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 三波学園高等部は高校ではない。先生の結論に、困惑せざるを得なかった。

 頭の中に、様々な疑問が噴出した。

 泉ケイは高校へ入学していなかったのか?

 マスコミの報道は間違いだったのか?

 三波学園高等部という校名は、高校という意味ではないのか?

 私が実際に見た三波学園高等部笠原校は、なんだったのだ?

 三波学園高等部のホームページが存在している理由は?

 古田さんを投げ飛ばした教員らしき男はだれだ?

 疑問に困惑した私の口から出たのは、

「三波学園高等部は高校ではないということは、泉さんは高校へ通っていなかったんですか?」だけだ。

「いや。泉さんは高校へ通っていた」

「先生は、三波学園高等部は高校ではないと言ったと思うのですが」

「そうだ。三波学園高等部は学校ではない。だが、泉さんが高校へ通っていたのは事実だ」

「意味がわからないのですが」

「泉さんが本当に在籍していたのは、私立沖縄サンフラワー高等学校だ」

「私立沖縄サンフラワー高等学校? 沖縄? 沖縄ですか? 沖縄と言いますと、日本の最南端の沖縄県のことですよね?」

「そうだ」

「急に話が飛躍しますね。泉さんは沖縄へ通っていたのですか?」

「実際には通っていなかった。沖縄サンフラワー高等学校に在籍はしていたようだが」

「チンプンカンプンですよ」

「今回の事件を簡潔に説明しよう」と先生は咳払いした。「長尾グループ、旧名は掛布グループという学校法人が運営している沖縄サンフラワー高等学校は、同じく長尾グループが運営している三波学園高等部に学校業務を丸投げしいて、泉さんは沖縄サンフラワー高等学校に高校生として在籍していたが、実際は三波学園高等部だけに通っていたのだ」

「もっとチンプンカンプンですよ。長尾グループ? 旧名は掛布グループ? 沖縄サンフラワー高等学校? 一度に大量に言われても、意味が飲み込めませんよ。そもそも、三波学園高等部が意味不明なんですから」

「そうだ」先生は頷いた。「一度に大量に教えるべきではない。ひとつひとつ、丁寧に教えるべきだ。学校での勉強と同じだ」

「そうしてもらえると、ありがたいです」

「では、長尾グループ、掛布グループ、沖縄サンフラワー高等学校、三波学園高等部について教えよう。そして、泉さんが抱えていたトラブルも教えよう」

「はい」

「まずは長尾グループからだ。これは行政から正式に認可された学校法人だ。学校だけではなく、塾や予備校、幼稚園なども運営している。教育の総合商社みたいなものだ。設立当初は掛布グループと名乗っていた」

「認可を受けているので、行政のお墨付きという意味ですね」

「そうだ。学校法人になるための、詳細な認可条件などの説明は省こう。さほど重要ではない」先生は続けた。「掛布グループが設立されたのは平成二年だ。つまり、一九九〇年だな」

「バブルが崩壊する、直前ですね」

「あの当時は、なにをやっても儲かった時代だった。これといった教育理念もなく、ただ儲けるためだけになんとなく生まれた存在、それが掛布グループだ」

「バブルの申し子ですか」

「設立する際に、行政から役人の天下りを受け入れていた。当時の文部省、現在でいう文部科学省からだな。数人受け入れていた」

「開始早々、怪しいですよ」

「天下り以外にも、怪しい点が多々見受けられた。資金の出所や、運営者の経歴など。まあ、なにはともあれ、学校法人が設立されたのだ」

「胡散臭い学校法人ですね」

「学校法人を打ち立てたら、次は学校を打ち立てたのだ。私立掛布小学校、私立掛布中学校、私立掛布高校、私立掛布大学。これらを片っ端から立てていったのだ。もちろん、すべては行政から正式に認可を受けた正規の学校だ」

「審査が甘いと思いますよ」

「甘かったのは行政側の審査だけではない。学校の運営も非常に甘かった。典型的な放漫経営だったのだ。設置当初、運営はうまくいったのだ。バブルで景気がよかったし、宣伝も派手だった。だが、バブルの崩壊や、少子化などで経営が悪化したのだ」

「ツケが回ってきたんですね」

「経営は悪化の一途を辿った。金の回りは悪くなり、宣伝は減り、生徒は減少し、収入も減り、さらに金の回りは悪くなった。悪循環だった。時代の流れもあった。バブルや少子化は、自分だけでは解決不可能だ」

「苦しいのは、どこの学校でも同じだったと思いますけど」

「掛布グループ以外の学校も苦しんでいた。とくに苦しんでいたのは少子化だ。生徒の絶対数が減少したのだ」

「少子化みたいな社会問題は、自分だけでは解決できませんね。現在でも解決されていないですし。政府レベルでも手を焼いていますし」

「この流れからして、多くの学校間で生徒の奪い合いが始まった。生徒や保護者に選んでもらうため、どの学校も宣伝に力を入れた。素晴らしい授業、楽しい学校生活、かけがえのない体験」

「いまでも派手な宣伝をしている学校が多いですよ」

「宣伝が事実だったら、問題ないのだ。中身を伴った宣伝もあった。だが、実情を伴わない宣伝も多かった」

「掛布グループも実情を伴わない宣伝を行ったと」

「それ以上に悪質な行為を行ったのだ。掛布グループは、取ってはならぬ手段を執ったのだ。絶対にやってはいけない、禁じられた行為を行ったのだ」

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