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「対象のエスケープバック発見しました」


 部下からの報告が入る。


「よし、彼の処置を済ませた後、『葬儀屋』に連絡しろ」


「ハッ」


 敬礼と共に行動に移る部下を確認した。手出しができない位置にいながらも少年を救えなかったことに後悔はあった。だが、引きずっていては次に進まない。慣れということに若干の辟易を覚えながら、思考を切り替える。亡くなった者へできることは行動で示すしかない。彼女の考えだ。いくら後悔しようと時は戻らない、なら自己満足かもしれない。それでも、やれることを精一杯することが、死んだ者へ唯一できることだと。


 最期に約束をした。それを違えるわけにはいかない。


 少年からもたらされた情報は、想像以上のものだった。顧客リストや内部資料などには、日本国内の人身売買のルートどころか、強化人間の非合法な人体実験を行う研究機関に繋がるものであった。


 目標事態は変わらない、東アジア公正貿易株式会社と関わりのある会社に攻勢にでることだ。本来ならば、港で管理している倉庫に非公式にガサ入れを行う。アジア有数の大企業で、権力者に顔がきく故に潰すとまでいかないが、牽制した上でこちらに有利に協議を持ち込むまでにしかならない。少なくとも、人身売買の被害者は救え、上層部はいくらか切り捨てられるだろう。しかし、法的または、社会的な制裁は彼がやったことに比べれば軽いものだろう。


 各国がなかったこととしていた大戦時に密かに行われた人体実験が、さらわれた子供たちを使って非人道的な強化人間の研究が行われている。


 その証拠になる資料が少年のおかげで手に入ったのだ。


 日本国外であれば、こちらの領分で動きやすい。一時的にはトカゲの尻尾切り程度の損害しか与えられないが、ツケを払わせる糸口を見つけた。


 今の所、強化人間という貴重な実験サンプルが逃亡したことに目がいき、データを盗られたは気づかれていないようだ。情報にある研究施設に奇襲をかければ、さらに追い込むことができる。


 ここまで大事になるとは想定外であった。挨拶がてら、打ち合わせをして帰る予定だった。それが思わぬ大仕事になった上に、今手をつけている仕事に繋がっている。なんとも奇妙な縁だろうか。


 そして、今回の始まりであるタチアナからエレンに電話が入った。


 

 

 

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