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契約はよく確認を

 大戦時の負の遺産のひとつである強化人間は扱いはいろいろな意味で難しい、どんな力を持っているか、そもそも安定制御できるか、戦争の被害者である立場等が関係している。


 その為、彼らはある医療設備のある施設に収容されていた。


 ごたごたと話し合いにつぐ話し合いをひと段落させたエレンが面会に向かう。門蔵の仲介で朝いちにアポを取り、手続きも万全だ。


 受付で案内を受けて、部屋に向かう。


 ドアを三回ノックをし、はいと返事を返ってくると受付でわたされたカードキータッチして開ける。ドアには逃亡防止用のセンサーが確認できた。部屋自体は至って普通の入院患者の個室といった内容でベッドにナースコール、テレビなどの備え付けが確認できる。壁から床、カーテンまで真っ白の色で埋め尽くされている。


「こんにちわ、今回は銃を向けられずにお話ができそうね」


 少年の容姿は、小説や漫画にある月並みな表現だが年齢的にも普通の男子高校生に見える。街中で歩いても特徴がとらえづらく、有象無象の男子高校生としての印象しか感じないだろう。


「わるかった…あの時は必死で…」


 彼は治療の為にベッドに横たわっている。一応保護された扱いの為、拘束はされていない。やれやれと言った表情だ。顔には軽微だがいくつかアザと腫れがあり、身体には包帯がまかれ、ツーンとした湿布の匂いがした。


「元気そうで安心した、近くに座っても?」


「ああ」


 ベッド近くの椅子に座りエレンは、彼に名刺をわたす。


「あらためて、私はC&Sの代表、エレンと申します」


「知っているよ。あの孤児を集めた集団」


「惜しい、一般社会では生きづらい悪ガキたちも付け加えると正確かな」


「それなら、おれらの勧誘に?」


「そうだね。一応、別途で社会復帰活動も進めてるからね」


 カバンから、クリアファイルに挟まったパンフレットや資料を取り出す。


「今現在、この状況で必要?」


「選択肢はあるにこしたことないんじゃない?それにいまだに意識のないあの嬢ちゃんの件もある」


 彼はなにかを見透かしたような眼差しに身構える。


「…なにか、あいつの心臓の件でいい話でもあるのか?」


「きみの持ってるカード次第かな、正規で心臓の問題を解決するとなると時間がないでしょう」


 今現在、ある程度の身の安全は確保され、設備が整った施設に保護されている。しかし、彼が身の危険を冒してまで助けた少女は未だに意識が戻っていない。その話題にさっと顔色を変える。


「例えば、取引相手のリストや商品のデータのコピーをおれが持っているとしたら?」


「お姫様救出あとにエスケープバックの用意があるかなと思ってね…そういったの持ってるの?」


 失言をした。余計なことを口走ってしまった。具体的な物を出さずにぼかせば、変に情報を与えずに有利に話せたのではないかと焦る。


「だったら?裏で心臓でも融通してくれるのか?」


 それでもカードは持っている。きれいごとを言ってなんでも正当化してかっさらう国家の連中より、こういった奴らの方が話はできるのではないかと思い、そのまま続ける。


「それは、被害者がいる話だから承諾はできない。一応、線引きはしているつもりよ。ルールがなければ獣と同じって言うでしょ」


「それなら、話は終わり」


 ただのカマかけだけか?とガッカリする。なら、あとは知らんふりしつつ、チャンスを待つしかない。彼女の生命維持がどれだけ持つかわからないが、どこかにチャンスがあるはずだ。最悪、ここから抜け出して、所属したさらに上の組織から心臓を得るなり、用意させるように動く必要がある。


「代案がある。少なくとも一般社会に復帰する分には問題がないけど、どう?」


 ビジネスバックから別の書類を取り出して、ある案を説明した。













 説明を受けた。彼は少し無言で考える。


「保証は?」


「先払いでどう?流石に成功かどうかは保証対象外だけど」


「そのかわりにすぐにできるのだよな?」


「ええ、来日して思わぬツテができてね。費用もモノも融通できる。非公式だけどね」


「なんとかなるんだよな?助けられるんだよな?」


 思わず、エレンの肩を両手で掴む。


「さわるなら、あの子にしてくれ、みだりに女性の肌に触るなというのは教わらなかったのか?」


「ごめん」


 エレンは着衣の乱れを治しつつ、こう切り出す。


「了承ということでいい?」


「ああ、多分今はそれしか確実な方法はないと思う」


「わかった。それらの書類をお願い、どちらの社会にも通用するやつだから」


「書く前にひとついい?」


「なに?」


「もし、約束を破ったら?」


「こっちは前払いだから、そうはならないけど、そっちが違えたら二人はこちらの所有物になるだけだよ」


 苦笑いを浮かべながら彼は、書類の隅々まで確認した上で記載するのだった。



 


 

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