5 舞台裏の攻防
ケンイチが振り向くと、宝石屋の店の裏側に、ネイアと指輪選びに協力してくれた宝石屋の店員がいた。
宝石屋の店員は、チャラい見た目であったが、とても誠実に対応してくれたので、ケンイチは好感を持っていた。
「今日、指輪をくれたお客さんがいたの。ウケる」ネイアは言った。
酒場でみせる元気いっぱいな声とは違う、擦れた声だった。
それに妙に、着ている服が、色っぽい。露出が多い服を着ている。
「見せてみろよ。……ハハハハハハ」
宝石屋の店員は腹を抑えて笑っている。
「どうしたのよ、いったい」
「傑作だぜ、それは、オレが今日売りつけた、ゴミ指輪じゃねえか。ちょっと変わった色をした石のかけらを指輪にはめ込んだだけだぜ。
あの挙動不審なオッサン、お前にプレゼントしたんだな。好きな人がいるっていってたぜぇ、その好きな人ってお前かよ」
「冗談じゃないわ。まじキモかった。
仕事で言ってただけなのに、社交辞令でいい気にさせすぎたわ」
「この指輪どうすんだよ」
「あーあ、せっかく金になる貢物だと思ったのに~。ゴミよ、ゴミ。そんなものいらないから」
ネイアは、指輪の入った箱をポイッと、どこに飛んだかも確認することなく、投げ捨てた。
「もうちょっと引っ張って、貢がせるだけ貢がせたら適当に捨てるわよ、あのおっさん。
せっかく換金できるって、テンションアガってったのに、最悪」
「まあ、いいじゃん。夜は長いんだ」
店員のチャラ男は、ネイアの肩を抱いた。ネイアも抵抗する様子はなく、むしろ歓迎という感じだ。
二人は、身体を寄せ合いながら、暗闇に消えていった。
ケンイチは、呆然と、立ち尽くしていた。
その後、道路に投げ捨てられた指輪を拾って、ポケットに押し込んだ。そして、酒場に駆け込んだところまでは覚えている。
「おーい、おい!もうすぐ仕事だ。ちっ、こいつ酒くせえぜ」
身体が揺れる。
ゆっくりとまぶたを開くと、知らないオッサンがいた。まあ、自分もおっさんだな、とケンイチは思った。
ケンイチが目覚めると、知らない荷台にいた。地面のでこぼこに合わせて、尻が揺れる。
「どこなんだ、ここは?」




