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「禁じられた行為?」
「大学への進学実績の不当表示を行ったのだ」
「進学実績の不当表示といいますと、合格者の水増しですか?」
「そうだ。掛布グループは大学への合格者数を水増ししたのだ。それも、非常に悪質な水増しだった」
「ひとりの優秀な学生に複数の校を受験させたり、関連校の合格者を合算する方法ですよね。本来ならば進学者を表示すべきなのに、合格者を載せると」
「掛布グループは関わった生徒を、片っ端から合算したのだ。掛布幼稚園、掛布小学校、掛布中学校、掛布高校、掛布予備校に一度でも関わったら、掛布高校の合格実績に加えたのだ。転校した生徒、退学した生徒、掛布グループ以外の中学や高校へ進学した生徒、三ヶ月だけ掛布高校に在籍した生徒、掛布予備校で一回だけ模試を受けた生徒、掛布グループに関わったすべての生徒を掛布高校の実績に加えたのだ。
掛布グループは、提携している塾や予備校が多かった。これらの合格者数も、掛布高校の合格実績に加えたのだ。
さらに、これらすべてを、進学者ではなく、合格者として計算したのだ」
「考えられるうち、あらゆる手段を使ってますね」
「宣伝に使われた実績は華々しかった。進学実績には有名大学の名が並び、驚くべき数字が打ち出された」
「派手すぎて、不自然に思われそうですけど」
「そう、不自然だ。掛布高校の生徒数は約六百人だった。三で割るという単純計算だと、一学年につき二百人。掛布高校には、約二百人の高校三年生が在籍していた。掛布高校が、大学への合格者数として宣伝に使った数字は、六千人以上だった」
「六千人って、異常な数字ですよ。三年の生徒数の二十倍ですよ。掛布高校の総生徒数の十倍ですよ」
「悪質な水増しとはいえ、不当な表示をしていたのは、掛布グループだけではなかった。有名な塾、大手の予備校、名高い進学校など、どこも合格者の水増しを行っていた」
「変な言い方ですけど、みんなやってる、どこでもやっている、と」
「ここで事態は急変した。マスコミが嗅ぎ付け始めたのだ。一部の高校や予備校などで、合格者の水増しをしているといった情報を掴んだのだ」
「社会問題ですから、マスコミが報道するのも当然ですね」
「日本全国の教育関係者は大慌てだった。さきほども説明したが、多くの教育機関が、水増しなどの不正行為に手を染めていた。みんながやっていたのだ。だれもがマスコミの餌食になる可能性を持っていた」
「マスコミに自分の校名を出されたら、一巻の終りですよね」
「そうだ。どの校も「俺だけではない。水増しはどこでもやっている」と弁解した」
「詭弁ですよ。弁解になっていませんよ」
「マスコミを納得させるためには、だれかが責任を取る必要があった。マスコミを気をそらすための、生け贄が必要だった。どこかの校が、表だって批判される立場に置かれる必要に迫られたのだ」
「スケープゴートが求められたと」
「当たり前だが、晒し者の役割はどこの校も嫌がった。当然だ。マスコミに批判されたら、お終いだ。生徒に選ばれなくなり、生徒数の減少は避けられん」
「最悪の場合、廃校コースもあり得ますね」
「次に始まったのは、責任の押し付け合いだ。「お前のほうが酷い水増しだ」「俺はちょっと盛っただけだ」「私の校は、進学者ではなく合格者であると注意書きをしていた」とな」
「底辺争いですよ。曲がりなりにも教育機関のはずなのに」
「底辺争いの結果、最も酷いとされたのが、掛布高校だった」
「たしかに酷い水増しでしたね」
「悪質さもあったが、政治的な要素もあったのだ。設立された経緯や行政との癒着、放漫な経営。悪い要素が多々あった」
「スケープゴートにはうってつけですか」
「掛布高校以外の教育関係者は、掛布高校にすべての責任を押し付けたのだ。お前がすべての責任を取れ、お前が名前を出されて叩かれろ、お前が一番悪いんだ、とな」
「掛布高校はトカゲの尻尾にされたのですね」




