27 敵のテンションあがってきた?
「ふん。理想を持たぬ連中など、多少腕が立とうとこの程度よ」ヤマオカは言った。
「だが……時間は十分に稼いでくれたぜ」
ケンイチは、カタログギフトの本を出現させる。
「……敵、排除」
彼の動きにつられて、フレアも命令を実行すべく動き出した。
「このチョーカーを注文だ!」
ケンイチの叫びとともに、高級百貨店のテナント店先のショーケースに置かれていそうな、黒く染め抜かれ、中央部にひとつ宝石がさりげなく埋め込まれた上品なチョーカーが、彼の手に握りしめられていた。
フレアは、指先に血液を集め、血のショットガンを放つ。
「洗脳されて、俺とお前の出会いまで!媚び売り中の俺は無敵なのすら忘れてしまったのか!」
一時的に世界最強クラスまで強化された動体視力が、被弾せずに通過できるルートを示してくれる。
「……!?」
散弾の雨を抜けたケンイチへ、フレアはランス握って突撃する。
「無駄だよ。媚び売り中の俺は、強い!」
彼は突撃をわずかに体を捻って避けると、剣で、ランスを持つフレアの手を撃った。
フレアは鎧を着ているのでダメージはない。ただ、今の一撃はダメージを与えることは目的ではなかった。
彼女の手が弾かれたことで防御にスキが生まれる。
「そんな下品な首輪はやめてくれ!」
ケンイチはその手にプレゼントするチョーカーを握りしめたまま、フレアの首元へ手を伸ばした。
解除対策の攻撃魔法が発動する。
ダメージを喰らう。媚び売りの最中だろうと生命力は変わらないし、痛いものは痛いのだ。
ケンイチは絶叫する。隷属の首輪に触れるとまるで熱した鉄を触っているような、指先がグジュグジュになる痛みだ。
だけど、関係ない。フレアを解放しなくちゃ。
ケンイチの口の中は、血の味と食道から上がってきた酸っぱいゲロの臭いでいっぱいだ。
ダメージを受けすぎて、体も痙攣してきた。
ヤマオカはケンイチの行動の意味を理解した瞬間、ケンイチへ向かって走ってくるが、もう遅い。
大事なものに貼り付いているシールをゆっくりと剥がすように、フレアに傷が残らぬよう
ゆっくりと首輪を剥いでいく。
そして、ケンイチが用意したチョーカーを装着する。
「遅かったじゃない……まあ、このプレゼントで許してあげるわ、ダーリン」
フレアは微笑んだ。
「させるかあっ!まだ、ヨリヒデ様の理想は成就しておらんのだ!」
ヤマオカは叫ぶ。
ここには部下も命令を聞いてくれるフレアもいない。
けれど、彼の目は死んでいなかった。




