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終末の境界線  作者: 5ion
1章 鋼鉄の指令
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1章第17話 最後の手段

 突如、ソラの目の前にサラが瞬間移動してきた。完全に油断したソラはその突きを受け流そうとするが間に合わない。左肩に食い込む刃、鋭い痛みが走り、血が滲み出る。サラはそのまま攻撃することはせずにすぐに後方へと跳躍し、距離をとった。サラもまた爆発でダメージを受けてふらついている様子だったが、その赤い瞳は依然として鋭く、楽しそうな光を放っている。

 ソラは肩から流れる血を感じながら、痛みを無視して必死に後退し、サラとの間合いを広げた。サラはその間合いを詰めることなく次の一手を見極めようとソラの動きを注視している。胸部の傷に肩の傷、そのほか多くの細かい傷から流れ出る血がソラの体力を徐々に奪っていく。背中は爆発の余波を受けた影響で打撲したかのように痛む。彼女にも爆発のダメージは入っているはずだが、そんな気配は微塵も感じさせない。もはやソラの身体の状態で縮地を破る手立ては見つからない。うなだれ、諦めかけたソラの頭の中に古い記憶が蘇る。師匠との特訓の日々が。


——

「こんなの無理だよ」


 幼いソラが師匠から与えられた難題に頭を抱える。


「視点を変えろ、ソラ。それは本当に解決しなきゃいけないものか?」


 もう、顔すらはっきりと思い出せなくなりつつある師匠の声が頭の中で響く。


「師匠の言ってること訳わかんないよ」


 幼いソラはフンと、顔を背けた。

——


 ソラは左に据えられた機械刀のゴツい鞘を見る。取手のついた鞘が励ますように光を反射した。


「視点を変える」


 サラの瞬間移動は極めて強力だ。回避から攻撃に転じるクリスタの強力さと彼女自身の剣術が相まってその牙城は崩し難いものに感じる。その一方で1つだけ気付いたことがある。瞬間移動の最中は攻撃してこないのだ。攻撃されるのは決まって瞬間移動の後、ソラの目が彼女を捉えてからだ。もちろん、これは彼女が手を抜いている可能性も否定はできない。だが、今のソラはこの手がかりに縋るしかない。

 ソラは深く息を吐いて、刀を鞘に収める。その動きには決意が宿っている。彼は静かに居合いの構えを取った。その納刀の様子はまるでサラを誘うような様子だった。


「居合いか……面白い」


 サラは楽しそうに笑い、その挑発に乗る。彼女もまた、刀を鞘に戻し、居合いの準備を始めた。

 風が静かに吹き、張り詰めた緊張が二人の間に漂う。2人はジリジリと歩み寄り間合いを詰めていく。すぐに2人の間合いは攻撃範囲に入った。

 ソラは深く集中し、次の一瞬に全てを賭ける覚悟を固める。瞬間移動中に攻撃動作ができない制約があるのなら、居合い勝負であれば、抜刀から攻撃までの間は地力の勝負に持ち込める。少なくとも居合いを瞬間移動で回避、裏を切り捨てるなどという面白くない決着を戦闘ジャンキーのサラが望むとは思えない。真正面から叩き潰させることで瞬間移動を封じ、同時に一撃で勝負を決める。それが、今のソラに考えられる唯一の勝機だ。

 サラが耳に手を当てる。シャードの連中から通信が入ったのだろう。彼女の助けが必要と言うことなら作戦は順調に進んでいる可能性が高い。サラは軽く適当な相槌を返すだけで特にこれと言ったことは話していない。隙があるように見えて、彼女の視線はソラを突き刺さっている。納刀されたままのため絶好と攻撃チャンスではある。しかし、彼女のつまらない奇襲など考えてくれるなよ、と言っているかのような無言の圧力。それに警戒している彼女の縮地は突破出来るはずがない。なので、ソラは会話が終わるのを待つことにした。


「拙者はしっかり、足止めしておるぞ……あい分かった」


 サラは軽く言葉を返して耳から手を離した。


「待たせたな、ではいくぞ」


 サラが1つ言葉を投げる。

 お互いに理解しているだろう。この一撃で勝負が決まることに。

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