天狐(4)
わたしの操作ミスだと思います。(4)が消えてしまいました。
新たに書き直しています。2014/02/16
編集し直し ました。
妖狐 本家へ
天狐、空狐 白澤は、昨晩から屋敷の様子を伺っていた。
昨晩は、この近所に住む狐の母子の所に邪魔していた。
そこであろう事か、中司優介の話を聞いた。
4年前、その母子は、三重県の名張市赤目に住んで居た。
当時、その地域は、人間の都合によって大規模な再開発を行っており、彼らの住処であった竹林を追い出されてしまった。意を決して移動を開始した彼らであったが、病気を患っていた母と共に名張川を渡り、国道165号線に出て近くの自動販売機の裏で、疲れて寝てしまった。
目を覚ました時には、遅かった、人間の男が、病気の母を抱き上げようとしていた。
母は、抱き上げられ、迷いうろうろする事しか出来なかった子狐もすぐに捕まえられ、車に乗せられた。
男は、そのまま、近くの医者の所に行き、母狐に注射を打つように指示し、薬を2週間分受け取り、この地へ連れて来られた。当時、子狐であった彼は、何事があったのか解らず、車から降ろされた時に男の手を思いっ切り噛んだ。男は、にっこり笑いながら「遠い所まで連れて来てしまってすまない。この地にも四十八滝と呼ばれる所もあるし、この竹林なら生涯大丈夫だ。薬は、ここに2週間分ある。しばらくは、この先の屋敷から鳥肉でも持ってこさせよう」と、言い残し、去って行った。
それから男は、2週間ごとに現れ、病気が治るまで母子狐の両方を近くの医者に連れて行った。
ある日、子狐は、屋敷の近くまで来て その男の名が、優介と言う事を知ったと言う。
「今の人間にしては、」と天狐の白雲が、言った。
「うーん、さすが、さすがに中司家、さすがに少彦名命様に好かれておるお方じゃのぉ」と空狐の天日も言った。
「・・・」白澤は、黙ってうなずいていた。
「おいら、あの人が、好きだよ。あの人なら信用出来るよ」と当時、小狐であった青狐が言った。
中司家本家の正門が、開き始めた。
男の子が1人走って出て来た。
男の子は、道端に1m程の棒が、刺さった所まで走って来て 大きく深呼吸をし、大きく息を吸った。
「天日様、白澤様、白雲様、ようこそ御い出下さいました」
また、大きく息を吸って
「これに持参致しましたる封書を 御持ちになって私の後に付いて来て下さいませ」
と大きな声で言った。
「なぜ、儂が来ている事を知っておる」と、天日は、言うと
「中司の当主の力じゃ、恐らくは、昨日より我らが来て見ておった事も解っておるわい」
と白澤が、言った。
「では、参りますか」白雲が言うと、
「行こう」と他の物も言って姿が、消えた。
男の子の目の前にいきなり姿を現せた3匹に驚いて
「ひっ」と声を飲み込んで尻もちをついた。
姿を現せた3匹は、それぞれ変化していた。
天日は、白髪が腰まであり、後ろで結わえた老人、
白澤は、白髪が、短いが、ひげが、お腹まである老人。
白雲は、帽子を被ったスーツ姿の青年。
「坊、驚かせてすまんのぉ、まぁ、立ちなさい」と天日が、杖を出すと男の子は、杖を握って立ち上がり、手にした封書の雪を払い、これをと差し出した。
「当主殿の封書か」とその【結】と書いた封書を受け取った。
「では、御三方、こちらへ」震える声で言うと門へと歩き出した 門の手前から門を抜けて離れのある道の両端に封書を道側に差し出し持った男女が、何やらぶつぶつと言いながらずらりと並んでいる。
男の子は、その中心に右手を後方に差出しながら後ろ向きに歩いて行く。
その後を老人2人と青年が歩いて行く。
やがて離れに着くと履物を脱いで御上り下さいと男の子が、礼をして去って行った。
履物を脱ぎ、座敷に上がると正面に床の間があり、向かって右に前に茶椀を置いて奥に男、手前が、女と並んで座り、頭を下げている。その向かいには、膳が、3つ並べられている。3人は、部屋に入って初めて気づいたが、部屋の中の襖の脇にもう一人、女が頭を下げ座っていた。
奥の男が、
「ようこそおいでくださいました。どうぞ順に膳の前へ御座りください」と頭をさげながら言った。
3人は、それぞれ奥から天日、白澤、白雲の順に腰を下ろしていった。
「御初に御目に掛ります。私が中司家次男、優介と申します。これに居るのは、相馬優子、あちらに控えておりますのは、現当主中司雄一郎の妻、咲子様に御座います」と優介が、紹介すると、
天日、白澤、白雲達は、飛び上がる様に驚き、咲子夫人に頭を下げる。
「当主は、御存じの様に霊力が、強く、御出迎え出来兼ねますので代わりに私が、御挨拶させて頂き、御尊顔を拝借させて頂きます。当主からも、御ゆるりと気兼ねなく御過ごし頂きます様、くれぐれも仰せ使っておりますのでよろしく御願い致します。あと、膳の用意も順次おこないますのでその時は、我が給仕の者が、御目を煩わせる事になりましょうが、御容赦頂きます様御願い申し上げます」
