違和感
間合いまで接近し、目の前まで迫った少年の拳銃の銃身を右手で掴んで銃口を身体から逸らし、引き寄せて左手の裏拳を顎にくらわせ、同時に足を払い転倒させた。
今の状況は相手の動揺と目の前の敵に対して恐怖と焦りで、統率が取れないのは彼らが大人でも同じだろう。
まるで社交ダンスのように一人の手を掴み、手を取り合って踊るかのような動きで周りを巻き込みながら振り回して投げ飛ばした。
拳銃からナイフに切り替えた子もいるも結果は同じだった。
武器を手にしても、武器を抜かない素手相手にまったく優位性を持たなかった。
タチアナを横をすり抜け、出口へ抜けることも許されなかった。
そして、しばらくすると子供たちは全て無力化されていた。
病院送りになれど、死者や後遺症が残るレベルでの負傷者はいなかった。
子供たちにはやられたフリすら、できないダメージを負わせている。例え、不意打ちしようにも気配に敏感な彼女を欺くのは難しい。
だがしかし、それでもイレギュラーが存在した。
立ち上がる少年がいた。首をコキコキと鳴らし、獰猛な獣のような眼光でこちらを見ている。
見た目は10代後半の少年であるが、こちらを見る少年の視線にタチアナはなんとなく下劣な男性特有の女性を品定めするかのような舐めるような視線を感じた。
子どもたちに混じって異物が混じっているなんとなくの違和感こそ感じていた。しかし、容姿は完全に少年であり、他の子供たちと同じく路上生活者のようなみずぼらしい服装をしており、見た目だけであればまったく違和感がなかった。
乱戦のなか背後から、その少年に襲われた。咄嗟に感じたその違和感で反射的に不殺の加減しても成人男性を一撃で失神するレベルの後ろ蹴りを放ってしまった。
不殺の制限抜きであれば、胴体にあたれば臓器は破裂し、首にあたれば骨は折れて首はへし曲がる程の威力で常人ならばまず命はないだろう。
死にはしないが、子供相手には威力の高い一撃をくらわせた。本来なら、場慣れしているタチアナにとっては問題行為にあたることである。
それ程の実力と信頼を持つ彼女にとって、その少年は異物であった。
なぜ、力を制御し、加減出来なかったという自責。
なぜ、制御せず、命を断つ一撃を放たなかった後悔。
二つの相反することを思いながら、タチアナは平然と立ち上がった少年と対峙した。




