天狐(2)
妖狐と霊獣の話が、着き、優介の発案を持って 中司の実家へ向かいます。
翌朝、(大洗磯前神社から帰宅して4日目の朝)
優介の携帯に電話が掛かって来た。
「中司優介さんですか? 昨日、電話した白雲と申します。昨日、天日と相談しまして、白澤殿と共に貴殿の本家へお邪魔したいと思うのですが、連絡を御願い出来ませんでしょうか?」
「それは、良いですが、どういった用件でしょうか?」
問うと、昨日の話合いの内容を伝えて来た。
優介は、
「【八角ゲンノウ】の貸出は、難しいかもしれません。御存知の様に 【あれ】は、その物自体、神通力の塊で触れる事が出来るのは、当主だけになっています。当主は、私の兄ですが、兄の結界は、私よりも凄まじいものがあります。」
・・・、優介は、一計を建てた・・・、
「考えが有ります。取り敢えず今から私達は、本家へ向かいます。白雲様と白澤様は、明日の夕刻に本家の正門に来て下さい。本家の離れを借りておきますのでそちらで御会いする事に致しましょう。結界は、此方で何とかします。信用して来て頂けませんか」と、聞いた。
「リスクが高いですね、下手をすると滅させられる恐れが、・・・」
白雲は、躊躇していた。
電話の向こうで
「良いでは無いか、面白そうじゃ、儂は、良いぞ! 行こう白雲!」
「そうじゃ、今更、腰を引くものでない。我らのメンツに関わるし、少彦名命殿の依頼じゃて。」
と、声が聞こえた。
「畏まりました。明日の夕刻、お邪魔致します」と 半分、震える声で返事が返ってきた。
「電話の側に天日様と白澤様が いらっしゃるのですか? 声が聞こえたもので、」
と聞くと
「ええ、今、御二方に囲まれて、蛇に睨まれた蛙の状態です。地元に無性に帰りたい気分です。」
「御心配なさらないで下さい。私には、あなた方の御力が、必要なんです。決して危険には、晒しませんと、御両人様に御伝えて下さい。明日、夕刻、御待ちしております」
電話を切り、本家に明日、大切な御願いがあるので、当主と分家数人に本家への在宅を 御願いし、計画を伝えた。
優介と優子の 2人は、事務所を出て一路 本家のある岐阜県高山市の北北西に位置する飛騨市に向かった。飛騨市から北北東の横岳に向かう位置に中司家、本家がある。
南に位山、北東に尖山、西北西に天柱石が有り、位山、尖山、天柱石は、ピラミッド伝説やピラミッドラインとしても有名で、竹内巨磨によって一時期 表舞台に上がった竹内文書等とも関係が深い場所である。
その3箇所の中心近くに本家が 存在する。
昼を少し回った頃、優介と優子の2人は、高山の町中、城山公園近辺の駐車場に止めた車から、高山駅方面へ散策しながら少し、旅行気分を味わいつつ、本家の準備が、整うまで時間を潰す事になった。
宮川を超える手前の大衆向けレストランで、 飛騨牛のステーキ定食 Aセットに舌堤を打ちながら、その油乗った柔らかな肉とを堪能した。
優子は、そのスリムな体型から想像出来ない食欲で
「やわやわで口の中でとろけそうなお肉でしたね〜、私、もう一人前いけちゃいそうでしたよ」
「帰りにまた、寄りたいな~」
「私達、周りから見て 恋人同士にみえませんかねぇ~」
と、旧家の町並みの続く道を歩きながら、 右手にチョコアイスクリーム、左手にクレープを持ち、はしゃいでいる。
(冬なんですが・・・寒いんですけど) 優介は思った。当然ながら、彼女の手荷物は 優介の手にある。
しかし、そんな事は、些細に思える程、今の優介は、機嫌が良い。
久しぶりに美味い肉が食えて、声に出せない声で スポンサー万歳を三唱していた。
どうやら、貧乏が板について来た様だ。
優介は、携帯を内ポケットから取り出し、本家の当主である兄に電話をした。
「兄さん、手間を取らせて悪いんだが、準備は、出来た?」
「あぁ、元気そうだな。また、こっちも頼みたい事が、あるんで構わんが、妖狐の連中、本当に来るのかが、心配だ。うちの家系とは、因縁がないから良いんだが、物が、物だけにな。」
