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「どんなトリックですか?」
「まずは卒業率のトリックを教えよう。
知っての通りだが、沖縄サンフラワー高等学校は卒業率九十八パーセントと宣伝している。これが事実であるならば、非常に高い卒業率だ。この九十八パーセントという数字に惹かれる生徒や保護者もいるだろう。
だが、この九十八パーセントという卒業率には、かなりのトリックが使われている。複数のインチキを行ったうえで算出しているのだ。法律スレスレの状態だ。
インチキ その一。
卒業までのハードルを低くしているのだ。説明済みだが、三波学園の授業のレベルは極めて低いのだ。中学生レベルの授業しか行っていない。
通信制高校という特性上、学力に問題がある生徒も通うから、授業レベルが低くなってしまうのは仕方がない部分もある。生徒の努力が認められるように、状況によっては、ハードルを下げることも必要かもしれない。学校だからな。
だが、沖縄サンフラワー高等学校は、無条件でハードルを下げているだけだ。それも、足首の高さくらいまでな。生徒を思っての行為ではなく、卒業率を上げたいという学校側の理由でな。
インチキ その二。
沖縄サンフラワー高等学校は学年制ではなく、単位制なのだ。
説明ばかりになってしまうので、学年制と単位制の説明は割愛する。気になったら自分で調べてくれ。
とにかく重要なのは、学年制には留年があり、単位制だと留年がないということだ。
学年制で留年すると、その年で修得した単位がぜんぶパーになり、ぜんぶ再履修になる。
だが、単位制には留年という概念は存在しないのだ。留年がないので、修得した単位が消えたりはしない。卒業するのが遅れるだけだ。
これらがなにを意味するのかというと、卒業するまでの期間が違うのだ。
基本的に学年制は、一年生、二年生、三年生と進級して、三年間で卒業するものだ。
単位制の場合は、三年を超えても卒業できる。極端な言い方になるが、ダラダラと十年かけても卒業だ。そして、卒業率が上がるのだ。
念の為に補足しておくが、単位制には単位制なりの様々なメリットが存在する。高校を卒業するための一助になっているのも事実だ。
いずれにしても、通信制高校の場合は、卒業率を高く見せたいがために、単位制を悪用している。
インチキ その三。
学校側が退学処分を行わないのだ。
どんなに生徒がトラブルを起こそうが、どんなに素行の悪い生徒であろうが、生徒に卒業する意思がなかろうが、退学処分を行わないのだ。
生徒の自主退学だけは学校としてもどうしもようない。が、沖縄サンフラワー高等学校のパンフレットをよく見て欲しい。隅っこのほうに、「生徒の自主退学は除く」という文言がある。
インチキ その四。
生徒を名前だけ在籍させる方法だ。
これが、もっとも悪質な手段と言える。
卒業する見込みのない生徒や、退学を申し出た生徒に対して、名前だけ在籍するのを勧めるのだ。復学するのに便利であるとか、転校する際に便利だとかいう名目でな。
いわゆる、休学に近い状態にするのだ。説明の都合上、名前だけ在籍している生徒を「幽霊生徒」と言わせてもらう。
ここで重要なのが、学費や在籍費、休学費といった費用を幽霊生徒に請求しないことだ。生徒側は負担やデメリットが少ないので、学校側の口車に乗せられて、幽霊状態になるのだ。
幽霊状態になると、たしかに卒業率は上がらないものの、下がりもしない。卒業率は不動だ。
沖縄サンフラワー高等学校には幽霊状態の生徒が、大勢在籍している。学費を支払っていないし、履修登録も行っていないし、卒業する意思も、卒業する見込みもないのに名前だけ在籍している幽霊生徒が、二百人以上いるのだ。
これらのテクニックを駆使して算出したのが、九十八パーセントという信じられないような高い卒業率だ」
「せこいトリックですね。幽霊生徒なんて、詐欺まがいですよ」
「ちなみに、幽霊生徒には卒業率を上げること以外にもメリットがある。生徒数に応じて、行政から支援が受けられるのだ」
「生徒に対して、行政からの助成金や補助金があるのですよね?」
「そうだ。たとえて言えば、年金不正受給問題と同じ構図だ。
年金を受給しているお年寄りが亡くなったにも関わらず、死亡届を提出しないで、遺族が不正に年金を受給し続ける事件が、時折起きるだろう。あれに近い。
生徒に卒業する意志や見込みがないのにも関わらず、退学扱いせずに、名前だけ在籍させて、卒業率を上げたり税金を受給し続けるのだ。
これらの違いは、前者は胡散臭い人たちがしているもので、後者は正規の学校がしている点だ。教育機関がこんな不正をやらかしているのだ。人に者を教える仕事をしている連中がやらかしているのだ」
「ここまでくると犯罪ですよ」
「年金の不正受給には、詐欺罪が適用される。税金の不正受給にも、詐欺罪が適用されるだろう。卒業率のインチキ表記も、優良誤認の域を超えている。詐欺一歩手前だ」
「正規の学校なのに」
「さらに、幽霊状態の生徒に事業を行っているように見せかけて、架空の経費の計上をしている。つまり、脱税だ」
「もうなにがあっても驚きませんよ」と私は苦笑した。「灰谷さんは、卒業率以外にも、有名大学への合格を宣伝していましたよ。T大学とか、W大学とか、医学部合格と叫んでいました。これにもトリックがあるのですよね?」
「もちろん、ある」




