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「旧掛布グループのころから体質は改善されていませんね」
「宣伝に使われた有名大学への合格者が存在するのは、紛れもない事実だ」
「事実を載せているのですか?」
「そうだ。事実だ。もちろん、これにもトリックがある。
沖縄サンフラワー高等学校の生徒の総数は、二千人を超えている。広域通信制高校かつ、サポート校の三波学園を全国規模で展開しているからな。二千人という数字は、かなりの規模と言っていい。
通っている生徒にも様々なタイプがいる。イジメ、病気、留年、学業不振など、人それぞれ、なんらかのトラブルを抱え込んでいる。通信制高校に通っている生徒は学力が低いと思われがちだが、学力の高い生徒も通っているのだ。とりわけ、進学校から転入してくる生徒は学力が非常に高い。
こういった、一部の学力の高い生徒が、有名大学へ受かっているだけだ。それも、独自に塾や予備校で勉強したおかげだ。
説明したが、沖縄サンフラワー高等学校の授業内容は中学レベルだ。有名大学へ合格できる授業どころか、高校生レベルの授業すら提供していない」
「せこい表記方法ですね」
「合格者が出た事実には違いないのだ。
これ以外にも、合格者を出す手段はある。
通信学部や夜間部などへ入学させる方法だ。有名大学には、通信学部や夜間部などがあり、入学するだけならば簡単だったりするのだ。
医学部にも、様々な学科が存在する。その中でも、看護学科などは入学しやすい。
いまの時代は、AO入試や、推薦入試などもある。学科試験で合格できなくても、有名大学へ入学する手段はあるのだ」
「そんな手段で強引に大学へ入学したとしても、生徒が授業について行けるとは思えませんよ」
「学校側からすればたいした問題ではない。大学に合格させて入学させてしまえば、後は野となれ山となれだ。生徒の将来を考える義務など負うつもりはない。学校側がほしいのは、有名大学への合格者が出た、という事実だけだ」
「普通の高校ですと、生徒の学力も考えて進路指導しますよね。大学での授業について行くのが困難そうな場合は、無理だと生徒に言いますよ。沖縄サンフラワー高等学校は、生徒のことなんか微塵も考えていませんね」
「これらに加えて、さらにインチキ表示も行っている」
「まだ、あるのですか? やりすぎですよ」
「パンフレットやホームページを隅々までチェックすると、注意書きが見つかる。自分で直接見てくれ」
私はスマホを操作して、沖縄サンフラワー高等学校のホームページを開き、合格者のページを見た。大学への合格実績がズラリと並んでいる。が、先生の指摘通り、隅っこの方に注意書きがあった。
※過去三年間の合格実績です。
※ひとりで複数の大学、学部、学課に合格している場合も、合格者として載せています。
「先生、こんな表記は初めて見ましたよ。体質の改善どころか、悪化していますよ。過去三年間の合格実績ってなんですか? ひとりで複数の大学に合格って、以前にもやっていましたよ。注意書きしていれば許されるのでしょうか?」
「さあな。いずれにしても、有名大学への合格は、沖縄サンフラワー高等学校や三波学園の授業のおかげでないことだけはたしかだな」
「WEB授業や携帯電話でレポート提出とか、ゲームクリエーターコースとか声優コースとかも宣伝していましたよ」
「WEB授業は映像を垂れ流しているだけだ。学校は、生徒が映像授業を視聴したか確認していない。携帯電話でのレポート提出は、四択の問題に答えるだけ。適当にやっても合格できる。ゲームクリエーターや声優などの、複数のコースを設けているようだが、なんの問題もない。物事を教えることを禁じている法律は存在しない。独自のカリキュラムを作って、好き勝手に授業を行うのは自由だ。内容は想像が付くはずだ。もちろん、独自の授業は正規の授業とは認められない」
「結局、灰谷さんの説明はトリックやインチキまみれですね」
「灰谷さんも必至になるはずだ。正社員化への話があるからな」
「正社員化? あの人は正社員ではないのですか?」
「言い忘れていたが、灰谷さんの雇用形態は契約社員で、給与形態は時間給だ」
「アルバイトに毛の生えたようなものですね」
「すべて教科の授業はもちろん、事務作業などもひとりでこなしている。三波学園高等部笠原校をたったひとりだけで切り盛りしている。と言うか、押し付けられている」
「かなりの激務ですね」
「そう、激務だ。普通だったら、だれだって辞めてしまう激務だ。だが、長尾グループは正社員化という話を餌にしているのだ。生徒を二十人入学させれば、正社員化を検討してもよいと、灰谷さん提案しているのだ」
「彼は、大学を中退したのでしたよね? 普通免許状を所持していないのですよね? そんな人が、正社員化なんてされるのですか?」
「長尾グループは灰谷さんを正規雇用するつもりはない。餌は疑似餌だ。彼も薄々気づいているはずだ。己の経歴を考えれば正社員採用はあり得ないと。それでも、追わざるを得ないのだ。食いつかざるを得ないのだ」
「彼も搾取されているのですね」
「長尾グループは労働者を安くこき使って、簡単に切れるようにしている。灰谷さんに責任がないとは言わん。だが、彼ひとりだけに責任を押し付けるべきではない」
「あの人が激怒したのも、理由があったのですね」
あの男は、仕事や雇用、給料でストレスを溜めていたのだ。警察沙汰の事件も起こり、事情聴取されたうえに、私たちの嘘が追い打ちしたのだ。あの男には、あの男なりの主張があるのだろう。それが、他人を騙していい理由になるとは思えないが。
先生は、こちらを向くと口を開いた。
「ここで、ひとつ謝らなければならん」




