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終末の境界線  作者: 5ion
2章 過去の軌跡
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2章第3話 リゾートと水着

 リゾートへ行く日、早朝に集合したソラ、ウミ、エマ、ティナの4人。キャンピングカーの中はいつもより荷物と人が多いので狭く感じる。今日のウミはいつになくテンションが高い。ウミ、エマ、ティナはそれぞれオシャレな服に身を包んでおり、いつも通りのスタイルのソラはどこか浮いているような気持ちになる。


「さーて、出発しよう!」


 ウミが運転席に座る。今日もキャンピングカー(相棒)の運転を譲る気はないらしい。ソラは助手席に腰をかけ、ナビを設定する。目的地はグリッド129にある、ソルティス・リゾート。順調に進めば昼頃には着くはずだ。


「あたしが運転しようか?」


 ティナが運転席のウミに向かって声をかける。ウミは首を振る。


「大丈夫、うちに任せて」


「そう? 疲れたらいつでも代わるから言ってね」


「うん、その時はお願いね」


 ソラはちらりと運転席を見て苦笑いを浮かべる。それは、ウミがこのハンドルを譲ることはないことを知っていたからだ。ウミがアクセルを踏み込む。キャンピングカーが静かに滑り出す。エマとティナはソファに座って外を見ている。窓の外に広がるビル群が流れていく。車は人造の森(ビル)の隙間を進み、グリッド間高速道路に入った。過ぎ去る車とビルを眺めていると見覚えのあるグリッドに入った。グリッド129、遠望の縁があったグリッドだ。ここは観光のための施設が多く建っている。下道に降りると街並みが華やかになる。観光客が多く人通りや車が増え、高速道路と比べて車の動きがゆっくりになる。

 華やかな街並みの中に一際目立つ豪華な建物が目に入った。広大な大地に立つ白亜の建築物。石造の重厚な外壁に連なるアーチ状の窓。その上にはとんがり帽子を被った塔がいくつも立ち並んでいる。その見た目は大昔、大(・)地(・)に建っていたと聞く城のようだった。そしてその建物の正門には“ソルティス・リゾート”と刻まれている。その圧倒的な存在感に誰かが息を呑んだ音が聞こえた。キャンピングカーは駐車場に入り、停車する。荷物を持ってエントランスへ向かう。庭園には季節の花々が咲き誇っており、真ん中の噴水が日の光を反射して輝く。威風堂々とそびえ立っており、細部にわたって繊細な装飾がなされている。エントランスに入ると、豪華なシャンデリアと整った身なりのスタッフが出迎えた。


「ラプターアイ様ですね、ようこそお越しくださいました。ただいまオーナーをお呼びします」


 スタッフはインカムに話しかける。


「では、お部屋の説明の方をさせていただきます。スイートルームを2部屋ご用意しております。リビングルームとベッドルームが独立しており、夜には窓から美しい夜景をご堪能いただけます。さらに専用のバルコニーとジャグジー……」


 淡々と部屋の詳細が説明される。後半の説明はソラの頭には残らなかった。ウミとティナは目を輝かせてその説明を聞きいっている。


「こちらのルームカードキーは全ての施設に無制限にアクセス可能となっております」


 カウンターに4枚の黒いカードが置かれる。マットな質感のカードはどこか高級感を感じる。無制限のアクセスカード、これ1枚でいったいいくらのお金が必要か、考えるだけでゾッとする。さらにカードキーの説明が続く。一通り説明が終わった頃、見覚えのある女性が現れた。シワひとつないスーツに身を包んでいる女性、彼女こそがこのソルティス・リゾートのオーナー、セレナ・ソルティスだ。


「ようこそお越しくださいました。改めて先日は助けてくださり、ありがとうございました。お礼と言ってはなんですが当リゾートでのひと時をお楽しみください」


「ありがとうございます、存っ分に楽しませてもらいます!」


 ウミの礼にセレナは微笑みを返しつつ、何かあれば遠慮なくスタッフに声をかけてほしいと伝え、再び軽く礼をして部屋を後にした。その足取りは早歩きで、手は空中を慌ただしく動く。その動きから彼女の忙しさを感じた。

