1章第16話 光る一撃
サラは余裕綽々といった様子で刀に付いた血を落とす。ソラの胸の傷がズキンと痛む。
「まだ、やれるであろう?」
サラは刀でソラを指して尋ねる。
「もちろん、さっ!」
起動した爆発のクリスタはサラの目の前で炸裂、炎の目眩しとなる。炎を抜けてくる刀の突きにサラは一瞬反応が遅れた。刀で受け流そうとするも間に合わず、肩に浅い切り傷を負った。ソラは追撃はせずにそのまま背後へ走り抜けてから反転した。そして、サラが何かを仕掛けてくるよりも早く、爆発のクリスタを発射し、追撃する。
瞬間、彼女の姿が消えた。爆炎で見えなくなったわけではなく視界から一瞬でいなくなったのだ。背中に走る悪寒。ソラは急いで後ろを振り返る。そこにはサラがいた。
「あの一瞬でここまで!?」
ソラは驚きの声をあげる。かろうじて刀でガードするも、体勢を崩されてしまう。
「ぐっ!」
ソラは腹部へ強烈な蹴りを受けて吹き飛んだ。転がる身体が地面と接触して痛みが全身に走る。転がりの勢いが収まった後、ソラは腹を押さえながらよろよろと立ち上がる。ティナの奇襲を妨害した時のような縮地。おそらく、これがサラのクリスタだ。ソラがクリスタを使ったため相手も使ったのだろう。とことん戦力の差を分からされている感覚になる。
剣術と縮地のクリスタを超えなければ彼女に傷を与えれない。
「その実力があってどうしてシャードにいるんだ。君ならさぞ強いラヴェジャーになれるだろうに」
ソラは余裕なく掠れた声でそう言う。
「時間稼ぎか? まあ、よいか、少し付き合ってやろう。拙者の願いはただ一つ、より強い人間と戦うこと」
ソラの思惑に気づいた上で、サラはその余裕を見せつけるかのように、会話に乗ってきた。しかし、その目の輝きは決して油断しているわけではない。彼女はむしろ、次の展開を期待しているのだ。彼女は続けて
「そしてシャードの方がその願いが叶いそうだったからに過ぎぬ」
と答えた。確かにラヴェジャーは危険な仕事であるが、普通は人間よりルインズの相手の方が多く危険な要素の大半は侵蝕区域の特性に依存している。ギャングなら相手にするのは取り締まりのA.E.Rエージェントやラヴェジャーや仕立て屋と彼女が望む人間との戦いの機会は多いのだろう。彼女は根っからの戦闘ジャンキーだったのだ。
「他にやりたいことはなかったのか?」
ソラは少しでも時間を稼ぐために無理矢理会話を続ける。彼女の興が乗っているうちになるべく勝利の筋道を立てなくてはならない。
「無いさ。強敵との命のやり取り、策謀家の戦術を叩き潰す感覚、それしか拙者の渇きを潤してはくれぬ。おぬしはどうやって拙者の渇きを潤してくれるのだ? さあ、そろそろ見せよ」
サラは闘争心に満ちた目でソラを見つめる。彼女の言葉にソラの心は一瞬揺れた。彼女はは完全にこちらの狙いを見透かしている。それでも、彼女はその上で挑発し、期待している。時間稼ぎの後にあっと驚くような何かが起きることを。
ソラは刀を握り直して、サラを見る。このまま普通に戦っても彼女にすり潰される。相手の余裕、油断を利用して一気に勝負つけなければ。
「さあ、いくぞ!」
サラが突撃してくる。ソラは刀で受けると見せかけて身体を右に傾ける。ソラの後方から会話中に仕込んだ爆破魔法の弾丸が放たれる。弾丸はサラの程近くで爆裂した。空気が一瞬にして震え、轟音とともに爆風が吹き荒れる。しかし、サラは閃光と化し、縮地でその弾丸を回避していた。更にソラの背後をとった彼女は刀を振り上げる。
「なかなかに楽しかったぞ」
サラの刃がきらりと光る。彼女はもうすでに勝利を確信しているかのような口ぶりだ。なぜならソラはまだ振り返れておらず無防備に背中を晒しているからだ。
このまま振り下ろせば彼にとって致命傷になるだろう。そこまで考えてサラは目の前の光景の違和感に気付いた。明るく光る3つの球体がソラとの間にあるのだ。それはまさに今さっき回避した爆発のクリスタそのものだ。
ソラは首を捻ってサラを見る。ソラが口角が上がったのが見えた次の瞬間、球体が炸裂、火花と煙が一気に立ち上がる。ソラは爆破の衝撃でよろめく。だが、それよりも至近距離で受けたサラのダメージは相当なはずだ。
「やったか?」
ソラは思わず言葉をこぼす。これがフラグだったか否かはさておき、この言葉を発したことをソラはすぐに後悔することになる。




