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水没都市のオタク市場(初版  作者: 335遼一
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7/11

《7》

【結】

 警察とハーモニック隊が小競り合い――と呼べるのかも解らない不毛な放水――をしている光愛ビル側にわざわざ渡るのは危険と判断。

 無線屋や某時代を先取りしすぎることに定評のある王手ゲームメーカ運営のゲーセン、マップビルの四号館(通称【アミューズメントビル】)側の道を進んで早々に交差点から離れる。

 何時もならば買い物&サルベージ帰りに交差点から少し行った【電気街】の老舗飲食店【ギルドレストラン】で食事をしつつ、欧州各国のビールでも楽しむところだが、今日はマナブを迎えに行くという目的もある。


 流石に『海上列車』のJB線高架を超えると混乱も収束し、波飛沫などもほとんど飛んでこなくなった。

 これでようやく安心して行動できるが、相も変わらず全身びしょ濡れだ。

 このままでは寒すぎて、本当に風邪を引いてしまう。

 帰ってからの作業や、明日以降の事を考えるとそれだけは避けなくてはならない。


(トホホ…。予定外の出費になるけど、これは服を買うしかないかぁ…)

 目的地のラジ館は既に目と鼻の先にあったが、ココは急遽予定を変更し、一路アキバの玄関口【アキハバラ駅】の駅舎へと向かう。


 アキハバラ駅は海上列車のJY線、JB線、JK線の『JR』三路線や、『首都私鉄MIR』のTX線のほか、島内移動を主とする『海上メトロ船』のH路線、島と島の間を行き来する『高速船』各種の発着場も兼ね備えたニホン有数の大型駅だ。

 改装や建て増しが幾度も繰り返さえながら、今も昔も変わらずアキバを見守り続ける駅ビルは商業ビルとしても有名で、和、洋、中各種飲食店はもちろんのこと、時計や眼鏡、帽子などのファッションショップ、豊富な小物を取り揃える雑貨品店までと数多くのテナントが入っている。

 観光地化を推進しているとはいえ、オタクの街アキバにしては少々外観、内装ともにスマートすぎるという意見もあるが、個人的にはアキバに人々が集まり活気をもたらす一助となるならば悪くないと思う。

 アキバは駅から離れるほどにディープかつ刺激的になる街だ。

 アキバ初心者や一般の人々に比較的マイルドな部分から体験させるのには、このビル設備はピッタリだろう。


 ところがエスカレーターを何度か乗り継いで海水面から五階フロア(海抜にすると十七メートル程だろうか?)。

 実用系衣料品店【ユニーロ アキハバラ駅店】に到着するなり俺を出迎えたのは、ビルの小奇麗さには不釣合いな人混みと怒鳴るような言語の海だった。

 周りに居るのは、外国ないし地球外人ばかりだ。

 確かに国産ブランドのユニーロ製品は質の高い『メイドインブルーアース』でありながら低価格でカジュアルな衣服を買えるため、国内外、太陽系内外からも人気が高い。

 ましてアキハバラ店は街の特性上、家電も販売している店舗。

 休日ともなれば、混雑必至の店なのは覚悟していた。

 ただネット通販ではなく、ちゃんとした洋服屋に来るのも服を買うのも久々だった俺としては、この混み具合は想定外だった。

 五階から九階フロアまで全てが売り場として開かれている比較的大型の店舗のはずだが、エスカレーターの隙間から上を覗き見るに全ての階層で同じ状態と見受ける。

 数日前に駅舎に併設する形でそれなりに規模の大きなホテルが開業したが、どうやらそこに宿泊している観光客が爆買いに押し寄せているらしい。

 おかけで室温と湿度が異様に高くなっており、これだけ密接していると汗臭さや香水の匂いが鼻につく。

 寒さ対策で建物が密閉されている所為か、心なしか息苦しくもなってきた。

 恐らく人が密集しすぎて酸素自体が薄くなっているのだろう。

 長居していては、命に関わる。

 

(これ絶対、ニホン人客の方が少ないだろ…)

 などと思いつつ、何とかたどり着いたメンズ服のコーナー。

 寸法さえ合えばと試着もせずに一通りひっ掴んでレジへ直行する。


 しかし店がコレだけ混んでいれば当然だが、レジの行列が半端ではない。

 会計を終えて着替えた頃にはとうに予定の十三時を超え、十四時に成ろうとしていた。

 一時間もオーバーしているが、マナブはまだラジ館に残っているだろうか?

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