1章終話 エピローグ
しばらく揺られた後、キャンピングカーが停車した。
「3人ともお疲れ様、うちがイーグルだよ。エマさんは初めましてだね」
ウミが運転席から離れてソラの隣に座った。ソラとティナはぐったりと机に伏している。アドレナリンが切れて疲労感と痛みが身体全体に覆い被さっている。それとは対照的にエマは特段疲れている様子はない。
「あー、疲れたわ」
ティナがふぅーと長い息を吐いた。
「本当、もう一歩も歩きたくないよ」
ソラがティナに同調する。
「あはは、2人は相当疲れているみたいだね。エマさんは平気?」
ウミは突っ伏したまま動かない2人を見て苦笑いをする。
「私は随分、楽させてもらったから平気だ」
「そういえばエマのこと巻き込んじゃったわね。何かお礼をしないとね」
ティナが思い出したように言った。ソラは顔を起こして首を縦に振り肯定する。だが、エマは首を降り
「侵蝕区域の外まで案内して貰ったんだ。それで十分だ」
と返した。ソラは冷静に今日の依頼を思い返す。奇襲の失敗から始まった予想外の出来事の連続。ファルターの襲撃にエマの救援。その後のサラとの死闘に物資奪取の挟み撃ち作戦。そのどれもが普通の仕事よりもはるかに大変だったことを実感させる。
「コアルインズとシャードと戦って、道案内だけじゃ足りないよ……お釣りを返さなきゃ」
ソラにとってこの規模の仕事をしてもらって道案内で十分というのは納得できなかった。エマがいなければ依頼の達成はおろかティナが死んでいたかもしれない。それの対価が侵蝕区域から出るための道案内だけではどう考えても釣り合わない。
「……んー、それなら、時折でいいからラヴェジャーとして私を雇って。私、あんまり名前が売れてないから仕事が少なくって」
ソラはその言葉に意外といった表情を浮かべた。彼女の実力は紛れもなく本物だ。正確な射撃に挟み撃ち作戦、隠れていたサラを見抜いた洞察力その全てが彼女の実力を証明している。共に戦ったソラにはそれが分かる。なのに、無名ということがにわかに信じられない。
「ってことはあたしの商売仇ってことね」
ティナが顔を上げてエマの方を見る。その顔はエマを揶揄っているようだった。
「いや、そんなつもりじゃ」
エマはブンブンと頭を振って否定する。その様子はエマが小柄なのもあってか小動物的な可愛らしさがあった。
「あはは、冗談よ、本気にしないで」
その様子に我慢し切れずにティナが笑い始める。ひとしきり笑った後、痛ててと呟きながら横腹を押さえた。3人が心配そうな視線を送る。ティナはすぐに脇腹から手を離した。
「僕らと一緒でいいなら喜んで」
そうソラが言うとエマは満足そうに頷いた。この日、4人は仲間という思わぬ収穫を手に入れた。
「この後はどうするつもり? よかったら送っていくよ」
とウミが提案する。
「この前のカフェまで送ってくれたらいいわ。荷物もあたしに任せて、今度はヘマしないで届けるから。近いうちにヴォルフから呼び出しがあると思うわ」
と言うティナに最初の頃のような不機嫌な様子は微塵もない。
「あのカフェね、了解。エマさんは?」
ウミはエマに視線を向ける。エマは少しだけ考えるような様子を見せた後、
「グリッド122の第2公園までお願いしてもいい? あそこで風に当たってから帰ろう思うの」
と答えた。
「うん、任せて。それじゃ、出発するから3人はくつろいでて」
そうして、長い長い1日は終わりを告げた。