「貸せないとは、言ってあるよ。」
「お前の言う通り、離れの地下に祭壇を祭って、【八角ゲンノウ】を、奉納してある。それと分家の連中にそれぞれ一方通行の札を持たせて結界を張らせる様にしてある。良く、思い付いたな」
「これならお前の結界程度ならかなり緩和出来る。私の結界は、狭めておく。恐らく空狐、天狐クラスの霊力であれば難なく出入りが出来るはずだし、私は、奥の自分の座敷からは、出ない方が良いから 代わりに妻を挨拶に向かわせる事にした。明日が、楽しみだな。何、この屋敷の中の事、部屋に居ても十分わかる。」
「ありがとう、兄さん」
「お前の連れている女性、私は、大己貴命殿から少し聞いたんだが、かなり危ないらしいな。気をつけてやってくれ。それと、お前、変わらず、貧乏だろ」笑いながら言う。
「ほっとけ」
「本家からも経費を出す様に採決してあるから、明日、屋敷に来たら私の部屋へ来い。他にも渡しておきたい物もあるしな。」
俺は、自分の運の良さに神?に感謝した。
「何から何まで済まない。有難う。寄らせてもらうよ。予定通り、今日は、高山で泊まって、明日の昼頃に本家に入るから 分家の方々にもよろしく言っておいて下さい。じゃ、兄さん、明日」
と、電話を切った。
あいかわらず。能天気に飛び跳ねている優子に生温かい視線を向け、
「準備は、整った。車を取りに行こうか」と言うと、
「今日、ここで泊まるんですよね。さっき、ちらっと聞いて、スパ予約しちゃいました~。ついでにホテルも。久しぶりの旅行なんで、ボディトリートメントとか、フットリフレクソロジーとか、やっちゃいま~す。」
「場所は、あ、これが秋葉神社だ。だとすると、この橋を超えて左側のホテルです~ぅ」
橋の手すりの近くの石で片足バランスをとり、グラグラしながら指をさしている。
優介は、呆れながら (何が「す~ぅ」だよ。「旅行じゃねぇ」)と心が、さけんでいた。
( お前、相当、やばい立ち位置なんだぞ。
マイナス方向じゃないからまぁ、良いか)と色々考え、
「わかった。そうしよう」と言うと、
「明日、の服、上着とブラウスが、いる! いゃほぅ! 買い物、お買いもの」
勝手な歌を作って歌いながら 俺の手を取って上一之町の交差点方向にずんずん進んで行く。
上一之町の交差点の手前の筋を左折し、進むと酒造屋が有った、彼女は、酒造屋に入ると、「おじさん、冷やで これ2杯、頂戴」と元気よく叫び、地酒コーナーの一級酒を指刺した。
「おい、俺は、車が、」
「良いじやん、駐車場出てまっすぐ200mぐらいの所に泊まるんだから、ほら、景気付けに呑んで、呑んで、一杯だけだからさ。買い物してたら、覚めちゃうよーん」
呑む前から酔っ払いのおやじと変わらん優子に誘われるがまま 結局、二人向かい逢って、一気呑み。
店のおやじが、「仲、良いねー」と 笑いながら言うと、
彼女は、「はい、愛しあってまーす。明日、彼の実家に挨拶にいきまーす」
(実家に行くのは、間違ってはおらんが、かなり、意味が、違うだろ)と優介は思いながら笑うと
今度は、店のおやじが、「兄さんは、この辺かね」と聞くので 俺は、曖昧に「ええ」とだけ答えた。
店を出る時にも彼女は、「おじさん、またねー」と大きく手を振っている。
(酒のせいもあるのか、頭が痛くなってきた) 優子の後を歩きながら優介は頭を振り買い物に出かけた。当然、優介は、荷物持ちになる。
上着のブレザーや、ブラウス等 袋3つ分の洋服を買い、お茶処で コーヒーやケーキを食べ、雑貨屋では、小物を見て回り、ようやく駐車場に着いたのは、午後6時を回った辺りだった。
その後、ホテルでチェックインを済ませると部屋へ行った後、優介の手を引いてスパへ乗り込んだ。
「2人分、予約しちゃいましたからね。」と言い、小さな声で、「一人だと心細いし・・」
「いっくよ~」と促され優介は生まれて初めてのスパと言う物を体験した。
ホテルの中を移動する時でも優介の二の腕を掴み、ずっと離れずに優子がいた。
高山の夜は、更けて行きやがて、朝が来た。




