45
「謝る? なにをですか?」
「実は、いままでの長たらしい説明は、泉さんの死とは直接的な関係がない。長尾グループの成り立ちや、沖縄サンフラワー高等学校が三波学園高等部に学校業務を丸投げしてることも、地方施設の不適切な運営実態も、ずさんな教育内容や灰谷さんのことも、彼女の死とは直接的には結びつかない」
「無関係なのですか?」
「無関係とまでは言い切れない。直接触れないだけで、間接的でも原因であることには違いない。彼女の死と、繋がりは皆無ではない」
「どのように繋がるのですか?」
「では、今回の殺人事件に繋がる原因を教えよう。泉さんが抱えていたトラブルについて、彼女の死に繋がった原因についてだ」
「お願いします」
「泉さんは、極めて高額な学費を請求されていたのだ」
「極めて高額な学費?」
「沖縄サンフラワー高等学校の初年度学費は、入学時だけで百五十万円になる。しかも、一括納入だ」
「百五十万円? 百五十万円と言いますと、私大クラスですよ」
「沖縄サンフラワー高等学校の学費の内訳は、入学費、授業料、映像授業費、教材費、施設利用費、生徒会費、教育充実費等だ」
「かなり高額になりますね」
「まだ、費用は掛かる」
「これ以外にも必要なのですか?」
「必要だ」
「なんの費用ですか?」
「三波学園高等部の学費だ」
「沖縄サンフラワー高等学校だけではなく、三波学園高等部にも学費が必要なのですか?」
「そうだ。必要だ。ちなみに、三波学園高等部の学費の内訳は、入学費、授業料、映像授業費、教材費、施設利用費、生徒会費、教育充実費等だ」
「三波学園の学費は、沖縄サンフラワー高等学校と同じですね」
「二校分の学費が必要なのだ」
ここで私は、ある疑問を覚えた。沖縄サンフラワー高等学校と三波学園高等部、運営している長尾グループ(旧掛布グループ)の関係だ。
「先生、たしか、沖縄サンフラワー高等学校を運営しているのは、長尾グループですよね?」
「そうだ」
「三波学園高等部を運営してるのも、長尾グループですよね?」
「そうだ」
「沖縄サンフラワー高等学校と三波学園高等部は、どちらも長尾グループが運営しているということですよね?」
「そうだ」
「沖縄サンフラワー高等学校も三波学園高等部も、運営している母体は同じということですよね?」
「そうだ」
「沖縄サンフラワー高等学校に学費を支払わねばならず、三波学園高等部にも学費を支払わねばならない。両校とも、運営母体は同じ長尾グループ。つまり、学費を二重に請求されている状態ですよ」
「そうだ。事実上の二重請求だ。その二校分の学費の合計が、百五十万円となるわけだ。入学時するだけで、高額な学費が掛かる」
入学時するだけで、高額な学費が掛かる。先生のこの言葉に、私は注意せざるを得なかった。入学時するだけで。
「入学時するだけで百五十万円ですか」
「そう、入学するだけでだ」
「入学後も学費が必要なのですね」
「いい着眼点だ。入学後も学費が必要なのだ。なにかと付けて費用を請求される。三波学園高等部はナントカコースを併設しているが、選択するとさらに追加で学費を請求される」
「とんでもない学費になりそうですね」
「泉さんは、極めて高額な学費を請求されていたのだ。それでいて、学校業務の丸投げ、教育には向かない雑居ビルという施設、低すぎる教員の質、低すぎる授業内容、宣伝とは著しく乖離した実態に見舞われたのだ」
「詐欺の被害に遭ったのですね」
「ここで、一番最初の説明に戻るわけだ。長尾グループという学校法人が運営している沖縄サンフラワー高等学校は、同じく長尾グループが運営している三波学園高等部に学校業務を丸投げしいて、泉さんは沖縄サンフラワー高等学校に高校生として在籍していたが、実際は三波学園高等部だけに通っていたのだ。これに高額な学費の件が加わる」
「信じられません。おかしいですよ。バカ高い学費を支払って、学校へ行かないで、学校モドキの変な施設で、インチキ教員の授業を受ければ、高校の卒業証書がもらえる状態ですよ。こんな状態は、文部科学省や行政が即座に注意するはずですよ。看過するわけないですよ」
「そうあるべきだ。そうあるべきなのだ」
先生の言葉を思い出す。是正されねばならぬ、教育界の暗部だ。三波学園高等部だけには、とどまらないほどの。
「これが暗部なんですか? 三波学園高等部だけには、とどまらないほどの」
「暗部だ。多くの有識者や有識団体から、二十年以上にわたって再三指摘されている暗部だ。日本の広域通信制高校のほぼすべててに当てはまるトラブルだ」




