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君の名は?

 話を静かに聞いていたエレンが口を開く。


「人にチャカ向けて殴られるだっただけ、感謝しろ」


「あの時はゴリラに殴られたかと思った。そのあとに、まさか、その相手に営業かけられるとは思わなかった」


「こっちも仕事だしね。血のつながり関係ない家族関係は好きよ」


 どこか物憂げなエレンの笑顔に驚き、顔に出てしまった。彼女の今まで感じた印象とは違い悲しげでありながら優しげな表情だった。


「なに?その顔?」


「いや、話には聞いたあんたの印象とギャップがあって…」


 敵対者を徹底的に叩き、権力者であっても報いを受けさせる。大国の精鋭部隊と遜色ないチームを率いる狼の女王。


「まさかと思うけど、人を獰猛な獣とでも?」


「…」


 下手に答えると焼け石に水だろう。沈黙を持ってこたえる。


「はぁ…わたしらはお前のように孤児が多い。そういった奴らを束ねてるんだ。擬似的だろうがごっこだろうが家族だと思ってるんだよ。知ってるだろうが、父…先代もわたしと血のつながりはないよ」


「そうだったな…」


「まあ、それが親愛だろうが友愛だろうが…恋愛だろうが嬢ちゃんはおまえにとって大切な人なんだろうね」


 顔が熱くなる感じがした。言葉にすると気恥ずかしい感じがした。


「まあ、そうだな…」


 書類の確認の手が止まり、承諾の記載をしていく。それを見たエレンは聞く。


「そういえば、名前はどうする?今まで使った偽名は余計なトラブル起こさないように使わないとして」


「組織で呼ばれたのは番号とかコードだったからな…」


「この際、せっかくだから自分で好きな名前つけたら?」


「名前か…」


「指紋、網膜とるしまだ時間はあるから決めな。血液はあとでこの施設からもらうからいいとして…受け入れの準備はしとくから…」


 カバンから、各生体認証を登録する端末を取り出す。


「刑務所に入るみたいだな」


「わたしらは所詮人殺しだから犯罪者でしょ?」


 あっけからんと答える。一般人ならギョッとする発言だろう。


「とはいえ名前ねぇ…」


「銃由来はやめろよ。部下が元の名前がわからないから、名前を自分でつけたら何にしたと思う?タチアナ・カラシニコフだぞ…」


 おそらく身近にあった突撃銃からのファミリーネームをとったのは容易に想像できた。


「おっおう…」


「本人認識と証人保護プログラムみたいに今とは別人の設定で暮らすからな。一応名前の変更はできるが面倒だ」


「とはいえ、いきなり名前か…」


「しょうがない、生体認証で仮登録しとくから考えといて」


「了解、いつまで」


「この後、大仕事するから一週間後くらいかな。約束の嬢ちゃんの件はそれより早いから心配するな」


「わかった、恩にきる」


「その恩は将来的に返してもらうから覚悟しろよ」


「怖いなおい」


「わたしにじゃなくていい、平穏に暮らしながらあんたらみたいに困っている奴を助けてやればいい」

 





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