14 爆誕!チャーハン大魔王
「先程までのフレアに使える従者姿は、世を忍ぶ仮の姿である。俺の本当の正体は、<チャーハン大魔王>だ!」
ケンイチは<チャーハン大魔王>と名乗り、避難民たちの前へ再び姿を現した。
ふざけた名乗りに、ユバたちにボコボコにされてしまうのではないかと、不安になっていた。
けれど、魔族同盟の宣言文に名前が載っていたので、予想と違った。ユバたちは、膝を地面について、かしこまった。
ケンイチのリーダー実績は、中学校の京都修学旅行Bグループ班長(総勢6人)が最高であり、リーダーシップのなさには定評がある。
にもかかわらず、
「俺の配下になるならば、この近隣への居住を許す。ただし、古の吸血鬼フレアの邪魔にならぬようにな。俺とヤツは対等だ」
(意訳:俺の方針に同意してくれるなら、住んでもいいよ。ただし、フレアめっちゃ怖いから、見つからないところに住むといいと思うよ。トラブルあっても責任取れないです)
と、駐車場の注意書きのようなリーダームーブを行う。
偉そうな口ぶりだが、言っていることは、責任逃れだ。
「あなたが、あのチャーハン大魔王?」
ユバはポシェットから、新聞を取り出した。
週刊魔界新聞とタイトルのついた、安っぽい大判紙を2,3枚折りたたんだ新聞だ。ユバの手汗で黒インクがにじむ。粗悪な品質だ。
一面に<魔族同盟 宣言文発表!>と魔族共通語で書かれているのが分かった。言語変換は、ケンイチの数少ない異世界転移特典だ。
ゴテゴテしたフォントでスポーツ新聞のような見出しである。
ケンイチは冒険者ギルドにいたころ、それなりに印刷物が普及していたのを思い出した。
人間側、それも文化からは最も離れた植民地行政区ですら、新聞やちょっとした雑誌はあったのだ。
魔族側にも、印刷物は普及しているようだ。
「俺の名前がその宣言文に載っているだろ。俺がこの周辺の指揮官を務めることになった」
正しくは「押し付けられた」と表現すべきだけどな。
それにユバたちを追い払って、見殺しにするのも寝覚めが悪い。
ほかにも、いや、これがもっとも大きな理由だが、部下づくりの側面もある。
サンダーたち魔族同盟幹部は自分の利権が侵されない限り、混沌の森防衛に関心はない。
ケンイチがピンチになっても、助けてくれるのは、フレアくらいだ。そのフレアも、普段はやる気がない。
ケンイチは、今、部下をつくっておく必要がある。
「館周辺から立ち去るのなら、俺もフレアも何も言わない。
だが、これより奥には、大魔法使いシェフィのテリトリーもある。ヤツに、見つかれば、お前たちがどうなるのかは知らない」
ぶっちゃけ湖周辺だけがシェフィに貸している土地だけれど、ここは話を盛っておく。
ユバたち避難民が、シェフィの名前を聞いた途端ざわつく。
同族であるエルフですら顔をひくつかせている。
ずいぶんと評判の悪いようだ。
「……若輩者ですが、デュラハン族のユバ、ケンイチ大魔王様に仕官させていただきます」
「おっ、おう!よろしく!」
修学旅行以来のリーダーポジションに戸惑うケンイチは、答えた。
ユバの仕官願いを皮切りに、魔族たちはつぎつぎとケンイチに忠誠を誓っていった。
それが一段落した頃、
「まず最初に、お前たちには、これを手伝ってもらおう」
ケンイチは背中から、巨大な鉄のかたまりを取り出した。