 一行はまずは部屋に向かい、荷物を置いてから再度集合することにした。部屋割りはソラとウミが同室、ティナとエマが同室になった。

 ウミが扉にカードキーを当てると鍵が開く。ドアの奥には広々としたスイートルームが待っていた。高級感あふれるインテリアに、どこか落ち着いた色合いの絨毯が敷き詰められている。天井も高く、部屋全体に開放感が広がっていた。ウミの目が輝き、思わず小さな歓声が漏れる。彼女はカバンを雑に置いて、弾んだ足取りで室内を巡り、見つけたソファに腰掛けてみたり、厚手のカーテンをふわりと開けたりして、部屋の隅々まで目を輝かせながら確認している。ソラはカバンを整えながら、部屋を軽く見回す。その目は窓の外に向けられた瞬間、思わず息を呑んだ。窓の向こうには陽光に煌めく絶景、観光都市が絵のように並んでいる。


「わぁー、綺麗」


 ウミも絶景に釘付けになっている。どこまでも広がる空に、キラキラと輝く街並み。しばらくの間、二人はその景色を堪能し、特別な時間を味わうようにその場に立ち尽くしていた。


✳︎


 部屋で一息ついたソラとウミはティナとエマと合流して、まずはプールに向かうことにした。

 プールは屋内に作られた巨大なものでソルティス・リゾートの目玉の1つだ。普通のプールだけでなく、流れるプール、ジャグジーに複数種類あるウォータースライダーに泡のプールなど様々なプールが用意されているらしい。

 水着に着替えてプール内で合流する外になる。ソラはさっさと新調した水着に着替えてプールサイドに出る。透明な水が輝くプール、そのすぐそばにはドリンクスタンドが設置されており、色鮮やかな飲み物が目を引く。このリゾートのあまりの豪華さ、贅沢さにどこか現実味を欠いているように感じた。その戸惑いは足音と声によって中断された。


「ソラ(ホーク)、お待たせー!」


 ウミは紺色に白のフリルがついたオフショルダーのビキニを身にまとい、快活な表情で手を振っている。エマはこの前選んだ水色のワンピースタイプの水着とオレンジ色のチョーカーを見に纏い、ウミのそばに立っている。ティナは白のクロスホルタービキニを着てプールの方を見ている。

 ウミはソラの前まで歩み寄るとくるくると回った。


「どう? 似合ってる?」


 笑顔で訪ねてくるウミ。ソラは


「ああ、すごく可愛いよ」


と返した。


「えへへ、ありがと」


 ウミは満足したように笑みを浮かべる。


「エマもティナもよく似合っている」


 エマは安心したような表情を浮かべた。それに対してティナはふんとそっぽを向いて


「別に聞いてないけど」


と返した。


「さ、みんな! 泳ぐよー!」


 ウミはエマとティナを引き連れてプールへと小走りで向かっていった。

 ソラはドリンクを片手にプールサイドのリクライニングチェアに腰掛けて視界の端にはいつものSNS(インターピア)を表示させながら目の前の光景に目を細める。プールで遊ぶウミ、ティナの姿が水面の煌めきの中で生き生きと輝いている。ウミは元気いっぱいに水しぶきを上げながら泳いでいる。その隣ではティナが挑発的な笑みを浮かべて、ウミに負けじとさらにスピードを上げているようだ。2人の間に自然と火花が散っているかのようで、まるで互いに競い合っているかのように見える。

 一方で、エマはプールサイドから足だけ水につけて様子を窺っていた。競争がひと段落し、エマが泳いでいないことに気付いたウミが手招きをした。エマはそれに引き寄せられるようにプールに全身を入れた。

 次に見た時には3人が楽しそうに水で遊んでいた。

 しばらくして、ウミはエマの手を引いてウォータースライダーの方へと歩いていった。ティナは2人から離れ、ドリンクを持ってソラの隣に座った。ストローに口をつけてから、離れて小さく見えるウミを見て、一言


「あの子って、後方支援がメインなのに元気すぎない?」


と発した。ソラは“確かに”と小さく笑いを漏らす。ティナの視線が彼に向けられる。


「……それに比べて、あんたは前線に出るのにこういう時はあんまり遊ばないのね」


 ティナは不思議そうにソラを見ていた。


「まあ、ウミ(イーグル)は昔からあんな感じだよ。振り回されることも多いけどその分元気も貰える」


 ソラは遠い目をして答えた。2人はしばらくドリンクを飲みながら、プールで遊ぶウミとエマを見守りつつ、リラックスした時間を過ごした。

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