と咲子夫人が、言うと、
「御心遣い 痛み入ります」と天日が、返し、
「私が、空狐の天日で御座います。この隣が、白澤、訳あって同行願いました。その向こうが、天狐、白雲になります。以後、御見知り置きの程、よろしく御願い致します」と挨拶が、終わった。
「して、少彦名命様の命を受け此方にまかり越しましたのは、その女子の事に相成りますかな?」と天日が、言うと優介が、それを受け、
「左様にございます。この者、少彦名命様によると何やら印が、刻まれており、その印は、少彦名命様の御好意により、消し去りましたが、その印を刻んだ相手とは、まだ繋がっております。そこで貴方様方にこの印を刻んだ者の正体を明らかにして頂きたい と言うのが、主旨に御座います」
「まず、白雲、見て差し上げなさい」と天日が、言った。
白雲は、短く「はっ」と答え、両目を大きく開くと、眉間に裂け目が出来、それが開き、目が、現れた。
その目は、金色の目を持ち、キラキラと輝いている、いつの間にか、3つの目は、獣の目となり、じっと優子を見つめるでも無く見ていた。
やがて3っの目が、閉じ、獣の目も元通りに戻ると、
「明らかに我が一族の仕業に間違い御座いますが、術を掛けた者は、黒い靄の向こうに居る様で何者か、判断出来ません」と天日に言った。
白澤が、「うーん、面白い、儂も見てもよいか」と天日に言うと「うむ、見てやって下され」と言う
「少し、場所が、要るで天日殿、白雲殿少しばかり離れてくれんかの」
天日と白雲が、咲子夫人と同じ位置に移動した。
白澤は、目を瞑り、両手を合わせその手を胸の前に持って行くと、白澤の背中のすぐ後ろに金色の輪が出来、その輪は、輝きながらくるくると回り、徐々に大きくなっていく。両手を左右水平にし、立ち上がるとその手を囲む大きさの金色の輪が出来上がり回る速度が、ゆっくりとなった。その輪の中に6つの目が現れ、白雲と同じ様に眉間にも目が現れた。
目は、息があったかの様に同時に全ての目が、開きその目が、金色の光を放ちだした。やがてその光は、離れを覆うかの様に眩しく輝き出した。
離れの外で離れを守るかの様にいた札を掲げた分家達は、驚いたが、その口は、ずっとぶつぶつと念を送りつづけている。
優介は、横を向くと咲子夫人と目が合った。咲子夫人は、何事もない様なそぶりで茶を飲んでいる。
優子は、目を丸くしたまま 固まっている。
優介はこの二人を見比べ咲子夫人の豪胆さを思い知った。
やがて金色の光は、ゆるやかに収束して行き消えると同時に6っつの目も輪っかも消えていた。
白澤は、静かに座り、「天日殿、白雲殿、失礼した」と言うと天日、白雲は、元の位置に戻った。
「野狐にございます。9つの尾を持つ野狐の悪狐、該当ございますかな?」天日、白雲に聞く。
「今、9つの尾を持つ物は、我らを除いて4体、内、2体は、儂も良く知っておる」
「天日様、もしや、玉賽破では、」白雲が言った時、
「ん、おなご、優子さんと言ったか、様子がおかしい。どれ、」
と言いながら天日が、下座を回って優子の前に座る。
「気を失っておるわ、ほっほっほっほっ、どれどれ、」
と優子の手を両手で上下に挟み込み目を閉じる
挟み込んだ手が、キラキラと青や赤、紫、黄色と虹色の光を纏い出し、やがてそのひかりが、帯状に優子を包み込み優子の中へ消えていった。
「はっ、きゃ、」と意識が、戻り、自分の手が天日の手に挟まれている事に気づき手を引っ込める。
「良い、良い、これでその印に纏わる糸も完全に切れたわい、ほっほっほっほっ」
天日は、笑いながら自分の席へ戻って行き、
「玉賽破、奴か。有り得る。奴ならば、白雲にも見えぬ様に成れる。厄介な相手じゃのぉ」
「玉賽破と言う物、どの様な相手ですか」優介が、問うと、
「玉藻御前、知っておろう。その孫に当たる物じゃ」天日が、言った。
優介は、優子に
「玉藻前、良く言われる白面金毛九尾の狐、の事」だよと言った。
「妖力もそうじゃが、奴は策を労する。悪知恵の働く奴じゃ 先祖に似ての」と白澤が、付け加えた。
「その玉賽破、滅しても良い物でしょうか」と優介が、聞くと
「この際じゃ、我ら一族、優介につこう。ほうって置くと我ら一族に対しても碌な事にならんからのぉ」と天日が、言う。
「さぁ、これで互いに目的を果たされたのでは、ありませんか?膳の用意をさせて頂いてもよろしゅうございますね」と付け加えた。
咲子夫人は、にこにこしながら 柏手を2つ打ち、「膳の用意を」と少し大きな声で言うと
「はい、只今」と襖が、開き、料理の乗った盆を持って3人の着物に割烹着を着た御手伝いさん達が、入って来て、それぞれの膳に料理を並べて行く。
続いて、ひょうたんを持った御手伝いさんが、入って来て膳の上に乗った杯に酒を注いでいく。
咲子夫人が、襖寄りの中心に座り直し、
「お粗末ながら料理と神酒を御用意させて頂きました。御堪能下さい」と宴の開始を宣言した。




