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4 宝石よりも君の愛

ケンイチのジャケットの左ポケットには、小ぶりの箱が入っていた。

箱の中には指輪が入っている。20万ゴルドもした。トップランカーの冒険者にとっては、はした金かもしれないけれど、自分にとっては大金だ。


指輪には、透き通った紅色の輝きを放つ宝石がはめ込まれている。

宝石屋の店員が相談に乗ってくれて選んだとっておきの指輪だ。店の奥からわざわざ出してきてくれた珍しい宝石らしい。ネイアちゃんは喜んでくれるだろうか。

 

ケンイチは、軽い足取りで街道を歩く。これを結婚指輪代わりに、ネイアちゃんに告白するのだ。


ケンイチは、この1年で初めて酒場を前にして立ち止まった。普段なら、日常のつらさを忘れるため、一刻もはやく夕食を胃にかきこんで度数の高い酒で酩酊したいので、入り口で立ち止まったりはしたことない。

心臓がバクバクと脈打つ。

酒場の窓からは、光が漏れており、笑い声が聞こえてくる。

勇気を出して、ケンイチは店内へ入った。


「あら?ケンイチさん、今日は帰ったんじゃなかったの?」


ケンイチを見つけたネイアは、そのチャーミングな笑顔を浮かべて言った。


「いっ、いや。ちょっと用があってね……」


「そう見栄をはらなくてもいいわよ。まだ、飲み足りないのね」ネイアは言った。


ネイアは、先程まで客がいて散らかったカウンターを手際よく、片付ける。


「さあ、ビールにするそれとも」


ネイアの言葉をさえぎって、ケンイチは言った。


「ネイアちゃん、結婚してください。俺、冒険者やめます。ネイアちゃんが、憧れているって言ってたお店のための準備もできています。この指輪、俺の気持ちです」


ネイアはしばらく、固まっていた。そして、慈母のようないつくしむ表情に変わる。


「ケンイチさん。あなたの気持ちはよく分かりました」


ネイアは、頬を紅潮させると、そっと、優しい手付きで、宝物をしまい込む少女のように、ケンイチの差し出した指輪の箱を受け取った。


「ネッ、ネイアちゃん!」


「……ただ、あたしに考える時間をください。お返事は、明日させていただきます」


「分かったよ。明日、この時間にまた来るよ」


酒場を出たケンイチの足取りは軽かった。

指輪を受け取ってくれたのだ。

それにあの反応、脈アリだ。

空を見上げると、いつもは何も感じない夜空にきらめく星が、とても美しく感じられた。


満月に照らされ夜にも関わらず、うっすらと幻想的に明るい。まるで、自分の今の心境を映し出してくれたようだ、とケンイチは思った。

彼は、普段ならしないのだが、今日は散歩してみようと思い立った。


しばらく街をうろついていると、指輪を購入した宝石屋の前を通りかかった。すでに閉店して、明かりが消されている。

街はすでに、静寂につつまれている。

宝石屋を通り過ぎようとした時、話し声が聞こえた。


「ネイアちゃんとあそこにいるのは……宝石屋の店員じゃないか」

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