わらせると、若葉は今度こそ地面に転がった。


昴に脅されようが何言われようが、絶対にテコでも動くものか。

もう十分頑張った。


「若葉くんっお疲れ様!休憩しよ」

汗だくの六花が、満面の笑みで駆け寄ってくる。

差し出されたスポーツドリンクを、若葉は一気に流し込んだ。


「生き返るー!ありがと」

「泉先輩からだよ~!」

六花の笑顔に、少しだけ疲れが取れた気がする。


「六花はどこまで終わった?」

「腹筋100回終わったところ!」

「マジで?」

「うんっ!今日はこれで終わりだって。だから若葉くんの腹筋応援するね!!カウントは任せて!」

キラキラと輝くオーラを纏わせて、六花が満面の笑みを浮かべた。


「がんばれがんばれ、若葉くんっ」

「39、40!若葉くんかっこいい!」

「68、69、70!わぁ、すごいね、ゴールが見えてきたよっ」


六花のカウントとエールは止まらない。

こんな間近で美少女に応援されたら、若葉も手を抜けない。

やる気はなくても見栄だけはある。


「ねぇ、昴。あれがアメ作戦?ムチよりキツくない?」

その様子を眺めながら、泉が素直な感想を述べる。


腕立てではギリギリまで手抜きをしていたのに、腹筋はハイペースできっちりとこなしている。


「そうだな。次から筋トレは六花とペアでやらせるか」

昴は満足そうに答えた。


そして。

「100ーーー!!おつかれさまー!!すごいよ~!!」


本日の訓練、無事終了。


若葉は地面に寝転がると、満面の笑みで飛び跳ねる六花を見上げた。


……同じメニューで、なんでこんなに元気なんだよ。


若葉には理解できなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。